第1話
真っ暗な水槽の中を漂う・・・・
意識はあるが、やたらに眠い。
そのわずかに意識が明滅する中、強く念じる。
” いまの状態が知りたい!! ”
その瞬間鼻血が出そうな程、脳に負荷がかかる。
” っく なんのこれしき昭和の戦後を生き抜いた儂に恐れるものなし! ”
さらに強く念じる。
『 ポーン! スキル【鑑定】が発生しました 』
どこからともなくメッセージが聞こえる。
” まさに異世界物!!こでだ!!これを望んで居ったのだ!! ”
焦る気持ちを、ぐっとこらえて自分を鑑定する。
>個体名:なし
>種族名:人間
>状態値:胎児 三カ月
>存在値:LV0
>体力値:0.1HP
>魔素値:0MP(保有0.5MP)
>スキル:鑑定
まだ、手足も短く頭髪もない。生まれたての雛鳥・・・・禿だった死ぬ前と大して変わらん状況だ。
そう考えるも、凄まじい睡魔に襲われ抵抗する間もなく眠りに落ちた。
・・・・
・・・・長らく寝ていた気がする。
睡魔から解き放たれ、意識が浮上してくる。
” これでは何もできん!! 早く生まれなければ!!・・・・”
意識があるうちに再び鑑定を使用する。
>個体名:なし
>種族名:人間
>状態値:胎児 三・五カ月
>存在値:LV0
>体力値:1HP
>魔素値:1MP (保有2MP)
>スキル:鑑定
” 何もせぬまま半月も寝ていたのか?!・・・・ ”
時間の経過に強い不安を覚えるが、これでは拙いと考え、成長を促進する方法を模索する。
鑑定LVが低くい為、自分と胎盤周辺までしか認識できない。
わずかであるが、胎盤からいろんなものが、自分の体内を循環していると感じる。
血液のほかに、キラキラと光る不思議な粒子のようなものも循環しているのが解る。
” まずは成長の促進だ!!体内でも何かできるはず。成長促進!!! ”
鑑定のときと同じく、脳に負荷がかかり、鼻血が出そうになるが、それに耐え強く念じる。
『 ポーン 魔素変換:成長促進・・・・成功 スキル【早熟】ガ発生 』
神の声の時と同じような声が脳内に響く。
” よし!スキル使用!! ぐは!! ”
しかし、スキルの使用と共に意識が飛んだ。
・・・・
薄靄の中、意識が浮上してきた。
” 今度はどれ程寝ていたのか・・・・・ ”
すかさず鑑定を使用する。
>個体名:なし
>種族名:人間
>状態値:胎児 四カ月 (実態状況五ヶ月)
>存在値:LV0
>体力値:3HP
>魔素値:4MP (保有5MP)
>スキル:鑑定 早熟
” おぉ・・・体力と魔力が上がっている。よきことじゃ ”
ドクン ドクン ドクン ・・・・
今まで気にならなかった母体の拍動が振動として感じられる。
まるで大型のスピーカーの前にいるような感覚だ。
” さて、気に成ってた魔素値だな、これは魔法を使える基礎になる物のはずだ、もっと伸ばしたいがどうすればよいのやら・・・まずは詳しく自分の体内を見てみるか・・・・ ”
簡単な鑑定ではなく、強く自分に意識を向け明細鑑定を行う。
形状はほぼ人型に成っている、芋虫の親戚からは脱したようだ。
一つ気になるのは、脳内の海馬中央付近に小さな腫瘍のようなものがありそこに魔力を感じる点だ。
卵から孵ったばかりの雛のような状態の頃から、無理をして脳を酷使してきたので拙いものでも出来たのか・・・・しかし脳の神経と複雑に絡み合い、臓器として正常?に動いている節がある。
能々観察すると、砂粒のようなそれは魔力を作り出し、貯蔵する役目を持つのか。血液中を流れるキラキラした粒子が、その砂粒に捉えられ、増幅し、再び体を循環しているのが解る。
” ぬぬぬ、これが魔核とか魔石とかいうものか?!、こんなところにあっては大きく成長できまい ”
しかし、どう見ても砂粒の場所が良くない。
鑑定で透けて俯瞰できている?脳の中心、海馬の中心部分でまだできたての骨に食い込むような形で存在している。
” どこか適当なところへ動かせればよいが・・・・そうだ動かせばよい!! ”
三度強く念じる、”魔核よ腹へ動け!!”
脳がだいぶ大きくなってきたのか、鼻血の出るような感覚は薄らいでいるが、それでもガンガンと頭痛がする。
取り敢えず名付けた魔核に意識を集中する。
魔核から延びる、神経節のようなものを伸ばし限界まで腹の方向へ移動させるイメージを強化する。
『 ポーン 肉体ヘノ意識的ナ変革ヲ感知・・・・臓器ノ一部ノ移動ヲ検知・・・・生命維持ノ危険ガ大キク中断・・・・ スキル【肉体改造】【念動】ガ発生シマシタ 』
” ぐは!! ” 強烈な頭痛でまたもや意識がすっ飛んだ。