Cと歯医者
突然ですが、歯医者の定期検診などに行ってる?
私の家族は、小学生の頃に通ったきり二十年近く通ってない。
そんな、はるか昔にCが母に連れられて行った時の話。
小学生だったCは、母に連れられて歯医者に行った。当時既に、地元では少ない私立の小学校に通って居たC。母はそれが恐らく誇りだったのだろう。私には理解できないけれど。
Cは、どんな学校に通っているかなんて関係なしに、シンプルな肥満児だ。何せ私は、彼が痩せている姿を一度たりとも見た事がない。太っている彼にとって食べる事は生きる事に等しく、そして食べる回数に応じた歯磨きはしていない。
それなりに母としての務めを果たそうとしたのか、Cを歯医者に連れて行った。
「このままでは中学に上がる頃には、すべて歯がなくなってしまう」
そんな事を言われたようだ。私はその場にいなかったから、母からの又聞きになってしまう。とはいえ、当時の私が聞いていたとしても、小学生あるいは幼稚園生だったから理解はできてなかったと思う。
今だから思う内容としては、恐らく食事回数が多い事に加え、Cは炭酸飲料やお菓子を食す事が大変好きだった。糖が多分に口内にある場合、虫歯菌の育成に手助けをしてしまうらしい。門外漢の為、詳細については不明だが、食べたまま歯磨きをしなければ、エナメル質が溶けてしまうと、私も自分で歯医者に通いだしてから言われた事がある。
恐らく、溶け出してしまう事で、余計に歯がもろくなってしまうのだろう。
だからこそ、歯科医も今すぐというわけではなく数年後にはなくなってしまうという注意喚起をしたのだと思われる。少しずつ溶けていく事は、容易に想像できるからだ。
仮に自分の子供が、歯科医からその様な事を言われてしまったならば、どの様にすれば良いのかという改善案を求めたり、少なくとも歯医者への通院を止めないのではないだろうか。
「私立に通わせているから、勉強ばかりさせていると思われたのかもしれない」
母は、歯医者からの帰ってきて、その様な発言をした。正直、何度咀嚼しようとしても噛み砕けないほどに意味のわからない。いまだに理解ができずにいる。
理解しようと頑張ってみたのだが、歯がなくなってしまう事から原因が勉強にいってしまう思考が読み取れない。もしかして、勉強のしすぎで歯ぎしりをしていると言われたのか?いや、でも彼は歯ぎしりをしている場面は聞いた事がない。(私は歯ぎしりを寝ている間にしていたが)
間食などの影響ではないだろうかと、別の角度からの意見を投げてみたものの母は止まらない。そもそも私の言葉が母に届く事など欠片もないのだから、仕方がない。
結果として、母はCを歯医者へ連れて行く事がなくなって二十年が経過した。私は、一人暮らしを始めた頃からひっそりと、一人で通い出した。母は、Cを歯医者へ連れて行く事はあったがAとBと私を連れて行く事はなかったからだ。
私達は鮫ではない。種族を変化する事ができないのだから、歯が永久歯に生え変わってしまえば、一生それと付き合っていくしかないのだ。
歯の不調による影響は全身に及ぶという。気にくわないと感じた、などというしょうもない理由で子供の一生をないがしろにするかもしれない選択は取らないでおいて欲しい。




