第3話
眠りから微睡、そして覚醒。
体が出来てくるにつけ、覚醒の頻度が増えてくる。
調子のよいときには 日に数度、悪くても半日程度で覚醒している。
” 鑑定いぃ?! ”
>個体名:なし
>種族名:人間
>状態値:胎児 五カ月 (実態状況7ヶ月)
>存在値:LV0
>体力値:7HP
>魔素値:59MP (保有60MP)
>スキル:魔力操作 光
明細鑑定 早熟 肉体改造 念動
MPがおかしなことに成っている。
確かに気絶落ちを繰り返していたが、胎児にして、成人?女性の半分ほどのMPを取得してしまっている。
再度、自分自身に明細鑑定の強化を念じながら調べてみる。
” 腹の魔核が透き通った水晶の結晶の様に変わっているではないか ”
大きさはいまだ豆粒のようだが、母体から魔素を吸収し成長しているように感じる。
頭部に意識を集中する。
海馬の間辺りにある小石程度の魔核は、頭蓋の骨のせいなのか透明化こそしているが変形までしていない。
続けて、母親の明細鑑定を行う。
>個体名:不明
>種族名:人間
>状態値:18歳 妊娠中 良好 (状態:MPドレイン)
>存在値:LV26
>体力値:132HP
>魔素値:99MP (113MP)
>スキル:不明
” ・・・・吸ってるな・・・・ ”
少しずつであろうと、母体を危険に晒すわけにはいかない。
少し申し訳なく思い更に明細鑑定を行うと、血液の流れから手足に軽いが痕の残る古傷と針仕事でもしたのか、指先に刺し傷があるのが分かった。
” これは、子供として親孝行をしておこう・・・・治癒は行けるか・・・・”
臍の緒を通じ、母体の血行を増進し、傷口の治癒を強く念じる。
頭が焼けるように熱を持つ。腹部から彼女に向けて魔力が放出されるのが理解できる。
砂よりも細かい粒子が彼女の体を循環し一瞬発光する。
「 !!?? 〇▽◇〇〇!! マーニ!! 〇▽◇〇〇◆!!! 」
『 ポーン 光魔法系統 液体ノ操作ヲ感知 スキル【水】及ビ派生魔法【治癒】ヲ取得シマシタ 』
脳内に神の声(と呼ぶことにとりあえずしておく)が響き外界に出ずともスキルを取得出来てゆくことに喜びを感じるが、それよりも気に成ることが・・・・魔素の流出が止まらない。
” マーニは使用人か? そんなことはどうでもいい、原因は何だ?明細鑑定!! ”
彼女の古傷が次第に色褪せ、指の傷は完全に塞がる。
それに合わせMPがゴリゴリと削られてゆく。
残りMP、5・4・3・2・・・強い睡魔に襲われる。
『 母には健やかに、自分を育んで・・・・ 』
そこまで考えたところで、意識が飛んだ。
・・・・・
数週間ほど眠り続けたらしい。
MPを完全に使い切って気絶したのだから胎児にしては無茶苦茶酷な事をしている自覚はある。
早速、日課とも呼べる
” 鑑定・・・・むむむむ 母を抜いてしまって居る。 ”
>個体名:なし
>種族名:人間
>状態値:胎児 五・五カ月 (実態状況8ヶ月)
>存在値:LV0
>体力値:8HP
>魔素値:119MP (保有120MP)
>スキル:魔力操作 光 水 治癒
明細鑑定 早熟 肉体改造 念動
やけに母体が揺れる。
ガタゴト ガタゴト
この振動で目が覚めたのか、数週間も寝込んでしまったので、医者にでも向かっているのか・・・・
早熟の為、5か月半で実質8か月の胎児状態でもある。早く生まれたいからと母親から多くを吸収することなく、途中から魔力による肉体の成長を補助させている【肉体改造】が良い仕事をしているせいだ。
明細鑑定を使い、自分の成長具合をつぶさに観察する。
細胞の一つ一つが血液中から栄養をもらうが、それでは足りないとばかりに魔力を消費し細胞を作り続けている。
『 ポーン 明細鑑定等ニヨル条件ヲ満タシマシタ。スキル【土】ヲ取得シマシタ 』
どうも、この世のスキルとは発生と派生に分かれるらしい。
揺れる羊水の中で腕を組んで考える。
脳が随分と出来上がり、意識が随分はっきり肉体に投影できるようになった来たのは喜ばしい。
強い意志と情熱のようなものの果てに発生するスキルと、今まであったものなのに知らなかった為に使えなかった派生スキル。
『 この異世界でも知識は重要であるということか・・・・明細鑑定!自分と母じゃ! 』
>個体名:なし
>種族名:人間
>状態値:胎児 五・五カ月 (実態状況8ヶ月)
>存在値:LV0
>体力値:8HP
>魔素値:117MP (保有120MP)
>スキル:魔力操作 光 水 土 治癒
明細鑑定 早熟 肉体改造 念動
>個体名:不明
>種族名:人間
>状態値:18歳 妊娠中 良好 (状態:MPドレイン)
>存在値:LV26
>体力値:132HP
>魔素値:65MP (113MP)
>スキル:不明
『 慢性的なMPドレイン状態か・・・・妊婦じゃから何時も気怠いのも、申し訳ないが・・・』
そんなことを考えていると、ガタゴト揺れる振動が収まり、母体が移動するのが解る。
お腹には、大事そうに両手が添えられ少しでも揺らさぬようにとの配慮を感じる。
しばらくすると、母が横たわる。
そして、外から中を探ろうとする魔力の波が伝わるが、人の部屋を勝手にのぞき見されるような不愉快な気持ちとなる。
余りしつこい探査に、抵抗する事にした。
母の腹に当てられた手に向かって、光魔法の光玉を放出する。
腹を抜けて、その外側で光玉が顕現したため、いろんな器具を取り落とし騒然とした室内の音が聞こえる。男性や女性の叫び声、飛び起きる母・・・・
沸々と沸き上がる不快な感情を、魔力に織り交ぜ腹の外へと解き放つ。
『 ポーン 負ノ感情ニ伴ウ、魔素ヲ検知シマシタ。 スキル【闇】ヲ取得シマシタ 』
『 ・・・・これは拙いかな、闇を覗いて良いことなどないわい。光じゃのやっぱり 』
外は大騒ぎになっている様子だが、母に何かがあると拙い。
光魔法を練り上げ、外敵から身を守るように母の周りを覆う。
じりじりと減ってゆく魔力と自然回復する魔力の均衡がとれているようだ。
魔法発動後体内からも分かるが、母が光り輝いている以外の外的刺激がおさまり、周辺が水を打ったように静かになったのが解る。
『 これで静かに眠れる・・・・っく睡魔に抵抗できない 』
精神が肉体に強く影響されるのか、光魔法を発動したまま心地よい眠りの中に落ちていった。