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ATVってご存知ですか?―クアッド 獣の咆哮ー  作者: act.yuusuke
サードパーティー
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サード パーティー その2

「うーんそろそろ見えると思うんだが…」

「えーっと…あ!あれじゃないかな!?ソラト君!」


昼前の心地よい暑さ漂う日本海沿いを走る俺たちに飛び飛んできたのはやたらカラフルなのぼり。

所謂、赤、青、黄色、ライムグリーンなやつだ。

一目でモータースポーツのイベントとわかるそれはどうやらダイキさん曰く、ここ最近にやっと国内メーカーが再び本腰入れ始めた証らしい。


「そうっぽいね。えっと駐車場は…こっから入ればいいのかな?」

「トモミちゃん!ヒーロくん!着いたよー!」



空いてる駐車場へ車を止め、先程からチラリと目にはいる砂浜の先に幾つかのテントが見える。

恐らく、ダイキさんはあの辺りでレースの準備をしているんだろう。

それにしても…


「コース、広ぇ…」


いつも走っていた場所より明らかに道幅の広い特設コース。

バギーカーのレースも併設されるこのイベントは市の興行として行われているため、道幅もイベント自体の規模もなかなかにデカイ。

普段の狭いコースに比べると、どこを走れば良いか分からなくて目眩が起こりそうになる。


「お、ソラト君!それにアカリ!来てくれたのか!」


俺がコースの広さに呆然としていると、ダイキさんが俺たちを見つけ、声を掛けてくれた。


「あ、ダイキさん!おはようございます!」

「にいちゃん!私はついでですか!?」


じゃれあうように憤るアカリちゃん。やっぱかわいいな!?おい!?


「いや、ワリイワリイ!まさかホントにソラト君らがここまで来るとは思ってなくてさ」


そういいながらダイキさんは俺たちをぐるっと見渡した。

ヒーロはダイキさんに目が合うと中々の反射速度でダイキさんに声をかけ始めた。


「ダイキさん、おはようございまーす!」

「おう!ヒーロ君も元気そうだな!あと、アカリの友達の…トモミちゃんも来てくれたのか、わざわざありがとうな?」

「ご無沙汰してます、ダイキさん。」

「あれ?ダイキさん、知り合いなんですか?」

「ん?ああ、トモミちゃんはアカリがよく家に連れてくるからね、パジャマパーティーって言うんだっけ?」


どうやら思っていた以上にアカリちゃんと仲がいいみたいだ。


「ダイキさん、ということは…トモミちゃんの寝間着…つまりネグリジェをみたことがあるってことっすか!?」

「あんたの中で私はどんな人間になってるのよ!?」


ヒーロの最早セクハラにしか聞こえないボケに鋭いツッコミを返すトモミちゃん。

俺もヒーロの中で彼女がどういった人間になってるのか気になってしまった。


「いや、つってもこの二人、家では結構ジ…「にいちゃん、それは言わないで!!」」


ダイキさんの台詞を塞ぐように声をあげたアカリちゃん。

そりぁ、同い年の男子には私生活が露見するの嫌だよなぁ…

でもそういうの、可愛らしくていいと思います。


そんなことを思っていると、件の二人が俺とヒーロの前に立ちはだかるようにして立った。


「さっきのは!!」

「わっ、忘れなさい!!」

「「畏まりました!!」」


俺とヒーロが一子乱れぬ敬礼で彼女たちに忠誠を誓っていると、ダイキさんの後ろからケラケラと笑う女性の陰が見えた。


「なにこの子ら!?面白すぎ!」

「あー?木下、コイツらが例のタイトラの二人だよ」

「へえ…やっほー、って言っても初対面だね?木下めぐみって言いますっ!きのしーでもメグミンでも好きに呼んでね?」

「いや、メグミンは…ちょっと…」

「ダイキ!?なにが悪いって言うのよ!?」

「うん、いや、まぁ、な?」


とりあえずこのやり取りでダイキさんと仲の良い女性ってことは分かりました。

あ、そういえば…


「ダイキさん、そういえばタイムトライアルのイベントで木下さんが居るとまた違った…とか言ってましたね?」

「良く覚えてるな…多分ソラト君の言うその木下で合ってると思うよ?」


どうやら合っていたらしい。

と言うことは彼女も「ヤル」って事か…


「…ジーッと見られるのはちょっと恥ずかしいかな?」


木下さんは俺を一瞥すると、一瞬張った空気を解すようにおどけたような口調で話し始めた。


「むむ!?ソラト君!」

「え!?あ!?違うんだアカリちゃん!?そんなんじゃない!?そんなんじゃないんだ!?」


恥も外聞もなくつい、みっともない弁明をしてしまった。

えっ、と言うかアカリちゃん嫉妬してくれてるの!?まじかよ。


俺が若干思考が混乱しているとそこは流石、大人の女性。

木下さんは俺の意図を組んで話を戻してくれた。


「まあ、ソラト君的にはATV乗りとしてどう?って話でしょ?

言っとくけど、私はそこまで速くはないわよ?」

「え?そうなんですか?」

「いや、ソラト君、ソイツの言うことはあんまし真に受けない方がいいぞ?」

「え、そうなんっすか!?」


そんな速い遅いの言い合いラリーはアカリちゃん曰く良くある「夫婦喧嘩は犬も食わん」と言うヤツらしく、この後も永遠と続いた、

俺たちはそんな二人をほっておいてさっさと次に行くことに決めた。


「…ダイキさんのパドック行くか…」

「そうね、パドックって言うのがなんなのか分からないけど、そうしましょうか」

「あー…要はレースマシン、置いてある所だわ…」

「にーちゃん、先いってるねー」


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