第1話|皇太子の粛清
夜の王城。
冷たい月光が玉座の間を照らし、長い影を床に落とす。
皇帝は玉座に座し、皇太子を見据えた。
沈黙の中にただ存在する威厳。
低く、玉座の間に響く声。
怒りではない——権威そのものだった。
皇太子の手には、かつての策略の痕跡——離縁計画の書状が握られていた。
だが策は完全に暴かれ、焦りが瞳の奥に漂う。
「お前に、裁きを下す」
忠実な衛兵たちが静かに動き、間者たちもその場で拘束されていた。
ラヴェル公爵邸に侵入した者たちも一掃され、公爵邸は安全を取り戻している。
「私の計画の全てが、ヴァルディアによって明らかになったのです……」
皇太子は跪き、視線を地に落とす。
「私はただ、ルミエールを妻に——皇太子妃にしたかっただけなのに」
皇帝は軽く頷き、冷徹な目で息子を見下ろす。
「ラヴェル公爵家に二度と手を出すな。
お前の勝手な懸想が、忠臣を失わせるところだった。」
その言葉が、混乱の終わりを告げる。
力による秩序と、裁きの確実さが、すべての不安を消し去った。
皇太子は皇帝の命により強制的に退位させられ、第二王子が立太子することとなった。
ヴァルディアはルミエールの手にそっと触れた。
「これで、ラヴェル公爵家は完全に守られた」
冷徹な表情の奥に、守護者としての深い安堵が滲む。
ルミエールは微笑み、軽く握り返す。
嵐は去り、屋敷に静けさと平穏が戻った。




