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ATVってご存知ですか?―クアッド 獣の咆哮ー  作者: act.yuusuke
閑話 1 to 2
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閑話 1 to 2 その2 last

閑話って言うか話のつなぎ的な奴ですね。これ

「全日本なのに、日本じゃなくね!?」

「だよねー」


割りと勢いよく突っ込んだつもりだったんだが「私もおんなじことおもった」ってケラケラ笑っている。あ、なんかかわいい。

曰く、グアムでのレースは日米合流レース的な側面もあったりするらしく、同日開催のイベントが協賛しているらしい。


「それで兄ちゃん、今海外って言うわけなんだよー」

「すげーなアカリちゃんの兄ちゃん」

「びっくりだよね!?でも実はそこまできつい訳でもないらしいよ?」

「ん?どういうこと?」

「手間としては北海道行くためのフェリーとかのほうが時間もかかってめんどくさいらしいよ?」

「基準が高すぎて何も言えねぇ…」


レースに参加したい場合、全日本の会長さんに頼んでマシンを一緒に運んでもらう。

という裏技もあるそうでそういう手段で渡航費を抑えればできなくも無い話らしい。

詳しい費用はアカリちゃんも覚えてないらしいが、俺にはとてもお手軽には思えなかった。


「パスポートとかもいるし、大変そうだよねぇ…兄ちゃんも、よく行くなぁと私も思ったよ…」

「羨ましいとか思っちゃうけどな俺は。本格的に受験勉強始める前に俺もレースしたいとか考えちゃったし。」


この一言をしゃべってすぐ、しまった!と感じてしまった。

目の前のアカリりゃんの目が確かにキランと光る音が聞こえたのだ。


「ソラト君も思った!?私も!私、今まではそこまで興味がなかったんだけど、兄ちゃんとソラト君の追いかけっこが楽しそうで仕方なかったんだ!」

「そ、そうなの?」


大きく身を乗り出したアカリちゃんの顔がドアップになるまで近づいてきた。

俺はたじろぎながら相槌を打つしかできない。


「そうだよ!?私、兄ちゃんのスタートを担当したんだけど、肩を叩く直前なんかこっちもドキドキしちゃって…」

「な、なるほど?」


なるほど。

ドキドキといいながら胸に手を置いているアカリちゃんはかわいいな。

うん。


「叩いた瞬間、ビューンって飛んでいってくのがすごく気持ちよさそうだったの!私もやりたくて仕方がないの!」

「あ、アカリちゃんテンションあがりすぎ…」


 テンションが上がりすぎてかなりキワドイ発言になりつつあったアカリちゃんを冷や汗交じりになだめる。

 アカリちゃんはざわついている周りに気づいて「はっ」と我に返って赤面で「熱くなってしまってごめんね?ソラト君…」と言ってきたが、自分が自分がざわつかせた真の意味には気づいていなさそうだ。

 俺はどうか彼女が気づきませんようにと心の中で十字を切った。あ、また一人トイレに向かっていった。


「それで、ちょっと話を戻すけど、ソラト君レース出てみない?正確にはレースなのかわかんないんだけど…」

「ん?どういうこと?グアムなり新潟なり行こうぜっ!っとかいう話?」

「ちっちっち、勉強不足だねぇソラト君…」

「…そうなんです、教えていただけますかアカリちゃんさん?」


 「さかなくんさんみたいなこといわないでよー」とゆるい突込みを入れてくれたアカリちゃんの話によると

ゴールデンウィーク辺りに一日、タイム・トライアルのイベントがあるらしい。

 場所は前回と同じあのコース。

 ハルノさん主催のイベントで年3回ほどやっているらしい。


「それで、参加資格はレンタルでコースを周回したことのある人。

 前回は見てるだけだったから今回は是非参加したいんだよー」

「前回って…アカリちゃんってあれが初めてって行ってなかったっけ?」

「確かに乗ったのは初めてだったけど、あそこに行ったのは実は2回目なんだ。

 1回目に兄ちゃんが出ているのを見に行ったんだ」

「そうだったんだ…」

「それで…どうする?でる?」


アカリちゃんが小動物みたいに「こてん」と軽く首をかしげながら聞いてきた。

俺は光の速さで即答した…と言いたかったのだが流石に予定が入っていたらまずいと確認するために携帯を開いた。

幸い、その日はガッツリ開いているのでワンテンポ遅れたが、快く返事をすることができた。


「申し込みは当日参加でもいけるらしいけど…」

「いや、俺が前の週あたりにでも直接してくるよ、ついでにコースの練習とかしてくるし」


と、軽く提案してみた。実はこの時の俺はアカリちゃんから「えーわるいよー私もその日空いてるから付き合うねーついでに私と付き合ってよ」と切り返されることを僅かに…いやかなり期待していたのだ。


「あ、ほんと?でも私、その日用事あるし、もう一人誘おうと思っている子が居るから私の分の予約はいらないよ?」


そしてその希望はもろくも崩れ去ってしまうのだった。

アーメン。

あ、ラーメンだったかな?


「んーそっか残念だったな…でも、当日までに特訓してこの前よりうまくなって見せるよ!」

「うん!楽しみにしてる!」


ここで俺は切り替えた。

そう、こっそり(こっそりとはいってない)特訓してアカリちゃんに見直してもらおう大作戦だ!!

何人居るかわからないががんばればいい線いける筈…いけると、思う…多分…


こんな感じでおしゃべりをしながら時間を過ごして適当な所でお開き、となった。

アカリちゃんと別れた後、「ありがとな、ヒーロ。お陰でとてもすばらしい時間が遅れたぜ!ブルジョアー」とメッセージを送ったらすぐ電話が掛かってきた。


『わりぃソラト、すぐ家に来てくんね?割と今ピンチだわ!』

『お、なんかあったのか?ヒーロ。』

『簡単に説明すると(あかね)と買い物中に急用ができてすっぽかしたら彼女が今、EエクストリームO(お怒り)G(ガール)。』

『おいなにやってんだよ…ヒーロ。』


ちなみに茜とは緋色の双子の妹のうちの一人で俺はわりと彼女のほうとは良く会っている。

と、言うのももう一人の妹、紅葉(もみじ)は全寮制の学校に行っているので長期休暇の時ぐらいしかあった事がないのだ。

ちなみに最後にあったのは冬休みのスキー場。

俺は紅葉に雪だるまにさせられたことを決して忘れない。


『とりあえず、なんか甘いもんでも買ってから行くわ。後ででいいからなにがあったか教えろよ?』

『わりぃ恩に着る!あと、すまん!急用については教えられん!』


 こいつは…と思ったが黒井は意味も無く俺に隠し事はしないやつだ。

 まぁ、共通の友人の万引きを目撃して止めに行ったとかそんな感じの話だろう。

 次会った時に「うっわこいつ万引きしたんだ!?」とか思ってやな気分にしないようにあいつが気を使っている…いや、ないな。

 あいつが忘れたころにでもかまかけてみるか。

 そう思い直すことにして親友のSOSに答えるべく、シュークリームを買ってバイクへと向かう。

今回はぬかりは無く姉ちゃんの好きなチャンククッキーも買って母親には「ヒーロの家によってから帰る」と連絡した。


駐輪場には既にATVは無く、思ったより時間が掛かってしまったなとふと思った。

クラッチレバーのつく左ハンドルにシュークリームの入ったケースをぶら下げながら慎重にバイクを発進させる。

レースの誘いと茜ちゃんのご機嫌取り。ミッションを円滑に遂行するためにぎこちなくM(マニュアル)T(トランスミッション)のバイクを黒井家へと走らせるのであった。

次回は来週の金曜辺りに出します。

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