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ATVってご存知ですか?―クアッド 獣の咆哮ー  作者: act.yuusuke
サードパーティー
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サード パーティー その9

「なぁ、ソラト?一瞬愚痴っていいか?」

俺がヒイロの一言に少しだけ目を開かせたのは夜も更けた11時。

灯りの無い砂浜は引き込まれそうな暗闇の海岸線と波音が漂っていた。


「珍しいな?まぁ、一瞬と言わず向こうの方で少し駄弁ろうぜ」


そう言って俺はキャンプから少し離れた海岸線の見えるコンクリートの塀に軽く腰掛けて隣に座るように誘った。

複雑な表情を浮かべながらヒイロがいつもより少し離れた位置に腰を掛けた。


「なんっつーかさ…」

と言いづらそうにしてるヒイロに

「…バイトのことか?」

と辺りを付けてやるとピクリと肩が動くのを見つけた。どうやら当たりらしい。


「…実は、お前に言えない事があるんだけど…守秘義務があって…」

「なんだ、そんなことか」


そう俺が言い終わると今度はヒイロの瞳が開く。

律義に小さい頃の約束を守ってくれているヒイロを嬉しく思いながら半ばキレそうになっているヒイロに気持ちを伝えようと言葉を紡ぐ。


「なあヒイロ、俺な?子供ころに使ってた(親友)と大人が使う(親友)って意味が変わるだと思ったよ。

(お互いに隠し事が無し)でいられた時間ってとても幸せだよな。

だけど、大人になって仕事始めたりしたらそんなの無理だ。

(家族にだって決して言えない)守秘義務のある仕事につくことだってあるだろうし(心に決めた女の子とのあれやそれやこれ)とかはむしろべらべら喋るほうがアカンだろ?

大人の言う親友ってそういう大人が(それでもコイツは裏切らない)って信じれるやつの事を言うんだと思う。俺は、お前のこと、親友だと思ってる。」


一通り話終えると険しかったヒイロの表情はゆっくりと解かれていった。

波の音がザザンと聞こえる静寂の後、ため息を付きながらヒイロは


「…俺もだぜ、親友ソラト


と呟くように声を返した。


「…聞いてほしい愚痴ってのは今やってる仕事が親しい人(家族やソラト)に全く伝えられないって事だったんだ…」

「うん」

「ヤベェと思ったり、許せねぇ事があったり…ただ、今の仕事の中身を愚痴ると周りに迷惑かけちまう…」

「…教えられる時時があれば、教えてくれよ?少なくとも今はその時じゃないんだろ?」

「…ああ」

「長い付き合いになるんだ、それぐらい待てるし、1つ秘密があるぐらいで親友やめるなんかしねーよ」

「かなわねぇなぁ…ソラトには」


天を仰ぐヒイロに続くように俺は夜空を見上げた。

光害のない水平線から見上げた暗闇は自分の家から見上げるそれとは全く違って見えた。


それから俺達は時計の短針が天辺を通り過ぎる位にはくだらない事を喋ってた。


気になってる子が筒抜けの俺が「やべぇ、彼女作りてぇ…」と呟くと「んじゃー俺はハーレム作りるかぁ…」とかヒイロが返す。

ふざけて「トモミちゃんと?」と聞くと「王女様と女騎士?」とふざけた返事が帰ってくる。


進路の話なんかは先生が見てなければ「プロドライバーになりたい」とか「芸能人か政治家になるわ!」とか言いたい放題だった。


イマイチ大人になりきれてない俺達にとってはこんな会話が丁度いい。そんな気がした。


2人用のテントに戻り、寝袋に身を包む。


「…さて、そろそろ寝るか」

「そうだな…サンキューな?ソラト?」

「なんのことかな?…まぁ、俺はヒイロがヒイロらしく居てくれればそれでいいよ」

「っっ…なんだそりゃwまあ、俺は俺らしく居ることにするぜ?」


自分でも良くわからないが、今夜はある意味でターニングポイントだったのかとふと思った。

ヒイロがヒイロらしくいれるかどうかの。

眠気で考えがまとまらなくなってきた俺はそのまま、睡魔に体を預けるように眠りについた。






目が覚めると目の前にはアカリちゃんの寝顔が広がっていた。


ええっ!?アカリちゃん!?ナンデ!?朝チュン!?ナンデ!?何が起こった!?ユメ!?


混乱の極地にいる俺の物音に気づくようにパチリとアカリちゃんの眼が開き、目測30cmで見つめ合う形になってしまった。


これは案件なのか何なのか、完全に思考がフリーズしていた俺は10秒ほどそのままアカリちゃんと見つめ合っていた…

あ、可愛らしい笑顔。


「驚いた?ソラト君?朝のドッキリだよ!」

「アカリちゃん!?マジでビックリしたわ…」

「やった!大成功だねっ!」


俺を驚かせるのに成功したアカリちゃんに一瞬眼を外して辺りを見渡すとヒイロがいないことに気付いた。


「…あれ、ヒイロは?」

「ヒイロ君なら私がここに来たとき、トモミちゃんに引きずられて行ったよ?」


なんかやったのかヒイロ…


一連のやり取りだけで完全に目の覚めた俺は体を伸ばしにテントから出る。

気持ち良い朝の涼やかな海風を大きく吸って体を解しているとコースからダイキさんが現れた。


「おはよーさん、よく眠れたみたいだな?」

「ただ、目覚めはドッキリもあってすっかり覚醒しましたよ…」

「うおっ!アカリ、マジでやったのか…」


どうやらあのトンデモドッキリはダイキさんがネタで言っていたらしい…

ただ、ダイキさんも本当に実行するとは思わずびっくりしていた。

え、ダイキさんGJすぎるでしょ…


「ジャスト十分か?いい夢見れたか?ソラトぉ?」


中々香ばしい事を言ってるヒイロをスパーンと小粋の良い音でツッコミを入れたトモミちゃんは若干涙目になりながら


「は、破廉恥です!それに早すぎです、ソラト君!」


なんだろう、このはやいはディスられてるようにしか聞こえないや。


そんな慌ただしい朝の一幕を繰り広げながらも漸く、イベントはレース当日の朝を迎えたのだった。


というわけで若者が夜だべるパート。

時間作ってヒイロの裏話もかきたいっすね…

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