サード パーティー その1
長い休止になっちゃいましたけど新章投稿しますね
「なぁ、ソラト」
「ん?ヒイロ、どうかしたか?」
「俺…もう、お前のひざ枕でいいかな?ってくらい眠い…」
「何いきなり気持ちワリィ事いってんだヒイロ!?頼むから次のPAまでは普通にハンドル握ってくれ!!」
「そうだよヒイロ君!PAまでちゃんと運転すればきっと、トモミ ちゃんだってひざ枕してくれるよ!?」
「マジで!?ィイヤッホォォオイ!!」
「ちょっとアカリ!?私を勝手に生贄に捧げるの辞めてよ!?」
夏休みももう終わろうかというか9月手前、俺達は取りたての普通自動車の免許を忍ばせ若葉マークのついた家のコンパクトカーで旅行へと出掛けていた。
行き先は新潟。目的は勿論ATVだ。
と言っても、今回は俺が出場!って訳ではなくて、「ダイキさんを観戦しに行こうぜ!」って言うのが主な目的だったりする。
「まあ、そこまで喜んでくれるのは悪い気…しないけどさ…」
(((デレた…)))
今回、アカリちゃんの他にトモミちゃんという彼女の友達を乗せての4人、2ドライバー体制で会場へ向かっていたりする。
ヒイロが何故かちゃっかり免許を取っているのには驚いたが聞くとバイトで無理矢理取らされたらしい。
まぁ、俺としてはドライバー1人という事態にならなくてホッとしている所なんだが…
話を戻すとトモミちゃん。まぁ、アカリちゃんがこの間のタイムトライアルイベントで会わせたがっていた子だった訳なんだが…
普通に面識がありました。
というかクラスメイトだったよ!?
そんな彼女が夏休みの短くない時間を俺たちと一緒に過ごすことになった経緯は学校で夏休みの予定を話し合っていた終業式までさかのぼる。
「夏休み…」
「おう。」
「高校最後の夏休み…」
「おう、そうだなヒイロ。」
「ハイスクール最後の夏休み…」
「つまり、推薦とはいえ受験を控えた夏休みだね、アカリちゃん?」
「…そう、受験勉強!それはとっても大事!」
「だけど、そればっかりだと凝り固まっていけねぇ!?」
「「そんなときには!?」」
「息抜き…つまり足を出してくれってことだろ?…まあ、予想してたけどさぁ…」
「「ぎくっ!?」」
わざとらしく子芝居を挟んだが以前の春休みと同じように教室で俺達は遊ぶ算段をつけていた。
以前と違うのはアカリちゃんが増えたことだろうか。
「アカリー…ってあれ、二人ともまだ残ってたの?」
「まぁ、ちょっとな」
「トモミちゃん?今ね夏休みにソラト君たちとニーちゃんのレースの話しようとしてたとこなんだよー?」
「だぜ☆!」
「…まぁ、二人から来る話題ならそうだとは思ってたけどさ。…んで会場はどの辺になるの?」
「今年は新潟!らしいよ?」
話の途中から現れた彼女は話が終わったあとアカリちゃんを連れ出したいのかフンフンとあまり聞く気の無い返事をしながらその辺の机に腰をかけ始めた。
「ちょっと遠そうだな…」
俺がそうこぼすと二人が熱く反論する。
「でも、夏休み位だよ!?時間取れるよ!?」
「それによ、ソラト。全日本のレースだぜ?ダイキさんの全力、見たくね??」
確かに全日本のレース、要は日本最高峰のレーサー達の競争だ。興味が無いわけはない。
しかし、このときの俺の懸念は時間と言うよりも別の問題だった。
「でも、うーん…ドライバーが俺1人っつーのはなぁ…」
「んん??」
「そーいや、泊まりはどーすんよ?ソラト?」
ヒイロはもはや、決まりと言わんばかりにレースに観戦行くことを前提とした話題を出し始めた。
仕方の無い奴だな。
「…まぁ、二人用が1セットあるから…アカリちゃんをそこに泊めさせるのは?あとは俺たちが車泊?」
「え!?車泊の方が良さそう!ヒーロ君、変わってるよ!?」
「んんん???」
「まぁ、俺はヒーロと車泊だろうがテントだろうがどっちでも構わんけど…」
「え?あれ?ちょ、ちょっと待って!?」
俺たちの会話に割り込む形で混乱した彼女の制止の言葉が耳に届いた。
まぁ、一人だけ話題に着いていけないのは可愛そうだと一通りの説明をしたわけだが、彼女こと潔癖少女トモミちゃんは凄まじいリアクションを俺たちに見せてくれた。
「…なんですって!?アカリ、コイツらと3人で旅行行くの!?」
「うん、でもニーちゃんが現地でハイ○ース乗り付けて先回りしてるし…」
「○イエース!?なんて卑猥な単語!?」
「いや、お前それはハイエー○に失礼だろう。」
「こんな狼2匹にウサギを放牧するような真似、私には出来ないっ!?…決めたっ、私付いていくわ!」
「お、おう…」
もはや鬼の気迫…といった印象で見ていることがバレそうになった俺は絞り出すように彼女の参加を了承した。
「ま、まぁ一人増えるぐらいなら構わんけど…」
「トモミちゃん、本当に!?わーい!楽しみが一つ増えたよ!」
そんなこんなで彼女の全日本の観戦ツアー参戦は決定したのであった。




