瀬戸千歳Ⅰ
つくづくまぬけだなと思う。
何故私は高一にもなって、こんな深夜にトラックの荷台に腰を下ろしているのだろう。
ガタゴトと揺れる振動をお尻に感じながら、私はため息をついた。
「どうしたんだ?」
隣から声をかけられた。
どうやらそのため息を耳ざとく聞きとったらしい。
だけど私は、その問いかけには答えず逆に質問した。
「そういえば、去年話題になってた映画見た?」
「あぁ、あの世界終末系?」
「そう、最終的にはハッピーエンドだったやつ。あんたはどう思った?」
坂月は口元に手をあて、分かり易く首を傾げてみせる。
彼の所作の一つ一つはいつも大げさわざとらしくて、何だかおどけているようにさえ見えた。
「面白かったんじゃないかな?」
「小学生並みの感想ね」
「じゃあ君はどう思ったんだ?」
確かに映画そのものは面白かった。
壮大なストーリーにお金のかかった演出、豪華な制作陣と実力のあるキャスト達、全米が泣いたというのは大げさにしても、名作であることに疑いようはなかった。
ただ、やっぱりスポットが当たるのはいつでもポジティブな人間達なのだ。
「世界は救われました、めでたしめでたし。と、思えない人間もいるんじゃないかしら?」
「なるほど」
どうやら私のその一言で、彼は何を言いたいか察したらしい。
当たり前の話だ。
つい数時間前、彼も同じようなことを言っていたのだから。
「ちょうどいいって、そのまま世界が終わることを望んだ人間も多かったんじゃないかしら。そういった人間からすれば、救世主様達も只のでしゃばり者にしか見えないと思うのよね」
「なに余計なことしてんだよ、って?」
「そう。世界中平等に訪れる終わりなんて、ある意味理想的じゃない」
それを聞くと、彼は心底可笑しそう笑い出した。
笑われるのは今日何度目だろう。やはりあまりいい心地はしない。
「なんで笑うのよ」
「はははっ、いやー、漫画か何かに出てくる倒錯的な悪役みたいだなって」
言われてみれば、確かにその通りだ。
だけど私は、恥ずかしがることももはや馬鹿らしくなっていて、「そうね」と一言呟くだけにとどめた。
「でも安心しなよ。これからは君がその邪魔者だ。そして、当然ハッピーエンドじゃなくて失敗することもある」
私は先ほどと同じようにまた一つ溜息をついた。
「ずいぶんと、つまらない話しになりそうね」
彼もまた、先ほどと同じように笑い飛ばす。
「大丈夫、全米が泣かなくても俺が笑ってあげるよ」
嫌味にしか聞こえないその台詞を、まるで彼は励ますような調子で口にした。
この日、何もなかった私の人生に、前向きなのか後ろ向きなのか分からない、ヤケクソの馬鹿が舞い込んできた。