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ヒューマンドラマ

旅立ち

作者: 桜宮 沙綾

写真の中で屈託のない笑顔を見せるあの子

私に似た八重歯とえくぼ

今でも お母さん と明るい声で呼ぶ声が聞こえてきそうだ


もし生きていたら

何度そう思っただろうか


同い年の子ども達を見て

なぜ私たちの子がと 何度考えただろうか


今日でちょうど 20歳を迎えるはずだった

彼女の誕生日を迎えるたびに

それは 娘が永久に私たちの元を去った日なのだと

痛感させられた


でも もういい

心労がたたり 愛する夫も亡くなった


もう いいわよね あなた

あなたと一緒にいる あの子に逢いに行っても

もう 一人では寂しいの


電子音が徐々に弱くなるのを聞きながら

だんだんと瞼が重くなり

病室に飾った一枚の家族写真が遠のいていった


残された力で 写真を手に取り抱きしめる


まるで かつて笑い合っていた あの頃に戻ったように

私たちはみんな 笑顔だった



「やっと……これで、あなたとあの子に……」


それが 病魔に侵された私の意識に最後に残った希望の言葉だった


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― 新着の感想 ―
[一言] >もう いいわよね あなた >あなたと一緒にいる あの子に逢いに行っても >もう 一人では寂しいの ここで「主人公は自殺するのか?」と考えてしまい、ドキッとしましたが。 最後まで読んだら病…
[一言] WEBアマ大賞の感想から来ました。 私が読んでない作品もたくさんあるんですね! 最後の時の小説。 穏やかな最後、最後に残され、やっと逝けるという思い。 夫と子供への深い愛情が感じました。
[一言]  憧れの人と旅立ち、続けて読ませていただきました。  言葉の選び方が本当に素敵で、胸に来るものがありました。  ありがとうございました。  
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