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モンスターのご主人様  作者: ショコラ・ミント/日暮 眠都
1章.ご主人様と眷族の彼女たち
1/321

01. とある洞窟での出来事

初投稿です。

拙作をどうぞよろしくお願い致します。

   1


 人間なんてのは屑ばっかりだ。


 おれは深い洞窟の奥で身を縮め、絶え間ない苦痛に苛まれながらも、呪詛の言葉を吐き続けていた。


 そうすることしか出来なかった。


 疲れ切って、まともに休息を取っていない体は、上手く動かない。

 胃酸が胃を焼くくらいにお腹がすいていて、眩暈さえする。

 呼吸が熱っぽくて不安定だ。


 病気にでもなっているのだとしたら、ますますおれには先がない。


 おれは自分が絶体絶命の危機にあることを認めざるを得なかった。


 畜生。畜生。

 何処とも知れないこんな場所で、寂しく一人で死んでいくなんて。


 そんな風な目に遭わなければいけない、どんな罪をおれが犯したというのだろうか。


 いいや、違う。

 おれは何もしちゃいない。


 やったのは、連中の方だ。おれはあくまで被害者に過ぎない。


 だから、おれは呪詛を口にする。


 そうすることで、掻き消えそうになる意識を保とうとする。

 多分、この憎しみが消える時こそが、おれという存在がなくなってしまうその時なのだろうと思うから。


 だが、そんなおれの努力をあざ笑うかのように、洞窟の入り口の方から何やら物音が聞こえてきたのだ。


 何かを引き摺るような音。

 魂を削り取るような、不吉な擦過音だ。


 ……来るな。来るな来るな来るなっ!


 おれは心の中で叫ぶが、音はどんどんと近づいてくる。


 もう駄目だ。逃げられない。


 絶望的な気持ちで、うずくまったままおれは、視線を物音のする方へと向けた。


 そこに、半液体状の体組織を持つ、二メートル超の化け物がいた。


「……ぁあ」


 モンスター。

 おれたちがそう呼んでいる、人間にとっての天敵だった。


 おれたちが便宜上スライムと呼んでいるその化け物は、目玉の一つもないくせに、おれのことを見付けたらしい。見た目からは思いもよらない俊敏さで近づいてきた。


 逃げようもない。そもそも、おれには此処から立ち上がる体力すら残っていないのだ。


「畜生め」


 投げ出されたおれの手がまず、強烈な消化液によって喰われていく。着ている学ランが溶けて、痛みは疲れ果てた脳髄に届くことなく、痺れと喪失感というかたちで伝わった。


 どうやら、おれの人生は此処で終わりらしい。


 嫌だ、嫌だ、嫌だ。

 それは嫌だ。


「……誰か、おれを助けてくれ」


 そんな情けない言葉を最後に、おれは意識を手放した。


 それはおれが人間というものに絶望して、三日後の朝のことだった。




◆プロローグです。

次からお話が始まります。


◆下部に登場人物紹介を追加。(2015/5/9 追記)

クリックすると、登場人物紹介の活動報告ページに飛べます。


◆新作投稿始めました。(2020/1/2 追記)

下部にリンクを追加。そちらもよろしくお願いします!

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