サード パーティー その4
「げっ!?ダイキ、あの話マジだったの!?」
ギョッとした顔で木下さんがダイキさんを遮るように話に入ってきた。
あの話とは一体なんの話だったんだろうか…?
「ああ、マジだぜ?ってか最初からガソリン多めで持ってきたから燃料は大丈夫だろ?」
「うーんまぁ、そうだけども…」
木下さんはかなり悩んでるみたいだったが、最終的には気持ちに折り合いがついたようで俺に釘を刺した。
「どうせ、壊れたら私が駆り出されるんだからあんまり壊さないでよね!」
「りょ、了解っす…」
俺は苦笑いで返すことしか出来なかった。
因みに。
「ダイキさん、俺っちは…?」
「お前は…」
「「あんたは壊しそうだからだめっ!」」
「…って話らしい。まぁ、実績に裏打ちされた信頼ってやつだな?よくも悪くも」
と、ヒイロのコースインはなかなかの早さで否決された。
と言うか何も知らんトモミちゃんにまで言われるとは…
「さて、そうと決まったら、会長のところに行くとしますか」
さて、そうと決まったらしいので会長のところにダイキさんと向かうとした…会長!?
「あっ会長、一人走らせたいやつがいるんですけど良いですか?」
あっさりと大会本部に連れていかれたが、あまりにあっさりと言い放つダイキさんの言葉に俺はつい、ギョッとしてしまった。
しかし、会長は思っていた以上にフレンドリーな様子だった。
気負いしてた俺には軽め、と言うか優しげに声をかけてくれていて
「あぁ、いいよ。んじゃーこれをよく読んで納得できたら署名してね。最後に走行代を払えば走っても良いからね」
そう言いながら一枚の紙を俺に寄越してくれた。
「ええっと…これは…誓約書ですか…?」
俺は渡された紙をざっと一読してみる。
あーこれ、要は
「要は死んでも怪我しても委員会側は責任取らんよ?って話だな!」
ダイキさん、物騒な意訳のし過ぎです。
でもまぁ…
「今までとあんまり変わりませんね」
さっさと署名をして誓約書を返すと、会長は俺にコースでルールなどの説明をしてくれた。
案内されている途中、ちらほらと此方を見てきているレーサーの人達がいた。
と言ってもweb小説でよくある「冒険者ギルドに来たばかりの生意気な新人」的な感じではなく、どちらかと言うと「ふとみつけた同じマイナーゲームをやってる同好の人」的な感じで、割りとウェルカムな空気が印象的だった。
「…と、まぁこんな感じだけど…なにか質問はある?」
「今のところは特に無いですね…とりあえず今日の走行は一時間後であってますよね?」
「うん、合っているよ。ただ、彼といるから大丈夫だと思うけど…怪我とかはしないように気を付けてね?」
「ありがとうございます」
俺は会長と別れてダイキさんのパドックへと戻ったタープテントの下ではアカリちゃん達が机を準備し、簡単な昼食を取っていた。
俺も食べるか、と用意していたおにぎりに手をかけようとしたときにダイキさんからやんわりと待ったが掛けられた。
「あーソラト?先走って良いから、飯は走った後の方が良いと思うぞ?」
「ダイキさん?そうなんですか?」
俺が疑問そうにしている顔に満足したのかダイキさんはしたり顔になった。
「お前、俺のマシン乗ったことないだろうし、コースも始めてだから先言っとくとな…
…吐くほどしんどいぞ?」
俺は一時間と少し後にこの台詞が正しかったことを知ることになった。




