第21話
朝目が覚めて、母の乳をもらいお腹がくちく成ると眠気に襲われる。
何とも不便な肉体だ。
母達の話を聞く限りでは明日の昼には、先生が来訪されるらしい。
それを聞いて、早めに魔法の実証実験をしたくなるのをグッと堪え、何とか日中ごく普通の新生児を演出し、夜を待った。
・・・・
昨晩と、同じように女給(昨日とは別の人物だが)スリープで眠らせる事に成功し、夜の森へとゲートを使って散策をはじめた。
・・・・スキルツリー展開・・・・
満天の夜空に、スキルが一等星の様に輝きドーム状に展開されてゆく。とても美しいただそう思う。
クマのポウさんを引き摺りながら、火魔法の初期魔法から試行してゆく。
枯れ枝を拾い” ファイア ”を念じると、枯れ枝の先端が松明の様に燃え上がる。
その現象に鑑定を使い、備に観察する。
枯れ枝の先端では、魔素を中心とし大気中の酸素が取り込まれ渦を巻く様に魔素へと絡みつく。
その魔素は不思議なことに、可燃性のガスに変質し枯れ枝を触媒として酸素と結合して自然発火。
魔力を燃料とし枯れ枝の先端が火種となって、炎が継続して燃え上がる。
では、空中ではどうであろう・・・・
同じように” ファイア ”を念じると、小枝の時と同様に大気から酸素を取り込み可燃性ガスと変じた魔力が自然発火する。只、触媒が無いため魔力消費量が僅かながら多い。
大気中の魔素が一度体内に入り、可燃物質として変質する指向性をもって、火球へと流れ込む。
永続的に空中で燃焼を繰り返し安定した球体へと形状が変容する。
・・・・スキルツリーの” 火球 ”が鮮やかに輝く。これがファイヤーボールか・・・・
橙色の発光が気に入らず、ターボライターの様に酸素を風魔法で強制的に供給すると、橙色から青白い炎を変わり、形状が棒状へと変化した。
・・・・スキルツリーの” 火矢 ”が鮮やかに輝く。これがファイヤーアローか・・・・
魔力の消費が風魔法を併用することで更に増している。
次はのスキルツリーは” 火壁”。
魔力を壁面上に成形し、ファイヤーアローと同じように酸素を供給すると、垂直平面上に火の壁が出現した。
魔力消費量は当然ファイヤーアローより多いが今の自分、MP保有量ではたかが知れている。
『 ポン 気流への魔力干渉を検知 スキル【気流操作】が派生しました。』
スキルツリーを見ると、魔法を統合するように一つの円形が浮かび上がり、【風魔法】を統合するように【気流操作】の文字が浮かび上がった。
今までなかった物がスキルツリーに現れた事から、オリジナル魔法かスキルに該当するようだ。
燃え上がるファイヤーウォールに酸素を供給する気流操作から、温度変化に変更を試みる。
酸素供給は少なくなったが、魔素から変遷した可燃ガスの化学変化が加速されたのか、激化した炎が辺りを照らす。
ゴブァアァァ!
橙色の火の壁が、青白い炎の壁へと変じる。
ここまでの火力となれば、安易に火の壁に飛び込みすり抜けることは出来ないだろう。
念のため壁の厚さも増やしてみるが、難なく制御できた。
周辺の木々の枝が、パチパチと爆ぜ始める。
・・・・そろそろ、消さないと周辺の森の木々に燃え移りそうなので、魔法を消す。
続けて、スキルツリーの” 火柱 ”に挑戦する。
スキルツリーにある 円で囲まれた” 火柱 ”の周辺には異世界語でインフェルノと書かれている。いや詳しく見るとその円形自体が魔法陣の様に意味不明な記号や文字列で囲まれており、それぞれが逆回りに回転している。
よく見れば他のスキルも同様で、その文字列は魔素の流れを制御する制御文なのだろうが、今の自分には解読は出来そうにない。
まぁ些細な事は気にせずに、” 火柱 ”を発動。
間髪入れず、大人一人分位の渦巻く火柱が出現した。
炎の色は橙色、やはり火力が気に入らない。
気流操作で酸素を供給、温度変化でさらに過熱し魔力も多めに注ぎ込むと、出現時の倍ほどの大きさの青白い炎の渦と化す。
ここまで来て、ふと思う。
魔物をこの魔法で討伐すれば消し炭どころか、灰になってしまう・・・・
素材を無視するとき以外は使えない・・・・見た目が派手で、少しかっこよいと思ったが保留案件だ。
さて、この他にも” 火災旋風 ” ” 焦土劫火 ”などの名が魔法がスキルツリーにあるが、どう考えても大森林火災に成りそうなので自重する。
検証はこんな所で良いだろう、次は早速実践だ。
探知を使うと、活発に活動する獣型の魔物、小型人形の魔物・・・・犬型の顔を持つコボルトと思われる営巣地を見つけた。
重力操作と念動を使い高速で移動、風下に陣取り遠見で対象を視認する。
営巣地に屯して見えるのは数十匹、あとは小屋や物陰に遮られ全ては視認できない。
並行して探知が拾う情報ではコボルトの数は60匹超、内一匹は一回り大きく、かなり屈強そうだ。
・・・・狩の時間だ!・・・・
火球を制御可能ギリギリまで空中に浮遊させる、それを気流操作で断熱圧縮し温度変化で青白い針状まで威力を高めた。
浮遊するファイヤーアローに自動追跡ホーミングを付与、一瞬魔法陣らしき物が赤から緑へと瞬きターゲットをロックオンしてゆく。
そこからゴブリン討伐時と同様に自分を中心に念動で推進力を与え旋回させ、さらに遠心力を載せて加速させていった。
風を切る、シュルルルルルをいった音が漆黒の森の中で木霊する。
今自分がいる場所のみ、ファイヤーアローの発光する光で明るく浮かび上がる。
十二分に加速した魔法を一気に放出する。
シュババババババババババババ・・・・・
サイレンサー付き自動小銃のような炸裂音を上げて飛翔する” 火矢 ”。
ほぼ直進する物、蛇のように蛇行する物、障害物を迂回する様に大きく迂回する物様々だが、全てがコボルトの頭部に命中、前回と違い加速の付いたファイヤーアローはそのままコボルトの脳を焼いても勢いが減退せず通過し、ボロイ小屋を突き抜け周辺の地面や岩に拳大の穴を穿ち・溶かして漸く消失した。
「 グギャギャギャ!!グルルギャギャ!! 」
その攻撃の音で、営巣地が一気に慌ただしくなる。
距離は十二分にあるし風下と言うこともあり、まだこちらに気が付かれていない。
そこに、大盾と大きな棍棒を抱えたボスが姿を現した。
残りの小柄なコボルトは十数匹、追加で発動したファイアーアローで雑魚の全てを一撃で葬る。
だが、ボスだけは違った。
大盾で頭部を守り、ファイヤーアローを防いで見せたのだ。
とはいえ盾は大穴を空けドロリと溶け落ちる。二度目は不可避だろう。
遠見を発動していたが、ボスとばっちり目が合ってしまった。
「 まじゅいでしゅ・・・・・でも、これぇでどうかにゃ・・・・」
ファイアーアローの飽和攻撃でも仕留められそうだがここは実戦練習の場、趣向を少し変えてみる。
ファイアーアローに手を加える。
魔素で先端部分を円錐状を二つ合わせた様に成形し、地面から珪砂を取り出し弾頭を作り上げると先端部分に固定。アロー接続部分には炸裂を強化させた魔力を練り込む。
そして再び遠心力を応用し加速を開始する。
ドッドッドッドッド!!
重そうな足を音を響かせながら直進してくるコボルトのボス。
距離はまだ十分にある。
十分に遠心力で加速が乗ったところでファイアーアロー改を射出!
シュゴォオオオォォ!!
先端部分が大きくなった為、風を切る音も大きくなる。
「 グオォオオオオ!! 」
雄たけびを上げ迫るコボルトのボス。
その腹部の中心に、ファイアーアローが命中した。
ボジュワァアァァ・・・・
肉を焼く音と共に、ボスの腹部に背後まで見える大穴が開いた。
ノイマン効果を応用した、疑似成形炸薬弾の効果は絶大で背骨まで跡形もなく消失させる。
さすがはコボルドボスそれでも数歩はこちらに迫るが・・・・ドスリ音を立て事切れた。
「 あっちょうでしゅね 」
くまのポウさんを引きずり営巣地に向かい、全ての死骸を異空間収納に収める。
数が多かったので少々手間取るが、まぁ仕方ないだろう。
戦闘時間は5分少々。 成果はコボルト64匹+ボス。
これをギルドに持ち込めばまたお小遣いがGetできる。
そう思うとちょっと嬉しい。
そう考えながら、ゲートで王都へと飛んだ。
・・・・
王都:冒険者ギルド。
そこに縫い包みを引きずるラインハルトが姿を現したのは、営巣地を壊滅させて直ぐの事だった。
24時間営業の冒険者ギルド、夜勤の受付嬢がラインハルトの姿を見て凍り付く。
酔いつぶれた冒険者、猥談をしていたパーティの視線が、一斉にラインハルトに向けられる。
誰かが呟いた.「 触れてはならない者・・・・」その者の表情は緊張で引きつっている。
酔いの勢いなど一気に吹き飛び、静かになったギルドの窓口へ赤子がヨチヨチとまっすぐに向かう。
「 いっぱぃ とうばちゅした! どこだしゅ? 」
既に通達を受けている受付嬢の顔が強張る。
「 は、はい、それでしたら、こちらへ・・・・ 」
振り返りながら案内する受付嬢の後ろを、よちよちとついてゆく赤子。
案内された場所は、広い倉庫のような場所で、解体用の器具がずらりと並んだ拷問部屋のような場所だった。
「 ここ? 」「は、はい・・・・お願いいたします」
ドゾゾゾゾゾゾドスン・ドゾゾゾゾゾゾ・・・・
倉庫の一角を埋め尽くすように放出された64体+ボスの死骸が山に成る。
受付嬢の顔が再び引きつる。
「 か、数が多いので少々お時間が・・・・いえ、大至急査定いたします。受付近くでお待ち下さい。」
彼女は弾かれたように、走り去った。
受付に戻ったラインハルトに、仕事空けなのか私服の受付嬢が震えながら歩み寄る。
「 お、お飲みものは、い、いかがですか? エール・・・でわなくミルクなどは? 」
「 あぃ! 」
「 し、至急お持ちします。」
受付嬢が走り去る、受付嬢はみなせっかちなのだろうかなどと考えながら離れていく彼女の背を見送った。
そんな冒険者ギルドの受付なのだが、そこにかなり泥酔した一人の男が、フラフラと近づいてくる。
仲間が必死に止めるのを振り払い、ラインハルトへ声を掛けてきたのであった。




