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ATVってご存知ですか?―クアッド 獣の咆哮ー  作者: act.yuusuke
ファーストインプレッション
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ファースト インプレッション その2

ATV、のります!

「バイクとは似てはいるんだけど…」


ATVに初めて触れてみて、俺が始めに感じたのは違和感だった。

まず、アクセルが違う。ハンドルはそのままバイクにしか思えないのだが右手に本来あるはずであるアクセルを回す、という動作が出来ないのだ。

講習の時に知ったのだがどうやらATVのアクセルは右手の親指をハンドルの下に持っていったところにあるらしい。

捻る、でなく押し付ける、というイメージが近しい気がする。

俺ははバイクとの違いを確かめるように興味深くカチカチと、逆に黒井は普段バイクに乗らないからか興味深いというよりは初めて出会った玩具をみているように目を見開き、各部を触っていた。


「兄ちゃんってこんなの乗ってるんだ…」


 乗る前にと後ろに簡単な髪止めをした戸部さんも「おお」といったような顔でマシンを触っていた。

 正直、女の子とのメカのコラボレーションはとても絵になると思う。

 元々アクティビティをしに来ていると主張するキュートなロングパンツルックスでさっと後ろ髪のワンポイント。

 ホッペにオイルつけてスパナもってVサインとかしてくれたら頭のネジが熱膨張で爆破解体!しても悔いがない位可愛いと思う。


「今回乗るのはこれっすか!?」


 黒井は緑色のぼでぃをしたマシンをペシペシと軽く叩きながら春野さんに聞いた。

 待ちに待った搭乗タイムからか乗馬前の馬に語りかけるような勢いでマシンに手を置いた黒井は遠目でみてもにやけているとわかった。


「そうそう、今回はこいつ、ユーティリティモデルの125ccやつを乗ってもらうよ。」


 ユーティリティモデルとは所謂、農業とか林業とかで使われてるようなモデルのことで、バック変速だったり全輪駆動だったりと便利に使える代物らしい。

 クラッチはついてなく、自転車のように右手フロント、左手リアのブレーキ。ギアは右側の足元に自動車についているようなものがあったりする。

 ユーティリティモデル以外はスポーツというのもあって此方はバイクににた構造の競技で使われるようなモデルらしい。

 春野さんのところでは全国的に珍しく、レンタルでスポーツモデルも乗ることができるらしい。

 が、馴れたものにしか貸してもらえないらしく所謂お得意様専用機。初っぱなの俺たちにはまずはユーティリティ、ということらしい。


「まぁ、兄ちゃん達、そいつもここで走るぶんには十分速いから安心しなって。」


 実は先ほどからチラチラと目に入っていたんだけれども敢えてスルーしていた戸部さん(兄の方)なんだが、すさまじく気合いが入っているように見える服装をしている。ガチである。


 手に持っているのはカラフルなロゴのヘルメット、膝したまでかっちり固めてあるスキー、もしくはスノーボードに使われるようなブーツ、世紀末にいそうな感じのチョッキ?の下から見えるメーカー名の入ったシャツ。

 はい、あれです。どうみてもオフロードコースを走るプロみたいな格好です。本職の人なのかな?


「あぁ…レーサーの方でしたか…」

「ん?ああ、一応やってるっちゃやってるけど趣味だぞ?」

「兄ちゃん、初めて一年たってないもんね!格好だけは一人前だから誤解されちゃったね!」


 天真爛漫そうな戸部さん(妹)が軽い毒を吐きながらニシシ、と可愛らしく笑うと兄の方は「う、うるせぇやい!」と気恥ずかしそうに返していた。

 なかなか厳つい第一印象と第二印象だったが第三印象にして(ようやく)実は(男の)ツンデレ疑惑というまともだか良くわからない彼に親しみを覚えた。


「ああそうだ、自己紹介忘れていたな。俺は戸部 という。戸部(とべ) 大樹(だいき)だ、よろしな、」

「「よろしくお願いします!」」

「とりあえず、皆乗り込んでみてくれ」


 春野さんに促されるまま俺たちはあいさつをそこそこに早速マシンに股がってみる。

 バイクとの違和感はさほどないのかな?と疑問に思ってすぐ、それが思い違いだったと気づく。乗り始めから車体が安定している。バイクでやっている片足を地につけた姿勢が出来ないのだ。

 とはいえ構造がそこまで違う乗り物でもない発進、走行、停止と講習を受ければそれほど難しいものではなかった。

 ただ


「どーよ!?俺、プロ並みじゃね!?」


と目をキラキラさせて言っている黒井やジェット ヘルメットから「ATVってすごいっ!」といった表情をしてる戸部さん(妹)を横目でみて、「敷居低いなぁ…」と思ったのは内緒だ。


◇◆◇◆◇◆


 ハンドルをとる、マシンを振り回すように車体を揺らす、アクセル全開でトラックの外周を回る、パイロンをアクセルの緩急をつけながらくぐる。

 一通りトラックで、出来ることを済ませて戻ってみるとさっきまで腕を組んで妹を眺めていた?戸部さん(兄)がいないことに気づいた。

 まぁ、単に裏手に回っていただけだったのだが…彼は今俺たちが乗っているものより明らかに速そうなマシンを手で押して戻ってきたようだ。


「ええっと…戸部さん?それは?」

「ん?いやこれから本格的に始めようかと思っててね。春野さんにマシンを調達してもらってたんだ。んでこれがそれって訳。」

「兄ちゃん、せっかくだから着いてこいっていきなり妹にいうんだもんね」

「でも、結構面白いだろ?」

「まぁ、確かにおもしろい!」

「だろ?まぁそれでずっと遊んでてもいいだが…こいつはちょっと違うんだ」


鼻が高いとはこういうことかという見本のような顔をして持っていったマシンを戸部さん(兄)はポンポンと得意気に叩いた。


「うーん、今乗ってるやつもかっこいいけどこいつは滅茶苦茶スタイリッシュっすね?」

「もしかして…これがスポーツモデルですか!?」

「お、その通り!こいつがレースで使われてるやつさ!まぁ、ただこっからパーツ少し外したり色々着けたりしないといけないんだけどね。俺は今日は現物確認ってわけ。あ、今からエンジン掛けるけど、ちょっとうるさかったらごめんね?」


 そういって戸部さん(兄)はおもむろにスイッチを回してセルスイッチをおした。すると


――キィィン…キュキュッ…ブゥオン!ブォン!


 今俺たちが乗っているものより圧倒的な存在感を目の前にあるマシン(モンスター)は主張し始めたのだ。


(なん…だこれ…)


 一瞬にして目の前に釘付けにされた。落ち着いたエンジンのアイドリングと自分の高まった鼓動が完全にシンクロされた。

 カラカラに乾いた体に一瞬で血が巡り寝ぼけた日常から一気に戦場へ叩き込まれたようで不意に、大きな武者震いがおきた。


――ブォン!ブォン!


 つい引き込まれたマシンから大きく息を吸い込んだような音。ばっとアクセルを持っている手、そしてその持ち主へと目線を飛ばすと


「ほう…」


 日本刀に見いられているような狂気をはらんだ顔でマシンを見つめる戸部さんの顔があった。


◇◆◇◆◇◆


「おっと、つい見とれてしまったわ。」


 戸部さん(兄)はパッと先ほどの様子を感じさせない、しかし上機嫌な様子で俺と黒井に声を掛けてきた。


「多分これからコースのなか入ると思うんだが先導さ、俺やって良いかな?」

「あー…春野さん?」

「うん、これからあそこのコースに入るのがスケジュールなんだ。ただ、あそこは一本道とはいえそれなりに長いし、コースを覚えてもらうために最初の一周は先導者つきで回るんだよ。まぁ戸部くんならコースも知ってるだろうし、三人が良いなら僕からも頼んどこうかな?」

「あぁ…自分は構わないですよ?黒井もそうだろ?」

「もちろん!この人のライディング?テクニックをバッチリ眺めたいぜ!」

「兄ちゃんやんの?ちゃんと先導できるの?」

「おいおい、妹よ俺を信用しろって…追い付けるかギリギリで行くにきまってんだろ!」

「チェンジで」

「いやいや、戸部くんはそこまであれな人じゃない…と…思う…よ?」

「春野さんまで…ちゃんとやりますって、とにかく!早速行ってみようか」


「「「おー!!!」」」


 というわけで俺たちは期待に胸を膨らませ、コースに向かった。

まずは簡単に乗ってみただけですね。

次回はコースに入ります!

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