第6話
ついにその時が来た、破水が始まったのだ。
まずは明細鑑定を行う。
>個体名:なし
>種族名:人間
>状態値:新生児(仮) 良好
>存在値:LV0
>体力値:30HP
>魔素値:1001MP (保有1026MP)
>スキル:魔力操作 光 水 土 闇 治癒
明細鑑定 早熟 肉体改造 念動
>個体名:不明
>種族名:人間
>状態値:18歳 妊娠中 良好 (状態:出産中)
>存在値:LV27
>体力値:52HP(132HP)
>魔素値:112MP (113MP)
>スキル:不明
もう自分のMPに杞憂するのは諦めた。今気になるのは母のHPが極端に減っていることだ。
治癒魔法をかけると広がりかけた産道が収縮する恐れがあるので、さっさと外に出ようと考える。
母が力むたびに、少しづつ体が押し出されていく。
・・・・かなり狭い。
自分から無理やり体をひねるようにして、ずるりと外へと飛び出す。
すかさず乾いた柔らかい布に受け止められた。それと同時に母に治癒魔法を施す。
目を開けるが、眩しいばかりで形が旨く認識できない。
焦点が合わないどころか、光に満ち溢れた世界に人のシルエットが漸く認識できる程度。
それよりも、肺の中に詰まった羊水を早く吐き出さないと窒息してしまう。
パチン!! 『 グッハ・・・・尻をたたきやがった 』
「 ゲボ (羊水が出た、息を、すぅ~)ふぎゃぁぁぁぁぁあああぁぁあぁ(いってぇええぇぇぇええええぇ)」
「 ふぎゃぁぁぁ(ふざけるな) ふぎゃぁぁぁ!!(今たたいた奴覚えてろよ!!)」
「 ふんぎゃぁぁ!(痛いので本当に泣けてきた) ふんぎゃぁぁ!(本気泣きしてやる)」
「 ふぎゃぁぁああぁぁぁぁぁあぁぁあぁ・・・・・ 」
「 ふんぎゃぁぁ・・・・(意外と泣くのも疲れるなぁ・・・)」
「 ふんぎゃぁ・・・・ (適当なところで泣き止むか・・・)」
「 〇〇◇▽〇□・・・・!! 」
母の優しい声が聞こえる。
言葉が分からないのが辛い。 そのうち分かるようになると言い聞かせその場をやり過ごす。
次に、野太い男性の声が耳元に聞こえた。
「 ×〇▽◆ ラインハルト〇!! ▲〇◆◆〇×!! 」
触れてきたごつい手、優しい口調から、自分の名前がたぶんラインハルトであると推測する。
「 ふぎゃぁふぎゃ (明細鑑定) ついでに(たぶん)父親も!」
>個体名:ラインハルト(仮)
>種族名:人間
>状態値:新生児 良好
>存在値:LV1
>体力値:15HP (保有 30HP)
>魔素値:1022MP (保有1026MP)
>スキル:魔力操作 光 水 土 闇 治癒
明細鑑定 早熟 肉体改造 念動
>個体名:不明
>種族名:人間
>状態値:48歳 良好 (状態:興奮中)
>存在値:LV150
>体力値:380HP
>魔素値:98MP
>スキル:不明
「 ふぎゃ?(何?) 」
母親よりもMPが少ない。
ゴシゴシと擦られるのが痛いので光魔法で体を保護すると、周囲がどよめく。
そう、新生児が魔法を使い自分を保護したのだから、当然と言えば当然なのだろう。
母の胸に光の膜に覆われた新生児、ここにきてついに外界に出られた喜びと、使い慣れない横隔膜の引きつる痛みと泣き疲れた体力を消耗した為か微睡に落ちていった。