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異世界転生 第二の人生は胎児から 新生児からはじまる無双物語  作者: ねむねむぴよ
第三章 新生児、魔法の深淵を覗く。
35/56

閑5話


 クラウス・フリード・フォン・ヒューラ王の執務室・・・・


 ダン! ダン!

 認可を与えた書類に蝋を垂らし、王印を押してゆく。


 「 ふぅ、茶を持て・・・・ 」

 一通り書類に目を通し終え、給仕の差し出す紅茶で一服する。

 背後の大きなゴシック調の窓から、午後の陽光が薄いカーテン越しに降り注いでいた。


 決済を済ませた書類を文官が、慇懃に会釈し持ち出してゆく。


 王が徐に保留の革用紙の筒から一つを取り出しその報告に再度目を通す。

 その内容は、離宮の、ラインハルトに関する調査報告書だった。


 要約すると、ラインハルトは乳児にも関わらず深夜ギルドに冒険者登録に訪れ、大量の魔物を換金したというもの。これに類似した報告書に夜な夜な窓から飛び立ち魔物の討伐を繰り返している等と言う暗部からの報告も上がっている。

 これに対しては早急にラインハルトの護衛に付けたのだが、増員したにも関わらず追跡は困難との報告も添えられていた。


 王が同席した魔法選定の儀では頭抜けた才能を披露せしめ、その後魔法大学総長の前で山を砕く極大魔法を実行したとの報告も上がっている。

 最初は眉唾と一笑にふしたい所であったが、眼前で息子の魔法の才能を確認してしまっている為、完全に否定しきれない。また暗殺未遂の事件は闇に葬ったが、暗部の者を赤子の手を捻るが如く返り討ちにしたとの自供もある為、何とも頭の痛い話である。

 赤子が赤子の手を捻るように・・・・なんの冗談だ・・・・


 頭の痛い話はそれだけではない、海を挟んだ大国との交易問題。主に関税に関する協議に派遣する事務官とのやり取り。

 3代前の王の国土拡張を目指した際の賠償問題の縺れ。

 一度は大国に成りかけたが、地方自治を許した為に現在では王国ではなく共和国と言っても過言ではないほど国政は混迷を極めている。

 唯一の救いは、このヒューラーン王国が東西の海と陸、南北を繋ぐ交易の拠点であり、南部特産のワインと穀倉地帯・北部の山脈から産出される潤沢な鉱石や宝石で周辺の小国よりも数段豊かである点だ。


 今ある国土だけでも防衛は不十分であるのに軍備は嵩み、事ある毎に無理難題を迫ってくる隣国にも頭を悩ませなければならない。周辺各国に比べれば豊かであるがそれは比較の問題であって、国庫はカツカツなのだ。

 暗部を使い貴族の汚職の摘発にも力を注いでいるが、狡猾で老獪な諸侯はなかなか尻尾を出さない。

 そこに来て、ラインハルトの賢者認定・それに伴う婚礼の申し入れ・・・・まだ半月にも満たない末子に頭を悩ませなければならない。

 「 何とも問題の多いい事よ・・・・ 」思わず独り言ちてしまう。


 そこに来て、またラインハルトがやらかした。

 200年前まだ軍も脆弱だった頃に討伐を試みた、山亀を一人で討伐せしめたのだ。

 それを無理やり慶事し城下町は今やお祭り騒ぎ。

 ラインハルトの名声は否応なく高まり、既に王太子と認めた長男への不満も高まっている。


 「 何かの褒美を出さねば、国民が納得せぬであろうな・・・・ 」

 そんな折、執務室の戸が叩かれる。

 「 閣下、急ぎの書簡が届いております 」

 執務長の爺が、一巻の書簡をトレイに乗せて入室してきた。


 老封を切り、中身を確認する。

 「 ・・・・グランドタートルの素材を寄こせだと?・・・・ 」 隣国の無心の書簡だ。

 思わず破り捨てたくなるのをグッと堪え、書記官を呼びつける。


 ほどなくして現れた書記官に、同等の対価と等価交換であればその申し出を受けると返信を書かせ署名押印をする。


 アダマンタイトの鉱山ともいえるグランドタートルは、ここ数年の赤字を一気に黒字にする良い機会なのだ、みすみす他国に渡せるはずもない、いや毛頭そんな考えはない。

 交易都市を謳っている以上、人の入出国を妨げることは出来ない。その為各国の間者も多数国内に潜伏している。一時、それらを駆逐しても数か月もせぬうちに元の状態に戻ってしまうのも頭が痛い。

 いっそ王太子に全てを任せて引退したくなる。


 だが、その王太子にも問題がある。

 今は猫を被っているが、自国の武力を過信しすぎ周辺小国を格下に見ている節が見受けられる。

 各個撃破するには容易いが、落とした国をどうするのか?連合を組んで攻め入られたら兵力が分散し消耗戦に成ることに考えが向かないのか・・・・今現在辛うじて外交で和平を享受しているだけで、一つ橋を掛違うだけで国土を大きく削られる可能性に気が付かない愚かさが見え隠れする。

 ・・・・ラインハルトが長兄として生まれて来なかったのが悔やまれてならない。

 わずか生後半年も経たずに国庫を潤し、その強大な魔力は一軍を凌ぐ。

 既に言葉もしゃべり、血の巡りもすこぶる良い。


 今後もいろいろとやらかすであろうが、その抑止力は王太子を凌ぐのだ。


 今後15年・・・20年後、果たしてこの国はどう変わるのか、王族同士で血で血を洗う王位継承戦となるのではないか?・・・・いや、それくらいであればまだ俺が生きているはずだ。


 「 陛下、急ぎの書状が届いております 」

 妄想から再び現実に戻される。

 「 うむ、見せよ・・・・・ 」

 書状の中身は、ラインハルトの婚姻に関するもの、隣国の18歳の姫君との婚姻・・・・

 「 ・・・・またか、18歳だと?ラインハルトが二十歳の頃には40手前ではないか、丁重な断りの書状を返せ・・・・はぁ・・・・まともな諸侯や周辺各国は居らんのか?!」思わず声が大きくなる。


 そんな愚痴を零していると、爺が口を開く。

 「 閣下、慣例ではお披露目は一つを数えてからでありますが、ラインハルト殿下のお披露目を半年ほど早めてみては如何かと・・・・ 」

 「 ・・・・まだ・・・・いや、それも一つの方法か・・・・準備は間に合うか? 」

 「 はい、グランタートルの観光と合わせ、更に城下が活気づくかとも考えられます故・・・・」

 「 うむ、確かに。 では良きに計らえ! 嫁選びはその後でも良いであろう。」

 「 はっ! 」


 こうして王は再び書簡の束に埋もれてゆくのであった。



 

 

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