行方
「みんな、みんな~」
暁は駆けて来る。
「人間界に行けって言われた」
慌てた様子でしゃがみこみ、美しい花を覗き込む。
「どうしよう、どうしようどうしよう~」
微かに涙目で訴え続ける暁に、月見草はため息を送る。
“落ち着け。落ち着け暁”
“ほら~、うじうじしないっ!”
「だってだって……。僕、行き方知らないし」
顔を伏せながら暁は言う。
「それに、今まで一度も行かなかったしっ!」
半分やけになって暁は叫ぶ。
そして、月見草はというと――
“お前……それは本当か?”
“ダメだー暁ー”
とても驚いているようだった。人間の似姿をしているなら、目を見開いてこちらを凝視していることだろう。
「本当だよ、駄目とか言わないで~」
今にも泣きださんばかりの暁は、深い深いため息をついた。伏せていた顔を上げ月を見、暗悔の塔を見る。
“ねえ、一人で行けるの?”
じっと眺めたままの暁に、心配そうな声がかかった。
“なんなら、ついていくが?”
「だ、大丈夫……だと思うよ。たぶん……」
段々声音が弱弱しくなる。だが月見草は、
“そうか。よく言った暁”
“あんたも大きくなってんのね~”
どこか嬉しそうだ。
身を震わせ、大輪の花を咲かせている。暁は、その美しいものに笑顔を向け、すくっと立ち上がった。
「僕、言ってくるよ!」
勇んで言った暁は、歩を進める。月の輝きに照らされながら、暗悔の塔を目指そうとし――
「……あっ」
足を止めた。
“? どうした、暁”
「……人間界に行く方法。教えてください」
“大丈夫なの~? そんなことでさぁ”
そろって全員、脱力した。
ついに人間界へ乗り出す暁。一体どうなることやら
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