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ATVってご存知ですか?―クアッド 獣の咆哮ー  作者: act.yuusuke
サードパーティー
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サード パーティー その8

「天野となんか話してたみたいだな」

「あ、ダイキさん。そうはいっても特になにか話したと言う訳ではないですよ?ほら、あの辺の選手速かったなぁとか…」


練習も終わり、走行後の整備も一段落つけての少し遅い昼食時、俺が天野さんと喋っていたのを誰かから聞いたのか、ダイキさんは話していた内容を興味深く尋ねてきた。

とはいっても、そんなに喋るほど内容があった訳ではなかったが…


しかし、ダイキさんはそうとは思わなかったようで目の付け所が良いと言わんばかりに俺が指し示した選手について教えてくれた。


「なるほどな確かに向こうはサードパーティ…所謂、パーツメーカーからサポートを受けているチームだな。最近はそういった活動も目立ってきてるからソラト君には新鮮に映ったかもな」

「…パーツメーカーがチームを作っているのとは違うんですか?」

「お、トモミちゃん?だっけ?良い質問だねぇダイキだと上手く答えれなさそうだから私が代わりに答えてあげるっ」


ずいっと身を乗り出した木下さんは身長こそ一般的な女性だが、流石巨人の弟もを持つ姉と言わんばかりの…俺はアカリちゃんが俺に微笑んでくれているのに気が付いた。うん、やっぱりアカリちゃんは可愛いな。

とにかく木下さんが身を乗り出しながら詳しい説明を始めた。


「そもそもチームって言っても色々あるからね、ワークスなりプライベーターなり」

「ワークス…ってなんですか?」

「個人の逆、要は企業がお金なりパーツなり人員なりを入れてるチームの事よ?トモミちゃんのいうパーツメーカーがチームを作っているっていうのがこれにあたるわね」

「ちなみにうちはプライベーター。要は個人でお金だして出てるチームってことなのさ」


木下さん姉弟がざっと分かりやすくプライベーターとワークスの違いについて教えてくれた。ただ、この場合ってつくってことは…


「そうでないパターンもあるわけですね?例えばパーツだけとかお金だけ融通してもらったりとか…」

「お、ソラト君正解だよっ。その場合はセミワークスとか言ったりするんだよね」

「んで、向こうのチームさんがそのセミワークスって訳なんだ」

「そうならもしかしてそのワークスとかセミワークスっていうチームの方がプライベーターよりパーツ貰ってる分、強いってこと?」

「いやいやアカリちゃん、早とちりはいけない。確かに向こうのチームは安定して速くて強いけど一筋縄じゃいかないのがレースなんだよっ」

「実際、今のシリーズランキングトップは天野大地んとこだしな」

「即座に天野くんの所を話題に出す辺り、ライバル意識むき出しだねぇーダイキは」

「うっせーそんなんじゃねーよっ」

「と言うか向こうはほぼワークスみたいなもんだけどね…」


トホホと続けるように肩を落としていた慧君。やはりワークスかそうでないかはレーサーにとってかなり重要なファクターに感じた。

だが、次の木下さんの言葉は予想外のものだった。


「まぁ、でもオフロードはオン…特に車とかカートに比べてまだレーサーに依存するところが多いから単純に良いパーツ使ってれば早いって訳じゃないけどね」

「えっそうなんですか!?」

「ああ、よく言われてるのはトップカテゴリーの場合、車はオンで9割オフで6~7割。バイクはもっとレーサーの技量よりでオンで6~7、オフで4割とも言われてるな」

「んでATVはというと…4輪と2輪の間の子って感じだから大体半分?」

「?何で疑問系なの?」

「いや、ATVはまだプロスポーツ化して間もないから一概にこう!とは言えないのよね…まぁ、とにかく!レーサーも大事だけどメカも大事ってわけ!それに良い忘れてたけどプライベーターはパーツに縛りが無い分、自由にサードパーティ品を組めるってメリットもあるし!要は私も頑張るから、あんたたちも頑張りなさいってこと!」

「ヘイヘーイ…」

「ヘイヘーイってダイキ、あんた後輩や妹がいるからって変に斜に構えすぎよ?」

「ば、ばっか!そんなんじゃねーよ!」

「ははは、ねぇさんにはやっぱり叶わないねぇ?ダイキにーさんは」


それから俺たちは食休みをかねて雑談したり、コースで行っているレースの観戦をマッタリおこなっていたりした。

どうやらこのイベントはオフロードカーのレースと協賛しているらしく、コースは休むことなく使用され、ダイキさんが走っていないときは軽自動車の有名なクロカン的車での耐久レースが行われていた。


「のどかねー」

「いやいや、トモミちゃん、走ってる人たちはそうでもないと思うよ?」

「アカリ?どういう事??」

「いやね、私もこの間タイムトライアルやってきたんだけど滅茶苦茶頑張って走ったの!ただ、実際に走ってる映像見せてもらったら、遅!?私、おっそ!?…ってなったの!だからこの人達もおんなじ感じなんじゃないかなぁ…って思ってね?」

「そうそう、きっと俺っちがあれ乗ってたら脳内BGM、ずっとロックンロール掛かりっぱだわ!命削ってアクセル全開!ってやつだぜ!」

「なるほどねぇ…あ、あんたは帰りも安全運転だからね!?」


ヒイロがトモミちゃんとやんややんや言っているのを横目で眺めながらふと思った

そういえばこの中でトモミちゃんだけATV未経験だと言うことに気付いたんだけど…彼女は楽しめてるのかな…?


「そういえばトモミちゃん、ATV未経験だったかと思うんだけど、ちゃんと楽しめてる??」


ありがたい事に聞きづらかった頭によぎった疑問をズバッとアカリちゃんが聞いてくれた。

ありがたいけど、割とど直球に聞くな!?


そんなアカリちゃんに慣れているのかやれやれっといった表情をついたトモミちゃんは


「全く…ちゃんと楽しめてるわよ、アカリ?まぁ、今度こそ言ってたコース?連れてってよね?」

「うん!一緒に遊ぼうね!トモミちゃん!」


と中々にふれんどりーな返し方をしていた。


その後もダイキさんやケイくん、ダイチさんらの練習走行を観戦したり、マシンメンテナンスについて色々と教わったりと女性陣には悪いが有意義な時間を過ごせた。

地味に驚いた事なんだが、メンテナンスについてはヒイロが物凄く熱心に聞いていてとても驚いた。

何か思うところがあるのだろうか?


とにもかくにも、全日本という大きな試合の前日は思っていたより穏やかに過ぎていくのだった…


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