1話 イケメン野郎の家に行く
恋愛したことないからってラブコメを書いたっていいじゃない!
鳴神凛はアイドルオタクである。
彼が応援しているグループ、『fa2en anje1』(通称堕天使)は五人組であり、アイドルオタクの中ではそれなりに認知されているくらいの人気だ。
その中での凛の推しは、イメージカラーが青、チームのクール枠(?)のレイレイこと立花玲花だ。
最近ではアニメ映画の演技が評価され、『冷菓』して声優業も行っており、アイドルオタクじゃなくても知っている人は知っている、くらいの認知度である。
『堕天使』のイベントはだいたい東京、神奈川、千葉あたりで行われることが多く、凛は行ける時は必ずイベントへ行っている。
行けなかったときは、たいてい北海道や大阪などでイベントがあった時や、アルバイトのシフトが被ってしまったぐらいだ。
本当は全てのイベントに行きたいのだが、日々アルバイトや家からの仕送りやらで生活費を賄っているため、アルバイトを休むと家計に響いてくるのと、全部となると交通費が馬鹿にならないので、厳しいのである。
ちなみに、オタ活によって家計に大きく響いているのだが、当の本人は一切止める気がない。
そして今、彼は絶望していた。
明日課題の提出だったので死ぬ気で頑張って終わらせることができた。そこまではよかったのだが、問題はそのあとだった。
チャットアプリ『wire』にあるグループ『fa2en anje1応援会(非公式)』に来てた、大量のメッセージを読んでいた時のことだった。
「今日、レイレイがアキバでトークイベントあったらしいんだけど担当の人行った?」
すぐさま、そのメッセージをメンションして聞いた?
「それっていつ情報きてた?」
「1週間くらい前じゃないですかね?リンク貼りましょうか?」
「頼む」
そうして送られてきたリンクをタップしてみると、SNSのアプリ『chirp』に飛んだ。そこには、
「アニメ放送記念‼︎声優たちによるトークイベント‼︎ in AKIHABARA」
と書かれてあった。
リプ欄には詳細などが書かれていたのだが、そこには出演者について何も書かれていなかった。
普段こういうイベントを探す時は『fa2en anje1公式アカウント』からの情報や、『冷菓』で検索をかけているので見つけられなかった可能性が大きい。
凛もこのアニメのことを知っており、彼女がヒロイン役で出るということも知っていたので、そっちで検索し忘れていたという後悔もある。だが、
『出るなら書いてくれよ…運営さん…』
そう呟いて、凛はソファーから崩れ落ちた。
崩れた落ちた凛が再起動するまでは、1時間かかった。
「今日、課題だけしか予定考えてなかったから暇だな」
そういい『chirp』を開くと
「お前さんの家、今日泊まりに行ってもいいか?」
と送った。
送信相手は橘隼人、凛の高校時代からの親友である。
凛はアイドルオタクでありながら同時にアニメ好き、またゲーム好きでもある。隼人がアニメオタクという点から仲良くなり、今では互いの家に泊まるほど、仲が良い。
ちなみに隼人にも凛がアイドルオタクということは話していない。
メッセージに既読がついてから、少し時間が経ってから、隼人から返信が来た。
「妹もOK出してくれたし、来ていいぞ!」
(あれっ?あいつに妹いたっけ?そもそも隼人の家族構成は聞いたことなかったけど)
疑問に思ったので、隼人に聞いてみると返事は割とすぐに返ってきた。
「いるよ、来年から大学通うし、こっちに住んだら交通費とかが安くなるし、デメリットが両者少ないから一昨日ぐらいにこっちに引っ越してきたんだよ」
「説明ありがとう、じゃあ荷物まとめ次第そっち向かうね」
了解のスタンプが送られたのを見て、凛はアプリを閉じた。
大学の通学の定期の範囲に、隼人の家があるので凛は気軽に隼人の家にお邪魔する。
駅から10分くらい歩き、少し都会から離れた感じの場所にある、4階建てのマンションの2階に隼人の部屋がある。
荷物がたくさん入っている、キャスターを胸に抱えて運び、インターホンを押した。
すぐにガチャリと音がして、ドアが開かれた。
「やぁ」
そう僕に話しかけてきたやつは、まるで女子受けしそうな、眼鏡の美青年だった。
この美青年こそが隼人だ。
「お前、インターホン鳴らした人が誰かの確認ぐらいはしろ」
「大丈夫、君だとわかっていたから」
「なにが大丈夫だよ…お邪魔します」
そういうと隼人の家に入った。
@Ametosamusa1217
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