45話
生後6っヶ月にしては過密スケジュールだ。
朝起きて朝食を取ったら、人体解剖実験のスケジュールおよび治癒スキル・鑑定スキルの取得条件の確認と遺体の選別。そんなことをしていると直ぐお昼に成り昼食とお昼寝。
微睡んでいた所、お鬚先生の手配した魔法大学の馬車が離宮に到着、ラインハルトはポウさんを握り締め浚われる様に魔法大学へ移動。
会場は解体場のような広い倉庫で、床面は石張り。
水をふんだんに使っても良いように水はけの良い様に排水溝が設けられ25遺体が乗せられる金属製のテーブルが用意されていた。
周りには、仮面を被った白髪の100数名の集団と200名近い大学関係者が整然とならんでいた。
お鬚先生が恭しく頭を垂れ、「 特別授業を宜しくお願いします。 」と声を張り上げた。
用意された金属製のテーブルに、先日入手した遺体を異空間収納から取り出してゆく。
男性13遺体 男性12遺体を並べると、仮面の集団の一部から、嘔吐と嗚咽の声が聞こえる。
・・・どうも暗部の者がシルバウムの暗部を吸収?懐柔したようで、遺体は顔見知りの様だ。
「 まずさいしょに、いたいの にんそうかぎを おこなってくだしゃい。 」
そう声を掛けると写生のスキルを持つお髭先生の部下が用意された用紙にスラスラと人相書きを写生していく。・・・解剖がおわったら人相書き毎ばらばらの遺体を、シルバウムに送り返そうと思っているのでしばらく待つことにする。
15分ほどで写生が終わるとそろそろ本番だ。
ソレイユとクラリスも雰囲気にのまれ、真剣に観察している。
「 これより じんたいの かいぼうじっけんを はじめましゅ。 すべてのものは めにまりょくをしょしょいでください。
それと、ちゆまほうしょゆうしゃ および かいたいけいけんしゃはいたいのそばに!
まわりにせつめいしながら、ぼくのしじにしたがい かいたいしていってください。
いたいは しんせんなためかなりちがでます。つねにせんじょうし ぶいをかくにんできるようにしてくだしゃい。 でわ いたいに けいいをはらい もくとう!」
数分間黙とうする。
「 では かいししてくだしゃい こうぞうはゴブリンとにていますが、じんたいのようがふくざつでしゅ。 あご・・・のどもとからきりひらくかんじで、じょうし・・・かたからうでてのひらをかいたいしてゆきましゅ。 しゃせいのかた よろしくでしゅ 」
解体用のナイフが入れられた場所から大量の血液が流れだす。
それを洗い流すと、写生班がものすごい勢いで血管の一本も漏らさず筆を走らせる。
出来上がりはまるで写真の様に正確で、とても満足できるものだ。
「 おおきな ちのながれるくだは すべてきゅうしょでしゅ とくにだんりょくのある ふといくだは、きられるとほぼたすかりましぇん。 ちのでるのが ひどいときは そのくだがきられていることがおおいでしゅ。 ちゆまほうをつかうしとは、そこをそくざにふさいでください。せんとうじに せいぞんりつが たかまりましゅ。 」
筋肉の付き方、腱の場所と説明を続け、顎と上肢が骨だけになった。
「 かくじ いけんこうかんのため しょうきゅうしをとります。 スキルがはえているか かくにんしてみてくだしゃい。 」
会場のあちこちで『 鑑定は生えた! 』『 鑑定が明細鑑定に成っているぞ! 』『 治癒が生えた! 』略全ての参加者から声が上がる。
「 ちのついた、てはきれいにあらうこと! ポーションをのみすぎたちとはおてあらいにいって、ておあらってくだしゃい。 ちとのちにはめにみえない びょうげんが まじっていることがありましゅ 。 きをつけてくだしゃい! 」
小休止の間、各組織の拡大映像を投射し、人体の最小単位細胞を表示させ、神経細胞・筋肉細胞・皮膚細胞などの断面を示しておく。
写生班は、小休止も忘れ、書き漏らさないようにと投影画面を書き写している。
15分程経過したところで、ラインハルトが声を掛ける。
「 これより むね はらを かいぼうしましゅ。 でははじめてくだしゃい。 」
腹膜を切り開くと、気道に気管支、肺・動脈に静脈、心臓・肝臓・食道に胃袋、小腸、十二指腸に大腸等と、次々と取り出していく。写生班はリンパ管、血管や臓器の位置を備に絵に落とし込んでゆく。
哺乳類の内臓はかなり似ているので、心臓の心筋、弁膜 記憶にある循環する血液の模範図を投影し写生させてゆく。
「 ちは 1~2ふんで ぜんしんを めぐります。 いぶつがまじれば どうなるかわかるはずでしゅ くうきなどがまじれば、それだけで ちのかたまりをつくり けっかんをつまらせましゅ 」
胸と腹を解剖し終わるころには既に5時間経っていた。
新生児にはお眠の時間だ。当然合間々に寝させてもらっている。
「 もうひとがんばりでしゅ。 しょうきゅうしのあと かはんしんとこつばんをみてゆきましゅ。
そして さいごに あたまでしゅ。 ちとのえいちがつまった のう をとりだして せいそうご かいたいじっけんをしゅうりょうしましゅ。 」
人体骨格図、下肢の筋肉と骨格の関係、膀胱や肛門の構造を投影。
そのまま眠りにつく・・・
・・・・
「 ラインハルト様 下肢と骨盤の解体が終わりました。 」
「 ふあぁぁぁ~ では しょうきゅうしのあと とうぶにとりかかってください。 ずがいはかたいので ノコギリやノミをつかってくだしゃい。 」
耳の構造、鼻と鼻腔、舌の断面拡大図。
眼球と周辺の筋肉、緩急の構造を瞳孔・眼底の細胞の拡大図。
大脳と小脳と脊椎内の神経図を投影し、またポウさんを枕に休む。
かれこれ7時間の長丁場、全ての参加者がスキルを取得し、もしもの時の医師や治療のできる衛生兵となるだろう。
・・・・
起きると25遺体は全て骨格標本に成っていた。
皆やり切ったといった空気を醸している。驚くことに写生班も鑑定・治癒スキルを取得したようで目が輝いている。ランニングハイみたいなものだろう。
「 みなしゃん おつかれさまでした。 じんたいかいぼうじっしゅうはかんりょうでしゅ。
つぎは、あさっての きょうとおなじ じかん? こんかいのじっしゅうのレポートをていしゅつしてくだしゃい。 あとしゃせいはんのみなしゃんもおつかれさまでした。 おひげしぇんしぇいからひとことよいでしゅか? 」
「 はい殿下! 皆の者ご苦労であった。無事スキルも取得できこれから研鑽を積み、殿下の作られる魔法大学院の講師として活躍してくれる事を期待する。
既に話してある者も居るが、シルバウム国境付近の魔の森の袂に、あたらしい学校が作られる。
其処では、これから様々なスキルを取得できること間違いなしじゃ。
賢者の英知に触れる機会は逃すべきではない! 皆の者覚悟はできておるか?! 」
「「「「「「「「 おぉぉぉぉぉぉ!! 」」」」」」」
なんだか変な集団が出来上がっている。
仮面の白髪の集団も、ラインハルトの足元に傅き、『 殿下に永遠の忠誠を! 』などとの賜っている。
遺体には解剖前の似顔絵を置き、保存用の魔石を弄り氷柱に全臓器と共に封入、再び異次元収納に保管した。
後はシルバウムへ送還する手配をするだけだ。
それにしては眠い。
実験で9時間を要しもう新生児の起きている時間ではない。
ポウさんを引きずりながら解体倉庫から出ると、心配そうにしていたマーニが馬車で待っていた。
「 ラインハルト様!!早く離宮に戻りお休みを取って下さい。 」
マーニが泣きそうな声で自分を抱き上げる。
『 今日も長い一日だった・・・ 』そう呟いてマーニの腕の中で夢の世界に旅立った。




