当時の恋人
ヒロイン症候群に繋がる部分なのかもしれないが、母は典型的な見栄っ張りで自己中心的。そして、ある種の奉仕精神が凄い。凄いなんてレベルじゃないかもしれない。
良い言い方をすればかなりの献身的な母だ。
まだ高校生の頃、私には恋人がいた。
付き合って二ヶ月、正直高校生の恋愛なんて数ヶ月で終わることもままあると思う。
そんな頃に私の誕生日がきた。
高校生の私は、まだ実家に住んでいたこともあり誕生日は基本的に家族から祝ってもらっていた。
夕食を外のレストランでとり、家でケーキを食べる。
多分普通の家族みたいな感じだと思う。
当時、私は大抵の事は全て報告するのが義務だと刷り込まれていたため、恋人ができた事も話していた。
すると、母が「一緒にご飯を食べればいいんじゃない?」と言い出した。
私としては、特に問題ない。
大好きな恋人とも過ごせるし、家族からの祝いを断る罪悪感もない。
問題は、恋人が了承するかである。
そもそも、付き合って二ヶ月の相手の家族と食事など、人見知りの私からすれば正直地獄だ。
だからこそ、判断は本人に任せる事にした。
今考えると、そもそも話さなければよかったのに。言われてしまって断るわけにもいかないだろうから、母にその場で、さすがに厳しいと断れればよかったのだが、当時の自分にその様な選択肢はなかった。
ともかく、来てくれた恋人と話していたのは私よりも母だった気がする。
母は、いたく恋人を気に入った様で私が土日に家におらずとも特に気にしている素振りもなく、当時寮暮らしだった恋人が帰省するとなれば空港までの送迎を行っていた。
今もあまり思考としては変わらないのだが、使えるものは使ってしまおうと考える私からすれば、恋人も楽だろうしいいんじゃないか?と思って、送迎などもしてもらっていた。
実際に本人がどう思っていたかは不明。
そうしている内に、恋人が寮を出て一人暮らしを始めた。
高校生で一人暮らしを始めた恋人を、私以上に母が非常に心配していた。
大学生が多く住むアパートで、寮よりももう少しだけ気楽な場所で、セキュリティはきちんとあったり、平日のみとはいえ朝食と夕食があったりした。
平日の昼食など学校の食堂で買えば済む話。土日も、二日位であれば、好きな様に過ごしても問題ないだろう。
しかし、母は何故か、それならば土曜日に学校がある日は土曜の午後から、なければ金曜の夜から私の実家に来ればいい、と言い出した。
そこから実際に、高校を卒業するまでほぼ毎週土日は私の家で過ごした。




