01. とある洞窟での出来事
初投稿です。
拙作をどうぞよろしくお願い致します。
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人間なんてのは屑ばっかりだ。
おれは深い洞窟の奥で身を縮め、絶え間ない苦痛に苛まれながらも、呪詛の言葉を吐き続けていた。
そうすることしか出来なかった。
疲れ切って、まともに休息を取っていない体は、上手く動かない。
胃酸が胃を焼くくらいにお腹がすいていて、眩暈さえする。
呼吸が熱っぽくて不安定だ。
病気にでもなっているのだとしたら、ますますおれには先がない。
おれは自分が絶体絶命の危機にあることを認めざるを得なかった。
畜生。畜生。
何処とも知れないこんな場所で、寂しく一人で死んでいくなんて。
そんな風な目に遭わなければいけない、どんな罪をおれが犯したというのだろうか。
いいや、違う。
おれは何もしちゃいない。
やったのは、連中の方だ。おれはあくまで被害者に過ぎない。
だから、おれは呪詛を口にする。
そうすることで、掻き消えそうになる意識を保とうとする。
多分、この憎しみが消える時こそが、おれという存在がなくなってしまうその時なのだろうと思うから。
だが、そんなおれの努力をあざ笑うかのように、洞窟の入り口の方から何やら物音が聞こえてきたのだ。
何かを引き摺るような音。
魂を削り取るような、不吉な擦過音だ。
……来るな。来るな来るな来るなっ!
おれは心の中で叫ぶが、音はどんどんと近づいてくる。
もう駄目だ。逃げられない。
絶望的な気持ちで、うずくまったままおれは、視線を物音のする方へと向けた。
そこに、半液体状の体組織を持つ、二メートル超の化け物がいた。
「……ぁあ」
モンスター。
おれたちがそう呼んでいる、人間にとっての天敵だった。
おれたちが便宜上スライムと呼んでいるその化け物は、目玉の一つもないくせに、おれのことを見付けたらしい。見た目からは思いもよらない俊敏さで近づいてきた。
逃げようもない。そもそも、おれには此処から立ち上がる体力すら残っていないのだ。
「畜生め」
投げ出されたおれの手がまず、強烈な消化液によって喰われていく。着ている学ランが溶けて、痛みは疲れ果てた脳髄に届くことなく、痺れと喪失感というかたちで伝わった。
どうやら、おれの人生は此処で終わりらしい。
嫌だ、嫌だ、嫌だ。
それは嫌だ。
「……誰か、おれを助けてくれ」
そんな情けない言葉を最後に、おれは意識を手放した。
それはおれが人間というものに絶望して、三日後の朝のことだった。
◆プロローグです。
次からお話が始まります。
◆下部に登場人物紹介を追加。(2015/5/9 追記)
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◆新作投稿始めました。(2020/1/2 追記)
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