お題『君の「大丈夫」が、大嫌い』
エミールへのお題は『君の「大丈夫」が、大嫌い』です。
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「掛かって来いよぉ…俺ぁまだ、立ってるぜぇ…!」
そう言って、槍を構えて僕達の前に立つ、アキバの赤いヒーロー。
コハギさんが張った障壁は既に掻き消えてしまっており、HPゲージは赤色。ボロボロの状態だ。
「コハギさん、伊達さんに《ヒール》っ」
「は、はいぃ…!」
神祇官の少女は、伊達さんの姿に、涙目になりながら詠唱し始める。障壁特化の彼女の回復力は《エリクシール》で底上げしてあるけれど、まだ、エネミーの数が半分にしか減っていない。……イコール伊達さんへダメージが嵩む。《ヒール》の詠唱が、間に合うかどうかが、鍵だ。
「キリーさん!」
「ああ、右側のエネミーは全部片付けるよ。《ブラッディピアッシング》!」
《ブレードオペラ》を併用した、盗剣士の容赦無い範囲攻撃。右側にいた敵は、これで全て落ちるだろう。キリーさんも多少ダメージを負ってはいるが、彼女の障壁はまだ生きている。
視界の端でキリーさんの攻撃を確認し、左手の3体のモブエネミーへ視線を移す。先程の魔法がもう切れかかる頃だ、足止めを継続しなければ。
「《ブラックアウト》!…まだ動かないで貰うよ…《ナイトメアスフィア》!」
一体を屠り、残りは纏めて硬直させる。…威力は低いが、あいつらには遠距離攻撃は無い。これで最低限の足止めはできる。後は伊達さんの回復と、障壁を掛け直して…と、正面に視線を戻したところで
「っ…伊達さん!」
「お兄ちゃんっ!」
恐れていたボスの攻撃が、襲い来る。
コハギさんの《ヒール》の詠唱が間に合っていない。当たったら…今の残りHPでは、伊達さんがやられかねない。
「へっ、来いよ!まだ、後ろにゃ通さないぜ…っ!」
…なら迷う暇はない。
「…っ《ヴォイドスペル》!」
遅延詠唱から解放した魔法が発動し、弾けた白い光がボスエネミーの攻撃を消し去る。……同時に、コハギさんの《ヒール》の詠唱が終わり、伊達さんのHPが緑色…半分を超えるラインまで回復したのをウィンドウで確認し、ほっと息を吐く。
「エミル!ヘイトを上げすぎだ!!」
同時に、キリーさんから怒声が飛んで来て、慌てて視線をボスエネミーの方へ戻せば既に目前まで攻撃が迫っていた。
「っ…!?…はや…ッ」
衝撃に構え、目を瞑ると、ギィンという不快な音。
伊達さんが、僕への攻撃に《ロングレンジカバー》で割り込み、弾いた音だった。《ヒール》とほぼ同時に発動させていたらしい《鈴音の障壁》で張られた障壁が、その衝撃で掻き消えた。
「コハギ、回復ありがとよ!」
「は、はいっ!」
「エミール、中々無茶してくれるじゃねーか…でもサンキューな、お陰でかーなーり!生き返ったぜぇ」
「いくら紙防御って言っても一撃じゃ流石に倒れないから、カバーしなくて大丈夫だったのに」
「オイコラ。よく言うぜ、それでこの前やられたの、忘れたとは言わせねぇぞ!」
「なっ、あれは例外でしょう!?」
「例外も何もあるか!お前の自分に対する『大丈夫』の評価は大嫌いだぜ…信用ならん!」
「心外だよ、全くもう……。庇ってくれてありがと、伊達さん」
「素直じゃねえなぁ」
「僕が素直だったらそれはそれで何かありそうとか思わないの?」
「……聞かなかったことにしといてくれ」
「ちょっと、いつまでお喋りしてるつもり?来るよ!」
「おっとすまねぇ!」
「…コハギさん、伊達さんにもう一度障壁。そのあとに《ヒール》で立て直して。キリーさんはボスを叩いてください。モブはあと2体ですし、こちらでなんとかします」
「…分かった。頼むよ」
敵数も減り、戦況は完全に此方に傾く。
そうしてキリーさんがボスにトドメを刺し、何とか無事にエネミーを全滅させましたとさ。




