無重力の恋
彼を見ていると、ふわぁと浮かんだような気分になる。
地球にいるのにもかかわらず、雰囲気は宇宙だ。
高校生は、一番輝いていると思う。
小学校の時、近くにあった高校に通っていた人たちを見て、いつも思っていたことだ。
いつかは、あの人たちみたいに輝けられるかな。
そう思っていた。
そして私がいざなってみると、そんなことはないという現実に嫌気がさす。
小学校も中学校も、もちろん高校も変わりはなかった。
でも、一つだけ違っていたことがある。
「おはよう」
教室で静かに本を読んでいると、急に話しかけてくれた人。
それこそが、彼だった。
ドキッとするのは、これが初めてだった。
月日は流れて文化祭の日。
実は私がいる高校には一つの言い伝えめいたものが伝わっている。
それは、文化祭の日に告白をすると、ずっとその人と結ばれるというものだ。
当然、私もそのことを知っているし、きっと、彼もそのことを知っている。
「ねぇ、文化祭さ……」
だから私は彼を誘おうとした。
「ごめん、その時は友達と一緒に行こって言われてるんだ」
「あ、そうなんだ。ううん、私こそごめんね」
そうなんだ、じゃあ、この気持ちは秘密にしておこう。
そう思っていたのに。
文化祭も終わりに近づき、店じまいしている出店も増えてきた。
部活に所属していない私にとっては、友達がいる店を巡り歩くぐらいしかできることはなく、それも一巡するとぼんやりと暇を持て余していた。
そして中庭にある木のそばへと来ていた。
最初の学年の人たちが、ここに卒業記念として植えたらしい。
「や」
そこで彼が手を振っていた。
「どうしたの、一人で」
彼にしては珍しい。
「暇になったらここに来るかなって。少し願掛けみたいなものさ」
それでぇと彼が私に近寄る。
「文化祭の日の都市伝説、知らないわけはないよな」
誘ったっていうことは、つまりそういうことだろ。
彼が言う。
私はうなづいた。
「やっぱしか。いやさ、願掛けって言っただろ」
「うん」
何が言いたいのかわからない。
「ここに君が来たら、言おうと思ったんだ」
好きだ。
見事に声がハモる。
それからどちらともなく笑い出した。
「あー、ここにいた」
木の反対側から声が聞こえる。
私と彼との友達集団だ。
「いこっか」
俺の好いてる人、と彼は手を出す。
「ええ、私の好いてる人」