サード パーティー その6
今更ながら何文字ぐらいで区切ってたか忘れちゃいましたね
「ソラトくん凄いじゃん!?」
「始めてのマシンでジャンプって、やるなソラト!」
走り終えたマシンをダイキさんのパドックに戻し、装備を外しながら一息ついた俺に掛けられたのはアカリちゃんとヒイロの称賛の声だった。
「いや、正直少しびびってたよ…あれはなんと言うか…たまたま出来たって感じだったわ…」
「いやー君、始めてなんでしょ?始めてにしてはやり過ぎなぐらい上出来よ!?最後の一蹴りも上手かったし」
最後の一蹴りと言うと…あの時か?
「まーこんなに可愛い子が自分の事をしっかり見ていれば気合ぐらい入れるわよねぇー」
俺が一瞬だけアカリちゃんを見たのを気づいた木下さんは意地悪そうに笑いながら俺の気持ちを言い当てた。
ねぇちゃんソックリだ!
そんなねぇちゃんそっくりな木下さんはその表情をガラリと変え、呆れ顔でダイキさんに声をかけた。
「…まあ、自分のマシンをほったらかして天野くんにライバル意識むき出しのダイキよりは随分とマシだけどねぇー」
木下さんに声を掛けられたダイキさんは先程のレーサーから視線を外してバツの悪そうな顔をしながらこちらに振り返った。
さっきのレーサーが天野さんと言うのだろうか?
「いや、わりいわりぃ…でも、ソラトのラストのジャンプ だってちゃんと見てたぜ。踏み切りでアクセル抜かないで良いジャンプだったじやねーか」
「ダイキさん、ありがとうございます!…にしても何で二人とも踏み切りにそこまで拘るんですか?」
俺はふと、沸いた疑問を二人にぶつけてみた。
「それはな…」
「それはおいらが説明しとくからダイキにーさんは準備しておいでよ」
「ん?ああ、ケイか?ってそろそろ時間か…わりぃ、助かるよ!」
ケイくんに準備を促されたダイキさんは入れ替わるように裏に下がった。
ケイくんはそのまま説明を続けてくれた。
「さて、ジャンプの下りだったね?
まぁ、要は空中にいる際の姿勢が飛ぶまえのアクセルの開度で大まかに決まるんよー
開けたら車が起き上がるよね?
基本は靴みたいに後ろから地面についた方がいいんよ」
「逆に上げないと爪先から…最悪、転んでしまうっていう訳なのよ…さて、ダイキも準備出来たみたいだし二人共行っておいで!」
「「おう!」」
ほとんど準備出来ていた二人がヘルメットとグローブを着用したのを確認して木下さんは彼らを送り出した。
豹変したケイくんの纏っていた空気が劇的にレーサー然とし始めたのが印象的で
トモミちゃんが驚きで息を飲む音が聞こえた気がした。
キーン… キュッ!ゥォオン!ブゥオン!
合わせたようにハモった単気筒のエンジンが音を奏でる。
最初のモーターのような音はケイさんの空冷ファンの音だろうか。
性質の違った2台のマシンは「俺たちには違う役割がある」と叫ぶようにタイミングをずらして発進する。
が、1列になってコースへ進む様子は「各々で獲物を取る」と言う強い同族意識を感じさせる狩人の群れのように見えた。
俺達はガソリンが造り出す根源的な狂気の音に、その後の二人の走りに、期待を募らせていくのであった。




