セカンド プレイス その6
やっと少年雑誌的な展開かけますよ!
王道っすよ!!
いきなり「勝負しろ!」とか言われてつい、ヒーロみたいな口調で反応してしまいそうになった俺こと高久 大翔。
思ったことをそのまま口にしてしまうのはあまりにも小物臭いので、何事も無かったようなポーカーフェイス、という感じで対応するとする。
「そうですね…勝負をするとわざわざ言うことはタイムの見せ合いっこでもしてなあなあに終わらせる…訳ではないってことですね?」
お、この言い方、ちょっと挑発的かもしれないけどなかなかいいんじゃないか?
なんかねーちゃんや黒井姉妹、さらにはアカリちゃんまでも「男の子だ!」とかいって感心してる様だし。
どうやら向こうもこっちが乗っかって来るとは思っていなかったらしく、鎌瀬さんは一瞬驚いたみたいに半歩もないぐらい小さく、でも確実に身を引いた。
しかし少しの思案の後、彼は自信が今まで纏っていた日常のコメディな空気を払拭して覚悟を決めたようにこう言った。
「…そうだ。なぁなぁなんかじゃない。
てめぇの賭けるもん賭けたマジの勝負だ。」
――そう、空気が変わったのだ。
レイカねーちゃんですら分かるくらい、俺と鎌瀬さんとの間にいつも鎌瀬を見ている女性陣二人も焦りはじめて間に入ろうとしてるくらい、それくらい空気は変わった。
ダイキさんは瞳の奥に獣を飼ったままニヤリと笑い、初対面のマキナさんの笑顔でさえ種類の違うものに変わったのが解った。
鎌瀬さんは口調を少しおどけた様なものに変えて、やり返すように口を開いた。
「勝負って言ってもタイムが早い方の勝ち。それは変わらねぇ。
だけどお前がもし勝ったら、1つだけ何でも言うことを聞いてやるぜぇ?
俺が勝ったら…まぁ、なんもしねぇや。
なんて言ったって俺は大人だからよ。」
「なにいってるんですか?カマセさん?
やるなら同じ条件でしょう?
鎌瀬さんがそう言うのであれば勝負は無しですね。
だってそれだと俺も勝ってもなにもしませんから。」
「…ちっ、わかったよ。それでいくぞ。」
鎌瀬さんは不承不承ながら俺の提案には乗ってくれた。
話が終わり次第、すぐさまアカリちゃん達が駆けてきた。
「そ、ソラト君、大丈夫なの?」
「ああ、さっきののは何て言うか…お約束みたいなもんだよ…ですよね?ダイキさん?」
「ライバル認定ってやつだな!…まぁ、お前さんがこういことやるとは思ってなかったけどなwww」
そういって先ほどの雰囲気など無かったようにニカッと笑うダイキさん。
よく見るとヒーロと古賀音さんは俺に「やーるなぁ…」といった目線を送ってくるし。
春野さんや受付のさんも「まるで少年漫画だね」とか染々言い合ってる。
すいません、ここ、なろう小説です。
さて、ひと悶着な事もあったがひとまず俺達は問題なくエントリーすることができたのであった。
◇◆◇◆◇◆
さて、エントリーしてから実際始まるまで少し時間ができた。
辺りではもうすでに朝一に来ている…と言うか前日から泊まりで来ている人たちが既に走っていた。
今回のイベントであるタイムトライアルでは午前中を125ccのクラス、午後一から3時までを250cc、アンリミテッドのクラスの混走となる。
つまり、今走っている人たちは全員 グリズリーズ ということになる。
グリズリーズは初心者にも飛び入りで参加できるよう小トラックでレンタルの通常営業を、本コース内でタイム測定をしているらしい。
グリズリーズの測定は基本的にトライは一回のみで大きなトラブルなどでコースのクリアが完全に確保されてないシチュエーションで走らざるを得なかった人のみ再度のトライができるだそうだ。
一応、トライに納得出来なかった人向けに再度プラスで料金を払ってチャレンジすることも可能…
すげぇ集金システムだな!?…と言いたいところだが、これがかなりお得だったりする。
主催者が趣味全開でで開催しているイベントと公言しているだけあってこの日はなんと即席のオーロラビジョン(球場とかにおいてあるモニター)のようなものまで用意している。
ぶっちゃけ採算なんてものはない。
ここで集金した金額は全額、施設の賃料や機材のレンタルに消えるのだ。
流石にやり過ぎじゃね?と思わんでもないが
プロジェクターを使ったシステムが簡単で云々と言っていたので多分、喜々としてやっているんだろう。
…それにしてもグリズリーズは、人が多いな。
ちらりと横を見るだけでもピザを片手から絶対に放さない外国人の彼女を持ったお兄さんとか、モダンファミリーな家族連れ、顔を隠すような民族衣装で爆走する女性や熱心にヘルメットを着けた女性をガン見しているフルフェイスの男性…
ん?外国人の比率多くないか!?
さっきのフルフェイス人なんて名前書いてるところちらっとみたらガブリリオだよ!?
俺はこの、何気なく国際色のあるこの会場の現状に目を背けつつそろそろ走り出すであろうヒーロ達を探すことにした。
ヒーロ達は少しタイミングを外して走ることにしたらしい。
二人はトラック上で直ぐに見つけることができた。
俺はコースの外側にたってヒーロを手を上げて呼ぶと、ヒーロはすぐさまマシンを俺のそばに寄せていつも2ケツで使っているジェットヘルメットのバイザーを仰々しく開けた。
「んーーー…どうした!?」
「いや、ヒーロはいつ走り始めんのかなって」
「あー、マキナさんとも話したんだけどもう3,40分位は様子見ようってなったわ。やっぱり軽く見てても前詰まると思うし…」
ヒーロの言う通り一応とはいえ練習までしている俺達と今走っている人たちとの間には結構な差がある。
コースでは二分に一度、声を叩いて出走する形式なのだが、現在走っている人たちのタイムは大体6:30から7:00位の人が多い。
遅い人だとなんと、10分はかかってしまうものらしい。
一方、ヒーロはこのコースを大体平均にして4:20前後で走る。
そう、もうお分かりになられたと思うが、ヒーロは前の人に追い付いてしまうのだ。
せめて前がアカリちゃんなら憂いもなく走れるのだが、実は彼女は既に走り終えていたりする。
ヒーロが受付のあと、ルールの講習を受けている頃、既にスタート位置に立っていたアカリちゃんは俺達に見送られながら元気よく発進した。
オーロラビジョン越しに見るアカリちゃんは他の参加者と比べてもなかなかスムーズでうまく、電車に例えると「急行」位のペースでゴールまでトラブルなくたどり着いた。
「ソラト君、私すごくない!?」
そういって彼女はそのままアクセルを吹かしてこちらに一直線にやって来た。
…え!?減速しないの!?轢かれるんですけど!?
…因みに、この時のアカリちゃんのタイムは5:36程度とヒーロから1分落ち程度だが15人程度既に走っている中でまだ表彰台に足の先が掛かっている。
グリズリーズ と言うよりテディベアな戦いだと思う。
そんなことをふと考えているとどうやらヒーロが動き始めたようだ。
お手並み拝見と行きますか…
という訳で次はヒーロが走りますん。
ATVは国際的なスポーツです(震え声)




