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異世界転生 第二の人生は胎児から 新生児からはじまる無双物語  作者: ねむねむぴよ
第三章 新生児、魔法の深淵を覗く。
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閑6話


 久々に大石泰三としての夢をみた。


 帝都大学を卒業する間際、母と慕った町工場の女将が急逝した。

 原因は今で言う過労死だ。儂は半年ほど休学し町工場の整理と廃業手続きに奔走した。

 ひどく悲しかったが、多忙がその悲しみを紛らわせてくれたのだと振り返る。


 大学を卒業した儂は旧財閥系の商社に就職、語学もそこそこにできた儂は世界各国を飛び回り多くの商談を纏めた。その功績を認められたのか軍事関連の業務にも携わるようになり、多くの最新兵器の知識に触れる機会もできた。

 三十路の半ばを超える頃、上司の斡旋で見合いをすることになった。

 年齢は十以上離れた女学校でたての黒髪の少女。その時の美しい彼女の横顔は、今でも目に焼き付いている。彼女はケミカル・医療・医薬品分野の複合企業の社長令嬢、頭も良く自分の三歩後ろを歩くような大和撫子だった。結婚話はとんとん拍子に進み見合いをして半年もせずに結婚、そして第一子の男児が誕生。順風満帆に見えた人生にも転機は訪れた。

 ・・・・妻の父が急逝したのだ。

 妻には兄弟がなく、天涯孤独な儂は入り婿として商社をやめて家業を継いだのが四十に成ろうとした頃だった。

 儂は新規に携わるもろもろの事を必死に勉強した、部外者が突然社長になったのだから相当の陰口も叩かれた。口惜しい事に若いころに比べ頭も固くなりなかなか思うように勉学は捗らなかったが、商社の頃の経験が活きたのか企業の内部改革と取引先の拡大で会社の規模が一気に拡大させる事に成功した。そんな折に第二児と第三児に恵まれた。・・・・とても嬉しかった。

 その頃にはぽっと出の入り婿などと陰口を叩かれることもなくなり、五十路に成る頃には敏腕社長と呼ばれるようになり、商工会の会長職まで熟すようになっていた。


 食品・繊維・外食・建設・・・・多種多様な業界に携わり、腹に一物を持つような狸達とも渡り合った。

 特に頭を悩ませたのが役人や経済界の重鎮そして県や国の議員。正直風を読む才能には舌を巻いた。


 60を迎えた頃長男が自社に就職、数年ほど国の役人として人脈を作らせ里帰りさせた。

 当人にも思うところがあっただろうが、5年程会長職に付きノウハウを叩き込んだ所で無事勇退を迎えた。我ながら理想的な引継ぎであったと思う。

 これで創業者の血が戻ったのだから、古参の重役達からが意義も出なかった。


 もともと贅沢を好まなかった性格もあり、長者番付にも偶に乗る資産家となっていた。

 今まで苦労を掛けた妻に贅沢をさせようとしたが、彼女はただ家族に囲まれて過ごすことで良しとした。

 そんな折、妻に癌が見つかった。五十路そこそこはまだ若い内に入るらしく先進医療・新薬をつかったが病気の進行は予想以上に早く、ベッドの中で儂の手を取り「 貴方との人生は楽しゅうございました 」と言う言葉を残し、先に逝った。

 一年ほど無気力な生活を送った頃、長男の勧めで資産運用へ食指をのばした。

 運用は今までの人脈からの情報提供もあり資産は黙っていても増える始末。妻への償いのつもりだったのだろうか、儂は有り余る時間と財産を社会貢献へと向けることにした。


 戦後間もなかった物のない時代、町工場の夫婦に助けられた恩を返す番になったとも思ったのだ。

 70に手が届いても、まだまだ精力的に動けた。

 東南アジアの貧しい国に井戸や学校を立て、人材の育成に手をのばす。

 毎年の様に各国から表彰され、勲章なども頂いた。

 考えてみれば、儂の人生は運がよかった。人に恵まれ、機会に恵まれ、飢えることもなく家族にも恵まれた。

 だが、恵まれない子供は世界に掃いて捨てるほど存在している。

 儂一人の力では、ほんの一握りの子供たちにしか手を差し伸べられない。

 人を雇い、基金を作り、更に多くの子供を救うべく世界を飛び回った・・・・そんな折、儂は死んだ。


 ・・・・


 儂は趣味と言う物を持たずに過ごして来たが、妻を亡くして無気力だった頃にオタク文化というサブカルチャーに触れる機会があった。

 気を紛らわせるには、程よい物であった。

 アニメ・ゲーム・ライトノベル・・・・若者の作り出す文化に背中を押され儂は気力を取り戻せたのだと思う。


 そして今、神ともいえるそんな存在の力で若者の作り出した文化の真骨頂ともいえる異世界転生を成したのだ。若い肉体、新たな人生、なんと素晴らしいものか。


 ・・・・


 母の胎内から、持てる知識を使い魔法を堪能する。

 日々が輝いて見える。魂の渇きが満たされる気がする。

 しかし、この体の持ち主にもだんだんと自我が目覚めてくる。

 儂の存在が、過去の記憶として移り変わっていくのが解る。

 儂の魂が、この子の魂へと吸収されるのもそう遠くないだろう。

 それでも良い。

 この子が多くの者に笑顔をもたらすよう、過去の記憶となって見守ろう。

 儂はただそう強く念ずるだけだ・・・・


 ・・・・


 「 ・・・・ハルト殿下? ラインハルト殿下? 」

 マーニの声が聞こえる。

 「 何か悪い夢でもご覧になったのですか? 寝ながら泣いて居られましたよ? 」


 「 ・・・・だいじょうぶでしゅ 」

 涙で濡れた頬を袖でグリグリと拭い、にっこりと笑って見せる。

 朝日がカーテン越しにベビーベッドに降り注ぐ。

 ・・・・さて、今日は何をしようか・・・・


 こうして、また新たな一日が始まった。

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