サード パーティー その5
(ハァ!ハァッ!や、ヤベェ!?)
アクセルを奥まで回し、暴れ牛のように暴れる「これ」にしがみついている。
アレから俺はダイキさんのマシンでコース内を回っているところだ。
一周目のコースチェックをノーカンとしてまだ3,4周も済んでいないにも拘らずハードすぎるフィジカルの要求に俺は驚愕していた。
先程まで走っていた幹線道路と同じスピードレンジで走れる車体。
広い道幅は遠くからだと一見、何処を走っても同じように見えたが全く違う。
同じ砂色にカモフラージュされている不規則な凹凸は同じく不規則に俺を振り回す。
まるで、安全バーの着いていないジェットコースターだ。
只のストレートでさえ、前の人が掘った窪みや砂の絡み付きで重りのついた鎖のように俺の手足を重くさせる。
それでも。
「それでも!この楽しさだけは嘘をつかないっ!」
このコース最大最長のストレート。海辺まで伸びる太い一本道で俺は叫んだ。
ここは轍もまっすぐ伸びていて、気持ちよく空いたアクセルに風が返事をしてくれる最高の区間。
ここがあるなら何周だって走れる気がしてくる。
そんなことを思いながら走っていると、後ろから凄い追い上げを見せてくるマシンの音が聞こえてきた。
ふと、振り返り見てみると先程手前でスタートの練習らしき事をしていた一台がそのまま走り始めたらしい。
(ちょっと後ろから様子を見てみるか)
俺はマシンを外側に走らせながら手で先に行ってもらうよう合図をした。
追い付いてきた一人に辛うじて首が動いたのが分かる程度の挨拶をされたと思ったときには既にあっという間に抜かされた後だった。
走り去るマシンを遠目から見ていると
木下さんの弟のケイくんと同じマシンに見えた。
恐らく4st水冷450cc。
モトクロスでも使われる最強の単気筒エンジンはATVレースの世界でも一緒らしい。
乗り手も素晴らしく、俺が苦戦したセクションでも猫のようなしなやかさで地面を蹴ってスピードをあげていく。
(…っておいおい!?まだ速くなるのかよ!?)
バックストレートから緩やかなカーブまでを大きな助走とするようにコース内の段差に向かっていく。
同じマシンに乗ってもとても出来そうにない圧倒的な加速で彼は段差を踏みきり、翔んだ。
チクタクチクタク…
機械式時計が8ビートで一小節が刻めるほどの体感時間、彼の四輪はシャープな流線型を描き、空を翔んでいった。
大型鳥類が翼を広げ減速するようにフワリと、着陸を決めた彼には純粋な尊敬の念しか湧かない。でも、
(次は、俺の番…っっつ!?)
ヤバい、壁だ。
横から見てももしかしたら飛べる坂道にしか見えなかったこれが俺にとって最早壁にしか映らない。
あの人はこれを飛んだのか!?
手前で少しアクセルを緩めてしまった俺はちらりと前へ、そしてダイキさんの方を見る。
ダイキさんはどちらかと言うと俺と言うよりまえのマシンの人に目を配らせており、他の人のどよめきと相まってさっきのジャンプが普通じゃないレベルだと言うことを物語っていた。
…でも、そのなかで横にいるアカリちゃんとヒイロだけが俺を見ていた。
(見られている!)
踏み切りに差し掛かる手前、臆していた気持ちが二人によって再び奮い起こされた俺は、後ろから自身を蹴り出すようにアクセルを握りしめた。
フワリとした内蔵の浮く感覚を感じたかと思えば着地の衝撃。
上がりきった心拍数はここが今回の俺のレッドゾーンだと体に訴えかけていた。
こうして俺の初レーシングマシンの体験は小さなジャンプの成功と共に幕を閉じたのだった。
やっぱ、アクションのシーン書いてるときは最高っすね




