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13. 帝都への到着

前話のあらすじ


辺境伯領軍への対応を検討

帝都が近付くなか、島津結衣からは改めて合流の誘いが

目的地まではもうすぐ……

   13



 翌日、おれたちはついに帝都に到着した。


 転移場所は、帝都にある聖堂教会の本拠地、大聖堂の一角だ。

 さすがに少し緊張しつつ、いつまでも慣れない転移の感覚をやり過ごして――


「――お待ちしておりました」


 がらんとした大部屋で待ち構えていたのは、わずかな伴を連れたふたりの男だった。


 一方は神官服に身を包んだ細身の老人。

 もう一方は、壮年の大柄な騎士だ。


 どちらも話しかけるのを気後れしてしまいそうなくらいに、雰囲気のある人物だった。


 こちらがなにかリアクションを取る前に、彼らは視線を巡らせると、眷属たちに囲まれているおれに歩み寄ってきた。


「失礼ですが、真島孝弘様と、加藤真菜様でしょうか」


 老神官が尋ねてくる。

 しわがれているものの、聞き取りやすく深みのある声だった。


「はい。そうです」


 応えると、ふたりは会釈をした。


「お初にお目にかかります。わたしは、大神官のひとり、ゲルト=キューゲラーと申します」

「聖堂騎士団で団長を務めております、ハリスン=アディントンです」


 ……これは驚いた。


 いきなり聖堂教会、聖堂騎士団のトップが出迎えてくれるとは。


 道中の手配の件でわかってはいたことではあるが、今回の一件について、それだけ本気だということだろう。


 外から来た人間に対応する場で、身辺を守る護衛の数があまりにも少ないことも、こちらに威圧的な印象を与えないようにという配慮のひとつと察せられた。

 加えて、モンスターである眷属たちを前にして、わずかな護衛しか連れないことは、こちらを信頼しているということだ。


 そう考えると、飯野をはじめ護衛で固めているこちらの態度は、アンフェアなものとさえ言えるかもしれなかった。


 もっとも、そのあたりの事情はトラヴィスの一件があってのことと、理解はしてくれているのだろう。

 ふたりに気にした様子はなかった。


「遠いところを、わざわざご足労いただきありがとうございました」

「いえ。こちらこそ、道中はお世話になりました」

「ご不便を感じることがなかったようでしたらさいわいです。現状を打開するために、ぜひとも協力していきたいと考えております。どうかよろしくお願いいたします」


 そうして挨拶を交わすと、続けてふたりは島津さんたちにも労いの声をかけた。

 そのやりとりを見る限り、彼らの関係は良好なもののようだ。


 そのあと、ふたりはアケルの文官たちを引き連れたフィリップさんとも挨拶を交わし、竜淵の里のドラゴンたちも含めて簡単に紹介を受けた。


 ひと通り初対面のやりとりを終えると、彼らは改めてこちらに向き直った。


「お疲れでなければ、荷物を置かれたあとで、会談の段取りのほうをこちらのハリスンからご説明したいと考えております。いかがでしょうか」

「おれたちは大丈夫です。お願いできますか」

「承知しました。それでは、ハリスン。頼んだぞ」


 ここで、ゲルトさんは去っていった。


 どうやら非常に多忙なところを、わざわざ時間を割いて挨拶だけはしてくれたということらしかった。


 とはいえ、さすがに組織のトップふたりが両方いなくては回らないのだろう。

 正直、ハリスンさんひとりだけでも、十分過ぎる対応だった。


「ここからはわたしがご案内いたします」

「よろしくお願いします」


 まずは滞在する部屋に案内された。


「それじゃ、真島。また明日だ」


 移動のために魔力を使って疲労した島津さんとは、部屋に着いた時点で別行動になった。


 彼女は部屋で少し休んだあとで、別の場所に滞在している探索隊のところに戻るのだという。


 探索隊のリーダーには、今回の件でいろいろと動いてもらっているので、落ち着いた明日にでも挨拶に行く予定だった。


 島津さんとは、明日、また会うことになるだろう。


 飯野は護衛として動いてくれる段取りだったので、探索隊に戻ることなくついてきてくれた。

 同じく護衛のゴードンさんのことは信頼できそうだと判断はしているが、やはり『韋駄天』の二つ名持ちである飯野の存在はありがたい。


 ……これで、いちいち目が合うたびに睨んでくるのさえなければ文句はないのだが。


 まあ、多くは望むまい。


 御手洗さんもついてきたが、これは加藤さんがいるからだろう。

 なにかあったら友人である加藤さんを守ってはくれるだろうから、こちらも心強くはあった。


 おれたちはハリスンさんのうしろをついていった。

 その途中、廊下の窓から見えた景色に、ロビビアが感嘆の声をあげた。


「……すっげぇ」


 ぽかんとしている。


 その視線の先には、遥か天までそびえ立つ尖塔があった。


 これは事前に聞いていたことだが、帝都の教会の本拠地は、中央にあるドームに六つの巨大な尖塔が連結した非常に広大なものだ。


 天高くそびえる尖塔は高く、その先端は四十階建てのビルくらいはあるだろうか。

 おれたちがいるのは、そのひとつの地上近くの階で、他の尖塔を見上げることができた。


 長い歴史を感じさせるくすんだ白亜の壁面には、細部に至るまで彫刻が為されている。

 彫刻の生み出す複雑な陰影が、重々しくも荘厳な外観を際立たせていた。


 なんでもこの建物は、過去と現在と未来に至るまでの、勇者の威光を称えるためにあるのだという。


 また、その周りに広がる帝都の街並みもまた、これまで見たこともないほどに栄えたものだった。


 この世界の都市は発展と拡張に伴い、外周を囲む防壁を増設していくのが常だ。

 最初の勇者が降臨した土地であり、最長の歴史を誇るという帝都は、七重の頑丈な防壁を備えている。


 その広大な面積に、所狭しと家が軒を連ねているさまは、息を呑むほどに壮大だった。

 さすがは世界最大の都市と言うべきだろう。


 視線を巡らせれば、高い防壁の外に草原地帯が広がっているのが見えた。

 近場には、モンスターの巣窟となりそうな森林の類は見当たらない。


 遥か遠くに見える山々の麓にだけ、黒い影のような森があった。


 帝都の北部にはいまだに攻略できずにいる昏き森が存在すると聞くので、恐らくはそれだろう。

 以前にも見たトリップ・ドリルの群れが、南の樹海から北へと大移動する先にある森だ。


 もっとも、これだけ離れていれば関係はない。


 防備の面でも、聖堂騎士団だけでなく、王都を防衛する帝国皇室直属の軍隊が駐留している。

 これほど安全な土地は、この世界で他にないだろう。


「へえ。こっちの世界では初めて、あんな大きな建物を見るね」

「本当に。どれだけの技術と時間を費やせば、あれだけのものが作れるのでしょうか」

「妾にはいまひとつ宗教とやらの価値がわからぬが、ああも壮大な規模だとさすがに感心するな」

「ええ。素晴らしいです。まさか名高き大聖堂をこの目にする日が来るとは思いませんでした」


 みんな口々に感想を口にする。


 そのなか、おれはかすかに目を細めた。


「……ん?」


 大聖堂の中央にあるドーム部分を眺めていたら、魔力を認識する感覚に引っ掛かるものがあったのだ。


「どうしたの、ご主人様」


 リリィが気付いて見上げてくる。


「いや。魔力の気配がすごいなと思って」

「ああ、そういうこと。確かにね」


 相槌を打つと、リリィはあたりを見回した。


「ちょっと驚いちゃった。さすがは聖堂教会だね。そこかしこに魔法道具があるんだもの」


 宗教的な儀式においても、魔法道具は用いられる。

 たとえば、チリア砦の地下霊廟で見た、祭壇の魔法道具などが一例だろう。


 これだけ大きな宗教施設なのだから、その手の魔法道具が無数に蓄えられているのは当然とも言える。

 リリィの言う通り、さっきから廊下を歩いているだけで、あちこちから魔力を感じていた。


 あの中央のドームは各種の儀式を行う場所なのだろうし、特にたくさんの魔法道具が備えられているのだろう。


 権威と戦力だけではなく、財の力まで備えているとは、さすがにこの世界で最大の力を持つ聖堂教会というべきだった。


 そうして目を楽しませているうちに、目的の部屋に到着した。


「こちらになります」


 案内されて、おれたちは部屋に足を踏み入れた。


   ***


 今後の予定について、ハリスンさんは丁寧に説明をしてくれた。


 もっとも、あらかじめだいたいのことは、島津さんたちが持ってきてくれた書簡で説明されていた。


 たとえば、会談のために必要な場所や道具は、すべて聖堂教会が揃えてくれている。

 やりとりと条件については、事前に決めた通りだ。

 儀礼的な手順についても説明されていた。


 おれたちはこちらの世界のこうした物事に関してはまったくの無知だ。

 なので、これらの事項については、フィリップさんをはじめ詳しい人たちに、問題はないかすでに判断を仰いでいた。


 それらを改めて、この場で確認した。


 事前に決められた通りに進行するため、実際の会談の場では、おれ自身が能動的にやらなければならないことはあまりない。

 一応、失敗はないようにこうした場での立ち振る舞いについて多少なり勉強はしたが、あくまでこんなのは付け焼刃だ。


 アケルと辺境伯領との間での交渉事はあるが、素人が口を出せるようなものではない。


 もっとも、だからといって、気を抜くことはできない。

 失敗のないようにしなければならなかった。


 和平会談の日程は、三日後と伝えられた。

 これはもともとの予定よりも一日遅く、辺境伯の到着が遅れているための措置ということだった。


 また、辺境伯が連れている軍隊についてだが、聖堂教会のほうでも把握していた。


 その意図するところについても、およそこちらと同じ推測に辿り着いており、すでに手は打ってあるとのことだった。


 ひとつひとつ確認をしながらだったので、説明にはそれなりの時間を要した。

 気を抜かずに、おれは話に耳を傾けた。


 そうして、一通りの説明が終わった。


「なにかご質問になりたいことはございませんか」


 説明を終えると、ハリスンさんが尋ねてきた。


 おれはみんなと視線を交わした。

 丁寧で不足のない説明だった。


 特に疑問はない。


 そう答えようとしたところで、おれはふと考えを変えた。


 これは滅多にない、聖堂騎士団のトップとの会話だ。

 このまま終わらせてしまうのは惜しい。


 訊けることは訊いておいたほうがいいだろう。


「それでは一点だけ」

「なんでしょうか」

「あなた方は、モンスターを率いるおれの存在を、どう考えているんですか」


 尋ねると、ハリスンさんの謹厳な顔がぴくりと動いた。


「……真島様は我らをお疑いなのですか」


 鋭い視線が向けられた。

 チート持ちと対峙したときとはまた別種の重みがあった。


 これが世界の安定を担う組織を率いる人間の威厳というものなのだろう。


 とはいえ、おれ自身にも小なりとはいえ集団を率いる責任がある。

 腹を据えて視線を受けとめた。


「いいえ。そういうことではありません。ここに来たのは、危険はないだろうと判断したからですので」


 ここでおれが死んでしまえば、聖堂教会の失うものは多い。


 あともう少しで纏まる和平会談はご破算になり、不安定な情勢を是正する大きな機会を失う。


 大々的に宣言した会談が失敗すれば威信には大きな傷が付くし、アケルは態度を硬化させるだろう。

 そうなれば、同盟諸国も同調する危険性があり、帝国南部の安定を大きく損ないかねない。


 探索隊との信頼関係にだってひびが入る。


 だから、聖堂教会側は全力でこの会談の間、おれたちを守ってくれるだろう。

 その点を疑いはしない。


 ただ、それはあくまで『世界を守る』という共通の目的を持てばこその協力関係だった。


「現状の不安定な情勢をどうにかしたいという点に関して、教会とは同じ考えだと思っています。ですが、その目的がなくなってしまえば、その限りではないでしょう」


 冷静さを心掛けつつおれが言うと、ハリスンさんの目に理解の色が灯った。


「なるほど。協力関係にあるうちに、我々の考えを知っておきたいというわけですか」

「そういうことです」


 おれの目的は、あくまで眷属たちと穏やかに暮らせる居場所を作ることだ。


 そして、それはアケルという地盤を手に入れたことで、半ば達成されている。


 恐らくは今回の騒動が、最大にして最後の障害だろう。


 というのも、あえて他国の、それも遠く離れた辺境の国に『モンスター使いがいるから』なんて理由で侵攻しようと考えるような人間はそういない。

 そもそも、そんな余裕は普通ない。


 つまり、辺境伯と彼に賛成する勢力を抑えることで、おれの目的は達成される。

 長かった旅も、これで終わり。苦労のすべてが報われるのだ。


 もちろん、それでも小さな問題はたくさん出てくるだろう。


 だが、それは日常の範疇を超えることはない。

 みんなで力を合せて解決していけばいい程度のものだ。


 だから、本当にあと少しなのだ。


 ただし、聖堂教会が絡んでくれば、話は別だ。


 この世界の最大勢力である彼らに敵視されてしまえば、情勢なんて簡単に引っ繰り返ってしまう。


 だから、組織の意思決定を行う立場の人間に、率直な意見を聞いておきたかった。


 さすがに辺境伯ほど極端になるとどうしようもないが、そうでなければ、なんとでもやりようもある。


 たとえば、眷属であるリリィたちがモンスターであることを危険視しているなら、この場で話をしてもらって、彼女たちにきちんと理性があることを確認してもらうべきだ。

 モンスターという存在そのものに嫌悪感があり、見るのも嫌だというのなら、今後はなるべく関わりにならないように配慮するつもりだった。


 なんにしても、考えを知らなければ対応のしようがない。

 直接話を聞けるこの機会は貴重だった。


「本音のところを聞かせてもらえないでしょうか。場合によっては、こちらからなにかできることもあると思います。おれたちは、聖堂教会と敵対するつもりはないんです」

「お話の意図は理解しました。質問にお答えいたしましょう」


 ハリスンさんは応じて、はっきりと言った。


「わたしは真島様に対して、辺境伯のような悪感情は抱いておりません」

「悪だとは思っていないということですか」

「そうです」


 つまり、おれの懸念は不必要なものだということだ。


 さらに、話は続いた。


「当然のことですが、トラヴィスのように我欲に走って勝手をするつもりもありません。わたしの望みは、ただ己に課せられた使命をまっとうすることです」

「使命、ですか?」

「この世の安定を守ることです。それこそが我らの義務であり、課せられた使命でありますから」


 その言葉には、確かな誇りと自負が感じられた。


「わたしは騎士としての生きた歳月のすべてを、この脆く壊れやすい世界の安寧を守るために費やしてきました。これからもそうあり続けるでしょう」

「……」


 これは、知っている。


 立場こそ大きく違っているけれど、きっと、この男はシランの同類だ。

 この世界の安寧を守るために、己のすべてを捧げた高潔な騎士なのだ。


 なるほど。シランやゴードンさんから聞いていた評判通りだ。


 おれたちが世界に弓引くようなことがなければ、彼が敵になることは絶対にあるまい。

 そして、おれにはそんなつもりは毛頭なかった。


「……よくわかりました」


 安堵の吐息をついて、おれは頭を下げた。


「答えていただいて、ありがとうございます」

「いえ」


 気を悪くした様子もなく、ハリスンさんは短く返した。


「他にもご質問はございますでしょうか。真島様以外の方も、疑問がございましたらお答えいたしますが」


 おれたちのひとりひとりに視線を合わせる。

 ひとつ頷いた。


「疑問点がないようでしたら、これで説明を終わらせていただきます。先も申し上げました通り、会談は三日後となります。慣れない土地でお疲れになることもあるでしょう。些事は我々にお任せいただいて、ゆっくりとお過ごしください」


   ***


 長い説明が終わると、おれたちは用意された部屋に戻った。


 ハリスンさんにも勧められた通り、休んだほうがいいだろうという判断だった。

 肝心の当日に体調を崩してしまっては世話はないのだから。


 運ばれてきた夕食を摂ったあと、おれたちはゆっくりしていた。


「これ、美味しいねー」


 湯気を立てるコップを両手で包むように持ち、リリィがつぶやく。


 さすがは聖堂教会の本部というべきか、食後にとお茶の葉を渡されていたのだが、とても美味しいものだった。


「明日は探索隊に顔を出すんだよね?」


 リリィが尋ねてきたので、おれは頷いた。


「ああ。向こうも都合があるみたいだから、行くのは午後になってからだけどな」


 帝都に滞在している探索隊には、貴族や官僚、あるいは神官たちからの誘いがひっきりなしだという話だった。


 特に、おれが挨拶に行こうと思っているリーダーの中嶋小次郎は、その手の誘いが多いらしい。


 探索隊メンバーには、そうした催しに積極的な者も多いのだが、彼はあまり好んでいないのだと飯野からは聞いている。

 立場上断り続けることもできないことを愚痴っているそうで、それは少し共感できるエピソードだった。


 おれ自身は微妙な立場のお陰でそうした煩わしい事柄に悩まされずに済んでいるが、その点だけは悪いことではないかもしれない。


「なあ、孝弘」


 そこで、ロビビアが口を開いた。


 彼女は甘い蜂蜜の入ったミルクを飲んでいたが、その表情に甘さはなかった。


「おれたちも行くんだよな」

「ああ。万が一のときのことを考えたら、あまり離れないほうがいいからな。竜淵の里のみんなにも付いてきてもらうつもりだ」


 帝都の守りは堅い。


 また、直接おれの護衛にあたっている聖堂騎士団第二部隊の騎士たちも、真面目に任務に勤しんでくれている。


 安全性は保たれている。


 だが、気は抜かないほうがいいだろう。

 慎重であるに越したことはないのだから。


「探索隊か。妾はちと気が向かんがの」


 ガーベラが嫌そうな声を出した。


「転移者はじろじろ見てくるから、あまり気分はよくないのだ」


 ぼやくように言う。

 以前、チリア砦からセラッタに向かう旅の途中、立ち寄った開拓村であった出来事について思い出しているのだろう。


 すると、ふんと鼻を鳴らす音がした。


「女の子にそんな失礼なことするやつがいたら、わたしが言ってやるわよ」


 言って、飯野は自分のぶんのお茶で喉を潤した。


 当たり前のように彼女がこの場にいるのはなぜかといえば、護衛を務めるべく夕食をともにしていたためだった。


 今夜は、すぐ隣の部屋に泊まることにもなっている。


 ちなみに、眷属たちと加藤さんはおれと同じ大部屋。

 竜淵の里のドラゴンたちや、フィリップさんたちアケル組も、また別々に部屋を準備してもらっている。


 澄まし顔の飯野を、ガーベラがまじまじと見詰めた。


「おぬし、ひょっとして良いやつだったのか」

「……あなたも失礼よね」

「出会い頭に足を半分切り落とされておるからの」

「それはごめんなさいだけど」

「気にするな。妾も主殿との出会いの際にはやらかしておるし。他人のことはとやかく言えん」

「わたしもご主人様の片手齧ってるし、あやめは群れがご主人様を爆死させかけて、アサリナは養分吸って干乾びさせかけたよね」

「……真島、よく生きてたわね」


 そんな会話をしていると、ノックがあった。


 来客だ。


 特に約束はしていない。

 フィリップさんや竜淵の里のドラゴンの誰かが、様子でも見にきたのだろうか。


「わたしが出るね」


 すぐにリリィが言って、席を立った。


 おれは視線でリリィの背を追った。


「はいはーい。誰かな」


 言いながら、リリィが扉を開ける。


 開いた扉の隙間から、警護をしてくれている聖堂騎士のほかに――もうひとり、少年の姿が見えた。


 その瞬間、おれは息をとめていた。


「あれ?」


 とぼけたような声が耳に届いた。


「ここは孝弘の部屋だって聞いたんだけど、なんで水島さんがいんの?」


 いつかどこかで聞いたような言葉だった。


 声には、笑いをこらえるような響きがあった。


「なんちゃって」


 そう言って、浮かべる笑みは悪戯っぽいものだ。

 眼鏡の下の目が、こちらに向けられる。


「久しぶり、孝弘」


 おれは思わず腰を浮かした。


「……幹彦?」


 セラッタ近郊の町で別れた友人、鐘木幹彦がそこにいた。


◆ご報告①


書籍版『モンスターのご主人様』の11巻が、1月30日に発売になります。

一ヶ月後ですね。通販等では予約が始まっていますので、よろしくお願いします!



報告②

コミカライズ版『モンスターのご主人様』の第3話が更新されました。


今回は、加藤さんの登場回と、リリィとの初めての夜ですね。

個人的には、自己紹介時と、最後のページの加藤さんがいい感じだと思うので、ご確認いただければと思います!


◆もう一回、更新します!

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