3
瞼を突き抜けて網膜を白く塗りつぶす白い光は、やがて消えていった。白いカンバスにバケツいっぱいの黒いペンキをぶち撒けたような漆黒が、その次に広がった。それが何を意味するのかは、彼が生きる世界の消滅をその場で見ていた僕には、すぐに分かった。
ゆっくりと瞼を上げ、眼を開ける。視界には、暗い闇と、微かな月明かりに照らされた硬質なグランドがあった。戻ってきたのだ。
僕はすぐにそのことを実感し、意識を彼の元から立ち返らせることはできた。それでも、急に横から彼女の声が聞こえると、驚いて微かに身震いしてしまう。
「どうだった? 久しぶりの話は」
溜息のようなものを吐きながら、左にいた彼女の方へと振り向く。瞬間、ほほえみを浮かべた彼女の声が、恐ろしく薄気味悪く、それでいてとことん神秘的なものに見えてきた。かつてよりも、いっそう。
じっとこちらを見つめるその眼の奥底には、僕の考えなど及びもつかないような、形容のしようがない“何か”が遊泳しているとしか思えなかった。
その理由は何故か。
他でもない。
僕は言った。
「これはみんな、君がやったことなのか」
「ええ」
彼女は、僕がこう質問することをずっと前から分かっていたかのように、いともすんなり応えた。
僕の問いの通りだ。全ては彼女のやったことだった。あの美しくも奇怪な海は、彼女が作り上げたものであり、彼をあの海へと誘ったのは、他ならぬ彼女だった。
なるほど気味悪いはずだ。神秘的でもあろう。彼女は――
人間ではないのだ。
「彼があの世界にいるのは……」
「それは彼自身の意思よ。私はただ、私が作り上げた、魂を保存する海があるということを、教えてあげただけ。実際に選択したのは彼よ。あなたと同じように」
「作った……作ったと言った。あの海は元々どこかにあったものじゃなく、確かに君が作ったものなんだな?」
「ええ」
「何故作った」
僕は今、自分がどういう顔をしているのか分からなかった。心の中には、特定しきれないほどの雑多な感情が、幾重にも重なって乱流となっていた。
憤りを感じているようでもある、あるいは恐怖でもある、戸惑いでもある、事実に対し呆然としている、同時に彼女を称賛しているようでもある、今初めて、彼と共に僕の友達であり続けていた彼女に対する、多大な興味を持ち始めているようでもある。
自分が自分でないようだった。事実を咀嚼することに全ての神経が集中し、僕自身の解釈を、肉体という水底からわき起こってきた拒絶反応が押さえつけているみたいだ。確かなものはいくつでもあるのに、確かだと信じられるものは何もない。すでに分かっているはずの事実なのに、そのために僕はこれ以上ないほどに混乱していた。
ただひとつ、全ては現実だということは、確かなことだった。
彼は、確かにあそこで生きている。僕はそこに行った。そしてそこを作ったのは、彼女だ。何故そう言い切れるのかということに関しては、いくつかの理由がある。
ひとつは、僕をあの海へ誘ったのが、彼ではなく彼女だということだ。彼では、僕をあそこまで呼び寄せることはできなかっただろう。それもそのはずだ。彼の命はすでになく、彼がこの、僕が今いる世界――あの海と区別するために、現実世界とでも呼ぼうか――でできることはなにもない。あの海で永遠に暮らしていくためには、肉体を捨てて、全てのしがらみを振りきらなければならないのだろう。多分だが。だから、電話で僕を呼ぶことなどできないし、中学校の校門前で待ち合わせることもできない。ということは、それを両方ともできる彼女は、彼と違い生きた肉体を持っているということだろう。
だとして、何故彼女があの世界のことを知っているのか? その疑問がふたつめの理由だった。死ぬ前の彼が、彼女に教えたという可能性も、勿論ある。
しかし、だとしたら何故、彼女はあの海への行き方を知っている? ただ眼を閉じてしばらく歩く。僕にはそれが、この世ならざる超常的な世界へ向かうための儀式だとは、とても思えなかった。もしそうだというなら、彼だって同じようにしてこの世界から去っていけばよかったのだ。飛び降り自殺と単なる歩行の違いは何だ?
あるいはそんな違いには、そもそも意味などないのかもしれない。重要なのは、彼女がその場にいるということなのではないか。僕が今立っているグラウンドとあの不思議な海を隔てる扉、そしてそれを開け放つための鍵は、他ならぬその創造主である、彼女なのではないか。
もちろん、僕のこれらの考えには、確固たる証拠はない。ただ独りよがりに結論づけようと、脳細胞が空回りしているだけだと言われても、反論はできない。
それでも僕は、僕を悠然と見据えながら静かに微笑む彼女の表情を見ていると、自分の中の仮説が絶対的に正しいものであると、寸分の疑いもなく確信するしかなくなるのだ。
そして実際、何もかもが正解だった。彼女はあの海を作ったし、彼をそこに誘った。僕も誘った。
先程の僕の問いに、彼女は数秒沈黙してから応えた。その沈黙は、何を応えればいいのか分からないというよりも、応えるべきものを一度バラバラに分解し、そのパーツのひとつひとつを丁寧に解析、吟味してから組み込み、改めて再構築しているような沈黙だった。
「正直言って、はっきりとした理由はない。あえて言うなら、“戯れ”」
「“戯れ”」
おうむ返しにそう繰り返した僕の声に、どんな感情が込められているのか自分では分からなかった。それが自分の声であるかどうかすら、一瞬疑ってしまった。
“戯れ”。
ただそれだけで、人の魂を保管するかのような世界を作り上げる。
この世には、こんな生命体が存在していたというのだ。今更ながら、僕は今夢を見ているのだと思いたくなった。だが、夢ではない、どれほど目覚めろと念じたところで、世界には何の変化もない。当然だ、だってもう目覚めているのだから。
僕はただ、その言葉の意味を確かめるつもりで、もう一度「“戯れ”」と言った。先ほどよりも語気が強くなり、無意識の内に彼女の方へ詰め寄っているのに気がついた。
少し興奮しているのだろう。おかしな事ではない。こんな事実を、どういう形であれ受け入れれば、気が動転して昂ぶるか、現実逃避して無感動になるかのどちらかだろう。僕は一般的な人間のリアクションの範囲内で狼狽えているはずだった。
彼女が、少し困ったような笑みを浮かべる。その笑みは、僕がこうやって狼狽えていることを楽しんでいるような雰囲気があった。戯れが戯れらしくなってきたということなのだろうか。
「怒らないでね」
「別に怒ってるわけじゃない」
実際、僕は本当に怒っていなかった。彼女に対して怒ったところで何になるわけでもないし、僕はあの世界のことは、歪んでいるとは思いつつも嫌いではなかった。彼だって、自分がそこで暮らすことを気に入っていた。
僕の気持ちが昂っているのはおそらく、まだ聞きたいことがたくさん残っているからだ。それらを全て聞くことができれば、それでいい。事実自体はすでに全て明らかになっているのだ。それらに納得するための時間は、この先いくらでもある。だが、これから僕が聞こうとしているいくつかの問いは、どうしても今聞いておかなくてはならない気がした。
納得しなければならないこと、という方が正しいかもしれない。
僕は、彼女の両肩に、押さえ込むようにそれぞれの手を乗せ、はっきりとした口調で聞いた。
「何故、今になって君は僕の元に現れた……いや、それもあるが、それ以上になにより、何故僕と彼だったんだ。何故君はよりによって僕達に関わった。君がいなかったら、僕も彼も、あんな海を見ることさえなかった。彼だってもしかしたら、死ぬことはなかったかもしれない」
「......」
「僕も彼も、君のことを友達だと思っていた。もしかしたら、いつかはどちらかの恋人になるんじゃないかとも思っていた。それもみんな、君の単なる戯れだったっていうのか?」
その時、彼女の笑みが少しだけ雰囲気を変えた。先程までの愉快そうな気配はもうない。彼女はいつも微笑を浮かべていたが、その笑顔のベクトルはその時々で僅かに違っている。そのことは、それなりに長い間、彼女と共に過ごしてきた僕には分かっていた。
「最初はそうだった、と思う。でも、今はそうじゃない」
「僕達は君の遊び相手じゃなくなった、ってことか?」
「いいえ、遊び相手よ。でも、好き勝手に弄ぶような玩具ではなかったってこと。遊び道具と遊び相手の違いって、分かるでしょう」
「……そりゃあ、分かる」
「私は、遊び相手が欲しかったのよ。私を適度に喜ばせてくれるけど、それでいて、常に私の意思とは関係なく、自らの意思で行動する、生きた存在がね。そういう者達と一緒にいて、彼らの考えに触れてみたいと思った。そうして出会ったのが、貴方達だったの」
彼女の言いたいことは、なんとなく分かった。それに気づいた時、僕はいっそ拍子抜けしたような気分にさえなった。
『遊び相手が欲しい』。
その言葉を文面通りに受け取るとすれば、彼女は僕達とはまったく異なる生命体(生命体であるかどうかさえ怪しい)でありながら、僕達人間の子供みたいな発想をしていたということになる。僕だって、もう記憶もおぼろげになるほど昔は、友達が大勢欲しかったことだろう。彼のような友達なら、それこそ生涯を通して巡り会いたいとも思う。そんな僕達人間と同じ事を、どうやら彼女は考えていたらしい。ただ、そのやり方があまりに奇抜すぎるというだけだ。
彼女の言葉を一般的な感性を持った人間が聞くと、生命を弄んでいると反感を抱くかもしれない。
だが僕は、何故だか少しだけ彼女に対して親近感を覚えた。そうして、彼女のような存在と出会い、そして、一時であろうと、ただの戯れであろうと、友達になれたということが、とてつもなく幸運なことであると思えてきた。感覚が麻痺しているとは思いたくない。人ならざる存在である彼女を恐れ、不条理さに憤慨するよりも、友達であった彼女の意外な一面が見れた、ぐらいの受け取り方をする方が、なんだかしっくり来るような気がしてくる。
僕は狂ってしまったのか? でも、これが狂気だというのなら、悪くないかもしれない。
僕は、続けてこう質問する。
「どうして、僕と彼を選んだ? 君の遊び相手になってくれるような者なら、それこそいくらでもいたはずなのに」
「ただの偶然よ。 今生きている全人類の中で偶然私の眼に触れたのが、貴方達ふたりだったというだけのこと」
世の中を動かすのはいつも偶然だ。ありとあらゆる事象の中で、はっきりとした意味や意義があるものの方が、少ない。
とはいえ、僕達が彼女と出会ったことまでが偶然なのだすると、それもそれで、凄まじく途方も無い確率であり、特別なことだと思えてしまう。だが、彼女がこうやって何気ない口調で言うと、別に大したことではないとも思える。
ただ、そういう偶然を有難いと、僕は欠片ほどでも思えるようになっていた。どうやら、ようやく無意識の中で事実を充分咀嚼し飲み込むことができ、心が落ち着いてきたようだ。冷静になって考えてみれば、ひとつの単純な結論が現れる。
たとえその正体が何者であろうと、彼女だって、彼と同じく僕の友達だったのだ。少年だった頃を友達として過ごしてきた、とても貴重な出会いのひとつだった。彼女だって、今の僕の身体の一部として、その存在を染み込ませているはずだ。それだけは絶対に変わらない。
質問しなければならないことは、まだいくらかある。だが、それにどう応えられたとしても、彼女のことを嫌ったりするのはやめよう。
僕はそう、自分自身に誓った。
「君は、一体何者なんだ?」
「さぁ、深い海の底から、人々を幻惑させる神様だったか、耳障りな怪音をかき鳴らす猛禽だったか、自分でもよく分からないわ。私はこれまでも、幾度と無く人と戯れてきた。その度に、いろんな形で世界と繋がってきたわ。私はその時々で、姿を変えるのよ。そして今は……」
「僕達の友人。女の子の姿をして、人の魂を一番いい形で保存する。新しい遊び方を覚えたわけだ。君は」
「そういうことね。そして、人間の新しい魅力に気づいて、ときめいているのよ」
そう言って彼女はにっこりと笑った。
不気味で不思議である以上に、彼女はとても綺麗だということを、思い出した。
「改めて聞くけど、どうして、今になって僕を誘った。彼があの海で生きているというなら、それをもっと早く教えて欲しかった。彼と話ができるっていうなら、もっと早く話したかった。もう、十六年という時が経ったんだ。後もう少しすれば、君のことも彼のことも、忘れるかもしれなかったんだ」
「ごめんなさい。ただ、貴方にはしばらく、時間が必要だと思っただけなの」
「時間」
「そうよ。あらゆる意味でね」
「……」
時間か。
彼の死を受け入れ、人生を安定させる時間、ということか?
彼が飛び降りたと聞いて混乱しきっていた当時の僕が、彼女から今聞いた事実を伝えられれば、どうなっていたのだろう。もしかしたら、ロクに考えもせず、自分もあの海へ連れて行ってくれと頼んでいたかもしれない。だがそれは、自分の意思で選択したことではない。彼女は僕に、自分の人生を見つめなおすだけの余裕を与えてくれたというのか?
確かに、それは正しかったのだろう。何故なら……
「確かに、ゆっくり時間をかけてよかった。僕はまだ、君達の側にいくべきじゃないって、分かったからね」
「そういうことね。そして多分、これからも、貴方が私達の世界に来る必要はないでしょう。貴方は、物事が絶えず変化し、常にその変化に対応していかなければならない現実の世界でやっていくだけの力があるし、それが正しいことよ。貴方は強い人間だってこと、人間じゃない私にだって分かるわ」
「いや、それは違うよ」
僕はゆっくりと首を横に振った。
「本当は、今すぐにでも、彼や君ともう一度友達になって、あの海で暮らしたいよ。でも、そうするにはまだ、早すぎるような気がするんだ。それこそ、時間が必要だね」
「早い?」
彼女が聞き返してくる。彼女が珍しく、問う側になった。僕はまた足元を見つめ、自分の考えを確かめるように、ゆっくりと喋った。
彼女と話をすることは、嫌いではなかった。それなりに気分がいい。それだけでも、僕は彼女を嫌いになるつもりなど一切なくなっていた。
「……僕にはまだ、僕の一番あるべき姿というのが見えない。このままあの海で過ごしても、多分しっくり来ないと思う。彼はきっと、しっくりくる自分の姿が見えていたんだろうね。だからあの海で暮らす気にもなれた。人生に満足していたんだ」
「……そうね」
「だから僕も、人生を満足いくまで生きたいと思う。僕と彼は違うよ。僕は彼に追いつきたかった、でも今では、近づくことはできても、追いつくことは到底できないってことも分かってるんだ。僕の人生は、僕らしくやっていきたいと思う。生きるだけ生きてみて、満足いく自分をしっかりと形作ってからにしたい。それに、もっと知りたいことがいくつもあるんだ。そうして、いずれ彼以上の物知りになりたい。そうしてあの海で、岩を椅子にしながら、それを彼に伝えるんだ。そうすれば、止まってしまった彼の時間だって、もう一度動き出すと思う。僕達はもう一度、僕達の関係を先に進めることができるんだ。だから……」
「ふふっ」
何かが羽ばたくような音が、鼓膜を揺らした。
僕はハッとして、俯いていた顔を上げた。その瞬間にはもう、その羽ばたきは僕の遥か頭上へと、嵐に吹き上げられた砂埃のように舞い上がった後だった。それと符号するように、彼女の姿もまた、僕の前から消え去っていた。
去っていったんだ。それはあまりに突然のことではあったが、すでに聞きたいことを大体聞き終えていた僕にとっては、別段急な事態でもなかった。
ただ、どうしても僕の心からは、彼女と別れるのを惜しいと思う気持ちがあった。彼と同じだ。
いずれまた会える時がくるかもしれない。僕は決して、彼女に二度と会うなとか言っていないし、彼女だって、もう僕と二度と会わないなんて言っていないのだから。
それでも僕は、彼女が、その本当の姿へと変貌すると共に、僕の下から離れていくということが、とても寂しく思えた。
取り残されたような気分がした。美しく輝かしいものがその姿のまま残り続ける素晴らしい世界から。
だけど、それが全面的に正しいことだとは思わないから、僕はその世界に入り込むことを、ひとまずは拒んだ。自分の意思でそう選択したはずだ。
なら、それを認めなければならない。
ただ、後一言だけ、彼女に伝えたいことがあった。それを言いかけたところで、彼女は去っていってしまった。せめて最後まで言葉にしなければ、気持ちがすっきりしない。
僕は、彼女が去っていたのであろう頭上を仰ぎ見て、精一杯声を張って叫んだ。大声を出したのは、もう何年かぶりになる。久しぶりに、腹の底から空気が強烈に振動し、喉の奥を獣のように疾駆して、空気中へと飛び出した。
「だから、君達の側へいく資格ができたと思った時に、もう一度会いに来てくれ! その日まで、あの海をもっと賑やかにしておいてくれると、嬉しい! できるんだろう?」
返事はなかった。
ただ、真っ暗な空の中、まるで金色に輝く虚空のような月に、ひとつの影が重なった。それは、翼の生えた魚のように見えたし、同時に人の肉体を持っているようにも見えた。大きな翼をニ、三度羽ばたかせ、扇のような尾ひれを揺らしながら、やがてその影は月から離れ、宵の闇の中へと溶けこんでいった。
あれこそが、彼女だったのだろう。浅い海の底から、時にはああやって空を舞いながら、僕達人間の営みを眺め、時として地上へと進出して戯れに励んでいたのか。
……そういう存在も、この世にはあるのだろう。彼女は――僕のもうひとりの友達はそういう存在のひとつなのだ。ただそれだけのことだ。例え何者であろうと、僕と彼の友達であることには変わりない。
そう考えると、不思議と口元に笑みが浮かんできた。
ようやく、一連の事態が終焉したのだということを察した。そうして、不思議と清々しい気分になった。
心の中が、空っぽになった。
それでも、悪い一時ではなかったのだろうと思えた。
僕は、しばらくの間夜空を眺め、彼女の存在の残滓を見つめ、やがてそれが感じられなくなってから、我が家へと帰っていった。
※
相変わらず、鍵を開けてドアを開けて中に入ると暗い、そして誰もいない。久しぶりに彼や彼女と会った後だと、幾分か寂しい気持ちになったが、それもすぐになくなった。
明日からまた仕事が始まる。彼や彼女達の生きるあの海のことを知っても、現実世界には何の影響もない。人は当たり前のように変わらない日常を営み、経済は動く。朝が来れば次に夜が来る。今日の次は明日、明日の次は明後日。明日と明後日は来る。だが昨日は永遠にやってこない。
だが、あの美しい海は、確かにあるのだ。昨日が昨日のままで在り続けるために、世の中の摂理の隙間でひっそりと。
腹が減った。どうせ今日一日はゆっくりしていていいのだから、時間をかけて夜食でも食べるとしようか。
僕は、またコルトレーンを聞きながら、焼き鯖と味噌汁と、作り置きしておいたきゅうりの浅漬けを食べた。和食と一緒に聞くビバップも、なかなかいいものだった。
あの海でも、本は読めるだろうし、音楽だって聞けるだろう。上手い食事は食べられるんだろうか。だとしたら最高だ、文句ない。それで、彼や彼女や、多分、他にも大勢の人が楽しんでいるんだろう。文句ない。
気がついたら僕は、その瞬間が来るのが楽しみになっていた。そのためにも、これからの人生を、精一杯頑張っていこうという気持ちになった。そうして、彼や彼女に、誇れるような人間になるのだ。いや、なれなくてもいい。そういう自分の姿に、気づくのだ。
今夜はぐっすり眠れそうだった。
ということで、いかがでしたでしょうか。
これまで二次創作ばかり書いていたのですが、始めて、一次の小説を書いてみました。
今後も一次創作を連載していこうと考えているので、その前に自分の文章がどういうものなのか見つめなおすというのと、頭の中でいろいろ浮かび上がってきたけど連載するのは諦めていたアイデアのひとつを、腐らせておくのも勿体無いから少しでも文章化してみようという目的で書いてみました。
本当は一万文字前後の短い小説にしようと思ったんですが、結局その倍以上になってしまいました。
文章も、最後の方なんかは、自分でも正直言ってよく分からない感じに...
うぅむ、どうも自分は文章を分かりやすく書くのが苦手みたいです。本格的に活動を再会する前に、こういうのは改善しておくべきかもしれませんね...
なんにせよ、宣言通り年内に投稿できたので、ひとまずは安心です。
いつになるかは分かりませんが、次に投稿する時も、どうかよろしくお願いします。
今回はこれぐらいで、失礼致します。
ありがとうございました。