31話
いよいよお披露目式当日となった。
小姓も今夜紹介されるとのこと、一部の不寝番のメイドからは歓喜のため息が漏れている。
今日は朝から魔法大学の特別講義、その後王宮へと戻り遅めの昼食会を兼ねた自分のお披露目式。
それが終わってからのモフモフ獣人の男の子と面談、生後半年の自分には十分過密スケジュールだと思う。
「 ラインハルト様 朝ですよ。おっきしてくださいませ。 朝食を取られたら魔法大学へ赴き、特別講義を行う予定ですし、あとの予定も詰まっております。いそいでご準備しましょうね。」
自分はマーニに揺すり起こされ、眠い目をクシクシしながら身だしなみを整えてもらう。
姿見の前には、特注で作られたベスト・ジャケット・サスペンダー、胸のポケットにはかわいらしい大きさのハンカチがちょこんと顔を出し、膝丈までのズボンに真っ白なソックスと真新し靴、トンガリ帽子にラメの入った小人さん用ローブを身にまとった自分が写っている。
朝食はクタクタに煮込まれた野菜とミンチのような肉片の入った洋風雑炊。
それをマーニが フーフー と冷ましながら口へと運んでくれる。
自分で食べると言いたかったが、確実に服をドロドロに汚す自信が有ったので、おとなしく従う。
テキパキと朝食を済ませると、ヒョイと抱えられ部屋を出ようとするマーニに声を掛ける。
「 ポウさんとって!! 」
少し眉を寄せるマーニだったが泣かれては困ると思ったのか、直に渡してくれた。
離宮の玄関にはすでに馬車が止まっており、マーニが速足で乗り込む。
馬車は滑るように離宮を離れ、一路魔法大学へと向かう。
馬車に並走して騎士団が警護しているのが車窓から見える。
イケメンの騎士と目が合いウインクされる。
・・・・なんぞ?!男に興味はないぞ!?・・・。などと心の中で呟いてしまう。
大学までの距離はさほどなく馬車で15分ほどだ。
とは言え、沈黙は何とも言えない緊張感を煽る。
そんな空気を感じたのかマーニが話しかけてくる。
「 ラインハルト様 今日は早くから沢山の方々が講堂でお待ちです。ちゃんとお話しできますか?」
「 あい! でもマーニも付いてね。」
「 もちろん御供いたしますわ。」
満面の笑顔で自分に微笑むマーニに少し癒される。
本日の為に、随分とイメージトレーニングを行った。
魔素とは何か?属性とは何か?鑑定スキルと魔法の解析について話そうと何度もセリフを練り直し、リンゴのマークの創業者みたいに実践を交え、風魔法で声を拡大し行動全体に届けられるように対策も練った。ちょっぴり寝不足な気がするが、気合で乗り切れるだろう・・・・乗り切れるといいな。
もちゃもちゃと考えているうちに、大学に到着。騎士に守られ行動へと直行する。
大講堂、収容人数は500名のその場には1500名も教授や教諭、学生や貴族の子弟が立ち見状態でミッチリと詰まっていた。
教員専用出入り口から中に入ると一瞬の静寂の後、割れんばかりの拍手で迎えられる。
後ろを振り返りマーニに目配せをするとポウさんを取り上げようとするので、ギュっと抱きしめ教壇へと上がった。
拍手が続き、歓声や黄色い悲鳴も聞こえる中、教団の真ん中に立ち騒ぎが収まるのを待つ。
拍手が次第にまばらになり、雑談も途絶え、水を打ったような静けさというか1500名の固唾をのむ独特の雰囲気が講堂を支配する。
深く息を吸い込み有り余る魔力に声を乗せて、まずは名乗りから始める。
『 らいんはりゅと・ふりーど・ふょん・ひゅーら です! きょうは、とくべちゅこうしをすることに なりました。みなしゃんの こんごのけんきゅうのいちじょになれば、うれしいです。』
また、座席に座っていた人々が立ち上がり一斉に拍手を始めた。
拍手はしばらく続き、自分はそっと手御上げる。
会場は落ち着きを取り戻し、席のある物は着席しこちらをキラキラとした目で見つめている。
そして皆に問うた。
『 みなしゃんは ”まりょく”とは、なんだど おもいましゅか?! 』
これがのちの魔法革命の第一声であった。




