第26話
ブライハイドレイズ・ガル・メリファクトリアス・ロードリアス卿ことお髭先生が頭を上げたのは、オムツが湿って気持ち悪くなり母のクリスティアに張り付いてグズり出してから暫くしだった。
この体はまだ色々と我慢が効かず、尿意・便意・睡魔などにどんなに抗おうとしてもコロッとやられてしまう。特に尿意・便意などはブッルっと来ると次の瞬間にはやらかしてしまう。
現に、今マーニから乳を貰っているのだが、人肌の暖かさとお腹が膨れていく幸福感に満たされ魔法制御の疲れからか睡魔に襲い掛かられている。
そんな中、先ほど漸く鳴りやんだLVUPの神の声と、お髭先生と母の話に興味があり必死で寝るのを耐えている状態だ。
「 殿下は1000年に一人の・・・・大賢者・・・・魔法大学の特任教授に・・・・明日改め・・・・」
「 ラインハルトはまだ一才にも・・・・しかし・・・・陛下にお伺い・・・・でも・・・・ 」
・・・・こんな乳幼児に魔法の先生をさせようとしてるのか、如何ともし難い・・・・
本格的に睡魔が襲ってくる。もうひと踏ん張りと神眼鑑定を自分に掛ける。
>個体名:ラインハルト・フリード・フォン・ヒューラ
>種族名:人間
>称号 :大賢者
>二つ名:触れてはならない者 子供賢者 大賢者の生まれ変わり
>状態値:新生児 生後4か月超 好調 実質状態2歳
>存在値:LV101
>体力値:▼1237HP
>魔素値:▼12346MP (保有12347MP)
>魔道系スキル:▼光 ▼闇 ▼火 ▼氷 ▼水 ▼風 ▼雷 ▼土 ▼木 ▼治癒 ▼浄化
>創作系スキル:▼木工 ▼金属加工 ▼錬成術
>操作系スキル:魔力操作 重力操作 斥力操作 温度変化 水流操作
>強化系スキル:肉体改造 魔力強化
>耐性系スキル:毒物耐性
>探査系スキル:神眼鑑定 探知 遠見
>特殊系スキル:異空間収納 ゲート 無詠唱 念動 早熟
各スキルが明細化され、更に明細が見れるものに▼が表示されるようになっている。
それにしても自重をしらないMPが万を超えてしまった。もうゲームの中ボス並みのMPに思える。
体力も1000を超えているが、中身がポンコツ・・・・いや追いついていない為、活かしきれない。
体力値・鑑定。
>体力値:1237HP
>攻撃値:2.1
>筋力値:4.1
>敏捷値:3.0
>器用値:8.3
>回避率:2.4
>防御力:2.5
LVの恩恵か、肉体能力が結構上昇している・・・・と思いたい。
同年代では常勝間違いないだろう・・・・が、その程度なのが悲しい。
続けて、魔素値:鑑定。
>魔素値:12344MP (保有12347MP)
>攻撃値:1530
>知力値:750
>抵抗値:1845
>幸運率:590
>防御力:2014
基準が少ないので良くわからないが、数字的に何か壊れてる気がするのは気のせいだろうか・・・・
まだ生後半年もしない新生児の持つ魔力量ではない・・・・と思う。
少しだけ、” いやぁこれぐらい普通だなぁ ”なんて言ってくれる人が居たらよいのにと思わずにいられない。
・・・・本格的に睡魔が襲ってきた、頭がコックリコックリと船を漕ぐ。
心の中で、忌々しく思いながらも安ら中微睡みに飲まれていった。
・・・・
晩餐の少し手前で目が覚めた、日は沈み外はもう満点の星が輝く闇夜だ。
不寝番の女給が、自分を抱き起し「 殿下、もうお夕食の時間ですよ 」などと語りかけてくる。
抱っこされたまま食堂へと向かうと王の姿がそこにはあり、母と何やら難しい話をしている。
「 ラインハルトの披露目を・・・・貴族や各国の使節が・・・・いろいろと圧力が・・・・ 」
「 まだ一才にもなっていないのですよ?早すぎませんか? 」
「 魔法大学院のロードリアス総長からも書簡が来ておる。既に一個師団以上の兵力と考えられると・・・・故に教育は重要であり、総長自ら師事してもらいたいと書かれていたが、したいの、間違いであろうな・・・いやそれよりも・・・・」
話し込む二人から少し離れた席に座らせられ、くまのポウさんも席に着く。
「 殿下、お腹は減ってますか? 起きて直ぐですがお食事にしますか? 」
「 あい! 」
返事をすると、さほど待たせずラインハルト専用の離乳食が用意された。
一応自分用のスプーンを持つが、マーニが口に運んでくれる離乳食の方が確実に食する事が出来る。
それを食べながら父と母の話に耳を傾けていた。
コンコンコン
「 お食事中失礼します、ロードリアス卿より陛下宛ての至急のお手紙が届いております 」
「 何? こちらに寄越せ・・・・」
執事が、手紙とペーパーナイフの乗ったトレイをおずおずと掲げ、王が食事を中断しそれを手に取ると半歩程下がった。
シューツ
王が蝋封をよけ手紙の封を切る。
「 ・・・・ふむ、クリスティア・・・・本格的な教育は明日から、魔法大学で行うとのことだ。
近衛兵も付ける、心配するな 」
「 ・・・・はい、しっかりと躾ませんと、ラインハルト? 明日は朝からお出かけですよ 」
「 あい! 」 この時、自分はまだ色々と新し魔法が見れるものだとかなり期待をしていた。
・・・・
朝日で目が覚めると簡単な朝食の後、よそ行きの服に着替えさせられ母に抱かれてそのまま馬車に乗せられる。
離宮を離れ王都の城門を抜け、いつもとは違う区画の商店通りともいえる一角を進んでいった。
馬車には近衛騎馬隊が儀仗兵さながらの派手ないで立ちで付き従い、この馬車が王家の物であると周囲に知らしめてゆく。
中央市街地を抜け目抜き通りをひたすら西へと向かうと、大きく視界の開けた区画に到着した。
「 殿下あれが、王立魔法大学の校舎ですよ 」
女給の一人が、車窓から見える立派な建物を指さしながら教えてくれた。
「 ラインハルト? 今日から度々訪れることになる場所ですから覚えておきましょうね? 」
「 あい! おかぁしゃま! 」
「 まぁ、いつの間に難しい呼び方を覚えたの? 偉いわね、ラインハルトは・・・・」
きつく抱きしめられる母の腕の中からこれから通う大学とやらを眺め、学校正門前にやたらと居る人垣に目を向けた。




