風鈴の教え子と袁家の幽州占領
高順と李儒の真名を募集しています。
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華北四州を治める名門袁家の当主袁本初は宿敵にして学友の曹操との戦いのために後方を安全にしようと幽州を治める公孫賛を攻める準備をしていた。
そのことを知った公孫賛は学生時代の先生である盧植に救援の書状を送った。
「月殿、献帝様にお話ししたいことがあるのですが。」
「わかりました。すぐ、お会いになりますか?」
「できれば、すぐにでも。」
風鈴は白湯に事情を話して、救援に向かおうとしていた。
「公孫賛って誰だっけ?」
「確か、幽州の太守だったかと・・・。」
公孫賛は普通すぎて存在が薄い。親友である劉備でさえ、真名を間違える。
「昔の教え子ですから、先生としては助けてあげたいなって。」
「いいけど、桜杏と相談してから出陣するのだぞ。出陣する日はこちらにも伝えることを忘れるな。」
白湯は必死に威厳のありそうなしゃべり方で答えた。
「わかりました。皇甫嵩元帥と相談してから来ます。」
「そう言われても、動かせる部隊は無いわよ。」
「そこを何とか~。」
「無理だと思うわ。」
漢王朝の部隊は既に国境線や洛陽の守備、その他重要な場所に配備されており、動かせる部隊はなかった。
「だったら~、市民軍の中から有志を募ればいいかもしれないわね。」
「市民軍ですか~。」
洛陽の市民軍は月の善政などにより裕福な住人が多く、60万もの市民軍がいる。市民軍の中には軍隊の入隊試験に落ちた者達もいるため、戦意が高い者を募ればかなりの数になるのではと桜杏は考えた。
「とりあえず、市民軍に募集をかけてみますね~。」
風鈴は市民軍に呼びかけた結果、5万ほどの志願者がいたため、風鈴の私兵を含めた7万5千でエルスランド帝国領を通って幽州に向かうことにした。
エルスランド帝国とは軍事同盟の際に軍事通行権も獲得しているため、大使館への事前連絡があれば通行が可能になる。
白湯にも許可をもらい、銃を装備した風鈴率いる公孫賛救援軍は幽州に向かった。
時を同じくしてエルスランド帝国も袁紹との国境に展開中の部隊を増強するなど、警戒を強くした。
エルスランド帝国領を通ることで予想より時間を短縮して幽州に到着することができた。
「お久しぶりです、盧植先生。」
「風鈴はもう先生じゃないから、真名で呼んでも構わないよ、白蓮ちゃん。」
幽州城にて風鈴と白蓮(公孫賛)は久しぶりの再会を果たした。
「袁紹軍はまだ来ていないみたいね。」
「袁紹はまだ、準備中みたいですからね。」
「だったら、今のうちに防備を固めましょうか。」
「そうですね。」
そうした準備も虚しく袁紹軍は国境沿いの砦を迅速に突破して強行軍で幽州城を包囲していた。
公孫賛軍は反撃しようにも近隣の兵力は既に袁紹軍に降伏しており、募兵したとしても精々1万。城の守備部隊や敗走してきた兵士・盧植の連れてきたを合わせると8万5千。対する袁紹軍は20万と言う大兵力。
「盧植先生、何かいい案は無いですか?」
「そうですね~。降伏するしかないんじゃないですか。」
「それじゃあ、困りますよ!!!!」
「だったら、抵抗しますか。勝ち目はあるかもしれないですよ。」
「抵抗します。絶対に幽州を明け渡したりはしない!!」
「その意気ですよ!!」
「ただし、私の指示通りにしてください。」
風鈴は公孫賛に作戦を伝えた。
風鈴の指示通り、幽州城の城壁に配置されている弓兵をすべて、風鈴の連れてきた私兵及び市民軍に交代させた。
ざわざわ・・・・・・
袁紹軍は幽州城に挙げられた旗を見てざわついていた。
「何事ですの!!!」
「幽州城に漢の武将、盧植陸軍大将の旗印が掲げられています。」
「なぜ、漢の軍勢がこのようなところにいるのですか!!!」
「おそらく、公孫賛への援軍かと。」
「真直さんをお呼びなさい。作戦を考え直しますわよ。」
「はっ。」
真直(田豊)は袁紹軍の筆頭軍師で日夜袁家のために頑張っている軍師だ。
「お呼びでしょうか、麗羽様。」
「真直さん、話は聞いていると思います。」
「わかっております。盧植陸軍大将のことですね。」
「何かいい案はありませんの?」
「そうですね・・・・・・。」
真直が考えていると・・・・
パーーーーーン
幽州城から突然の銃声が響き渡りました。
「何の音ですの!?」
「わかりませんが、とにかく外に出ればわかると思いますわ。」
「そ・そうですわね!!」
2人は天幕から出ると城の方を見た。
「撃てーー!!!」
市民軍士官の号令で市民軍兵士は袁紹軍の兵士に狙いを定め、95式戦列銃の引き金を引く。
95式戦列銃はアメリカ軍のスプリングフィールドM1795をモデルとしており、エルスランド帝国の2代目皇帝の時には主力小銃として陸軍で使用された。
95式戦列銃やその他の戦列銃はモデルとなった銃よりも射程が長くスプリングフィールドM1795は本来有効射程距離が50~75ヤード(約46~69メートル)だが、95式戦列銃は有効射程が600メートルでモデルとなった銃より射程距離がかなり長いため幽州城を包囲している袁紹軍にも城壁から一方的に攻撃できる。
「軍を一旦後退させましょう。このままでは、部隊に一方的な被害が及びます。それと、明日にでも幽州城への総攻撃を打診します。このままのにらみ合い続ければ曹操が隙を突いてくる可能性もあります。」
「そうですわね。斗詩と猪々子にもこのことを伝えておきなさい。」
「わかりました、麗羽様。」
袁家の2枚看板の顔良(斗詩)と文醜(猪々子)も明日の総攻撃について兵士から連絡を受けた。
翌日、袁紹軍は攻城兵器を使用した総攻撃を開始した。
「袁紹軍は攻城兵器を使用した本格的な攻撃を開始しました。」
「やっぱりですか。ここが正念場です、必ず耐えきるのです。」
「はっ。」
城壁には昨日と同じように私兵及び市民軍が袁紹軍に向け銃撃を開始した。
「兵器部隊は早く城への攻撃を始めなさい。」
「はっ!!」
袁紹軍の投石器部隊が城壁に攻撃を開始する。
「敵の投石器から攻撃が行われ始めました!!!」
「こっちに飛んでくるぞ!!!」
「逃げるんだ!!!!」
投石器の攻撃は城壁で銃撃をおこなっている市民軍などにも命中し被害が及ぶ。
「負傷者は後方に下げろ。公孫賛軍弓兵部隊も我々の援護を!!」
「りょ・了解!!」
負傷した兵士に変わって公孫賛軍の弓兵が代わりを務めるが、まだまだ、弓の射程範囲に袁紹軍は来ていない。
そうしていると、
「城壁が崩れるぞ!!すぐに逃げるんだ!!!!」
城壁の異変を感じた指揮官が兵士たちに城壁から逃げるように促す。
「急げ、早くしろ!!!」
兵士たちは大慌てで城壁から逃げ出す。
ちょうど、すべての兵士が無事に城壁から逃げるのを待つかのように城壁の一部が投石器の攻撃で崩れた。
「兵士たちを城壁の崩れたところから突入させなさい!!!」
「はっ。」
真直の命令により、兵士たちが城壁の崩れたところから続々と城壁内部に入ってくる。
しかし、入る場所がバラバラだったため兵士たちは集結しようとしていたところを指揮官は見逃さなかった。
「敵兵が再集結している。この機を流すな、撃てーー!!!」
指揮官の号令で公孫賛軍・市民軍問わず、袁紹軍兵士に攻撃を開始した。
それに慌てた袁紹軍の指揮官は部隊を集結させずに突撃させた。
「下がれ、下がれ!!!」
兵士たちは後退していく。
それぞれの兵士が建物に籠って、袁紹軍とにらみ合いが続いていたが、
「盧植先生、どうしたらいいんですか!?」
白蓮は慌てる。
「勝ち目はないですし、降伏するしか。」
「やはり、そうなりますか・・・・・。盧植先生はどうされるのですか?」
「私は兵士たちと逃げますよ。」
「え!!逃げれるんですか!?」
「もちろんですよ。そうでないとここまで来れるはずないじゃないですか~。」
白蓮はとても驚いていた。
袁紹軍とは城壁内部でにらみ合いが続いたまま、夜になった。
白蓮は兵士たちにここで、袁紹軍に降伏するか、自分についてくるか聞いて回った。城の住人達にも事情を話したが誰も怒らなかった。それどころか、白蓮を応援していた。
翌朝、幽州城には白旗が上がった。
一部の兵士は袁紹軍に降伏したが、ほとんどの兵士が白蓮について行くことにした。
「公孫賛がいない!!!!急いで追いかけろ!!!」
降伏した兵士たちから話を聞いた真直は慌てて追撃部隊を出した。
「急げ、追撃部隊が来るはずだ!!」
風鈴たちは袁紹軍からの追っ手を振り切ってエルスランド帝国領内に逃げようとしていた。幸いにも幽州には国境警備部隊の一大詰所があった。
そこには、戦車が数百両展開しており、袁紹軍でも追っては来れない。
「もうすぐだ。急げ、急げ!!!!」
白蓮は激励する。その後ろには袁紹軍の騎兵部隊が見えた。
袁紹軍に追いつかれそうになったが、何とかエルスランド帝国領内に入れた。
袁紹軍の兵士は悔しそうに白蓮達を見つめていた。
その後、白蓮は風鈴の薦めをあって第1近衛軍団で陸軍少佐として騎兵部隊の指揮をすることになった。
今回の戦いで市民軍兵士5名が死亡した際に95式戦列銃を放棄していたため、袁紹軍が95式戦列銃を5丁鹵獲してしまった。