44話
宰相が去って日が暮れても、離宮の前には多くの訪問客の馬車が列を成している。
そして離宮内ではお髭先生が、柱にしがみ付いてラインハルトに会うまでは帰らないと駄々を捏ねている。
外の馬車の車列には離宮付きの騎士たちが、本日あった宰相の暴行事件を説明し全治2~3週間程のケガと説明し、お引き取りを願っていた。
「 おひげしぇんしぇい こんばんわ 」
どうせ国を立ち上げるのだ、この国の最高頭脳をスカウトしてしまおうと、ラインハルトは居間の柱に蝉の様に縋り付くお髭先生に声を掛けた。
「 おぉぉぉぉ ラインハルト殿下ぁぁぁぁぁぁぁ お労しやぁ 英知の結晶!健大の軌跡にこのような狼藉を働く宰相など、儂が消し炭にしたものをぉぉぉぉ!! 」
綺麗な涙を散らしだくだくと流しながら幼児の足に縋り付く。
「 おひげしぇんしぇい あたらしいがっこうをつくりましゅ! 」
「 なんと! それは誠でございますが? 今すぐ入校できますか?! 」
3歳児の体を這い登様に顔を近づけてくる。
「 ちゅきましては、けがの ようじょうのあいだ とくべつじゅぎょうを おひげせんせいと ゆうしのかたのみだけにおこない しんまほうだいがくいんの こうしをつとめて いただきたいのでしゅ。」
「 ほ、ほ、ほ、本当でございますか! 何時ですか? 今からですか? 何人までなら良いですか? 」
今度は感涙の雫が迸る。よく水分が無くならない物だ・・・はっ!もしかして魔法で出しているのか?等と詮無き事を考え、重要な事を伝え忘れずに説明する。
「 シルバウムにちかいへんきょうの、まのもりのしゅうへん 150きろるめるとるはなれたばしょで、もりをきりひらけば いくらでもとちがありましゅ。 まだ まなびやもたっていないあれちでしゅ。 としけいかくからはじめましゅので じかんがかかりましゅ。」
「 都市計画の奇才が学院に居ります。一からの設計など滅多にできる事ではありません。喜んで一生を捧げるでしょう。 」
「 それとここだけのはなしでしゅ・・・ 」
お鬚先生に耳打ちをする。
『 王妃より命を狙われてましゅ 人選にはくれぐれも注意してくだしゃい。 』
お鬚先生の眼が一瞬細くなり、大きく頷く。そして元の輝く笑顔に戻り・・・
「 特別授業は何時からでしょうか!! 」
気迫に押されてしまい思わず答えてしまう。
「 あ、あすのおひるすぎからでしゅ かいぼうじっけんをおこないましゅ。 ばしょはおさえられましゅか? 」
「 はい! こらから直ぐに! しかし・・・ご遺体は直ぐには・・・ 」
「 それはこちらで よういしましゅ 100たい ちかくありますから ぞんぶんにかいぼうできましゅ 」
「 それはそうれは・・・では、写生スキル持ちと解剖実験経験者、治癒魔法使いを多めに・・・
はっ!急がねば!! それでは殿下 明日の昼過ぎに! 」
さっきまで、柱にしがみ付いていたお鬚先生はスキップしながら帰っていった。
『 居るか? 』
『 ・・・はっ!・・・ 』
『 影たちはみな強制参加だ、今から時間に間に合う者全て参加せよ 』
『 ・・・はっ!・・・ 』
『 上手くすれば治癒スキルが生えるぞ、変装かマスク着用をしておけよ 』
『 ・・・有難き幸せ、至急招集を掛けます・・・ 』
「 ふぅ・・・もうひとねいり しましゅか・・・あっ ソレイユとクラリスもさんかね♪ 」
「 は、はい! 」
「 わーぃ、にーにーといっしょ! 」
3歳児のクラリスの情操教育にどのような影響を与えるか、まぁいいかと考えるラインハルトだった。




