表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

無重力の恋

作者: 尚文産商堂

彼を見ていると、ふわぁと浮かんだような気分になる。

地球にいるのにもかかわらず、雰囲気は宇宙だ。


高校生は、一番輝いていると思う。

小学校の時、近くにあった高校に通っていた人たちを見て、いつも思っていたことだ。

いつかは、あの人たちみたいに輝けられるかな。

そう思っていた。


そして私がいざなってみると、そんなことはないという現実に嫌気がさす。

小学校も中学校も、もちろん高校も変わりはなかった。

でも、一つだけ違っていたことがある。

「おはよう」

教室で静かに本を読んでいると、急に話しかけてくれた人。

それこそが、彼だった。

ドキッとするのは、これが初めてだった。


月日は流れて文化祭の日。

実は私がいる高校には一つの言い伝えめいたものが伝わっている。

それは、文化祭の日に告白をすると、ずっとその人と結ばれるというものだ。

当然、私もそのことを知っているし、きっと、彼もそのことを知っている。

「ねぇ、文化祭さ……」

だから私は彼を誘おうとした。

「ごめん、その時は友達と一緒に行こって言われてるんだ」

「あ、そうなんだ。ううん、私こそごめんね」

そうなんだ、じゃあ、この気持ちは秘密にしておこう。

そう思っていたのに。


文化祭も終わりに近づき、店じまいしている出店も増えてきた。

部活に所属していない私にとっては、友達がいる店を巡り歩くぐらいしかできることはなく、それも一巡するとぼんやりと暇を持て余していた。

そして中庭にある木のそばへと来ていた。

最初の学年の人たちが、ここに卒業記念として植えたらしい。

「や」

そこで彼が手を振っていた。

「どうしたの、一人で」

彼にしては珍しい。

「暇になったらここに来るかなって。少し願掛けみたいなものさ」

それでぇと彼が私に近寄る。

「文化祭の日の都市伝説、知らないわけはないよな」

誘ったっていうことは、つまりそういうことだろ。

彼が言う。

私はうなづいた。

「やっぱしか。いやさ、願掛けって言っただろ」

「うん」

何が言いたいのかわからない。

「ここに君が来たら、言おうと思ったんだ」

好きだ。

見事に声がハモる。

それからどちらともなく笑い出した。

「あー、ここにいた」

木の反対側から声が聞こえる。

私と彼との友達集団だ。

「いこっか」

俺の好いてる人、と彼は手を出す。

「ええ、私の好いてる人」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ