表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

黄の翳り

 いつもの場所。

 いつもの空間。

 ……の、はずだった。

「あれ? なにか……」

 普段通りに花々を眺め、暁は首を傾げる。

 柔らかな月見草の黄が、美しい月光に照らされていた。しかし、その黄色にも、月にさえ違和感を抱いてしまい。不安に思って、暁は駆け出す。

 なにかが違う。なにかが違う気がする――

 そこで、ふっと足を止めた。

 周りを見回し、月を見上げる。そして、

「少しだけ……黄色に黒がかかってる?」

 月見草に触れ、呟いた。

「――月も、光が弱い……」

 微かな違いである。

 一般には、そのような事、気づきもしないだろう。だが、暁は不審に思った。

 毎日のように通い続けた、暁には。

“お~、暁~”

“どうかしたか?”

 不意に聞こえた声に肩を揺らし、ばっと振り返る。そこには馴染みの月見草がおり、暁を見上げていた。

「ね、ねえ。なんか君たち、黒くない?」

 必死に迫り、暁は問う。

“え~? そう?”

“変わりないと思うが……”

 驚いたように月見草は答え、首を傾げるように身を震わせた。

「……それなら、いいんだけど」

 歯切れの悪い言い方をする暁に

“あたしのどこが黒いって!? えぇ!!”

 月見草は声を荒げる。

“大丈夫だ、暁。そんな心配そうな顔をするな”

「うん……。失礼な事言って、ごめんね」



 ――無理に笑おうとする暁は、この異変に気が付く事はなかった。


“月がおかしいね……”

“もう少しで、変わってしまうのかもしれないな”

 気づく事は、できなかったのだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ