33話
特別講義を終えたラインハルトは、講堂の控室でマーニと数人のメイドに衣装を整えられ浚われる様に近衛騎士の控える馬車へと担ぎ込まれた。
「 ラインハルト様、この後王宮に到着次第お披露目会です。 少し時間が押しておりますので馬車も揺れると思いますが、私が抱えておりますのでご安心ください。」
マーニが自分を膝に抱え馬車に揺られる。
通常であれば20分もすれば王宮に付く距離だが、周囲が騒がしい。
どうも大通りで馬車同士の事故が発生しているらしい喧騒が聞こえてくる。
「 殿下、マーニ様 このままではお披露目式に遅れてしまいます。我々が警護に当たりますので馬車を乗り捨て、徒歩での移動をご検討ください。」
近衛隊長が車窓から語り掛けてくる。
「 ラインハルト様、少し汗をかきますが緊急事態です、歩いて王宮へ向かいましょう。 」
・・・とマーニが話しかけてくるが、影の中から呟き声が聞こえる。
『 殿下、何者かがお命の狙っております。影から護衛いたしますがくれぐれも御注意を。』
「 実行犯・先導者・関係やは殺さずに生け捕れ、生きてさえいればどうとにでもなる。 」
『 仰せのままに! 』
呟くように暗部とのやり取りを済ませると、騎士がが馬車を降りるのをエスコートしてくれる。
密集陣形で王都へ直進する。
10分ほど歩いただろうか事故現場が見えてきた。
馬車の多重追突事故、死傷者、負傷者が路肩に寄せられ頭を抱え込んでいる。
大通りにはに元が散乱し、馬車は倒れ、馬は口から泡を吹きながら興奮している。
一人では無理な大きな荷物を動かそうとする者、ケガ人を手当てする者、大通りは人と物で溢れかえりとてもすり抜けられそうにない。
そこへ怪しさ満点の騎士の姿をした人物が汗を掻き人混みをかき分け敬礼をする。
「 殿下ご一考でしょうか? 」
「 うむ、ライハルト殿下の騎士団長シュナイダーだ、帥は? 」
「 申し遅れました 治安維持騎士のターナーと申します。お披露目会に遅れては申し訳ないと、迂回路をご案内に参りました! 」
「 うむ ご苦労 よろしく頼む 」
周りに騎士らしい者が一人もいないのに、こいつ平然と治安維持騎士などと名乗りやがった。
異空間収納からコッソリ前回の襲撃時に入手し更に強化した極細の鋼線を伸ばし、治安維持騎士の足首に巻き付けておく。
「 此方です お急ぎください。」
通りは次第に細くなり糞尿と生ごみの匂いが立ち込め軒下では蛆の湧く何かが小山に成っている。
隊列も崩れ人がすれ違うのも自体難しい裏路地路地に案内されてゆく。
『 そろそろ襲撃されるだろう・・・手足程度は構わないが殺さず生け捕りにしろ 』
『 ・・・御意・・・ 』
呟きに暗部の了承の返答が耳元で聞こえる。その様なスキルか魔法なのだろう。
そんなやり取りをしていると、前方から市民風の男女が5名、後方から冒険者風の屈強な男たちが6名・・・狭襲だ、そして突然案内役のターナーがそれらの集団の脇をすり抜け走り出した。
「 なにごとだ! 」シュナイダー団長が叫ぶが、騎士は止まらない・・・・が、足首が千切れ飛びその場に転がる。
「 グギャァァァァ イテェェェェl!!くそぉ どうなってるんだ?!」
騎士とも思えない叫び声を上げ生ゴミの山に突込みもだえ苦しむ。
冒険者風の男と市民数の女が、何かをこちらに投げてきた。
それは煙を吹き不だし空中を回転する。
ラインハルトは上空に冷気の塊を顕現させる。
下降気流。高気圧と同じ現象が局地で発生する。
煙は襲撃者に向け流れ、こちらを見失う。
それと同時に影が襲撃者を覆いつくし、その中に一人、また一人と姿を消してゆく。
「 密集!!殿下を守れ、刃向かうものは容赦するな!!」
シュナイダー団長が叫ぶが、既に一行は身動きが出来ないほど集まっている。
そして靄が晴れる頃には、足を切り飛ばされたターナーと襲撃者の姿は、どこにも見当たらなかった。
『 ・・・襲撃者は皆捉えました、時を得ずラインハルト様流で全てを吐かせます。・・・ 』
ラインハルトの耳抱きに届く囁きに小さく頷き。シュナイダー団長の号令の元、一行は大通りまで戻ることに成った。




