第3話|黒幕と影の決着
ラヴェル公爵邸の書斎。
夜は更け、外の風が樹々を揺らす。
ヴァルディアは窓辺で、月明かりに照らされた書類を手に佇む。
ルミエールは彼の隣に静かに立ち、息を整えていた。
「間者は……ここまででしたね」
低く告げるヴァルディアの声に、冷徹さが宿る。
その視線は、邸内の影の一つ一つを射抜くように動いた。
書斎の扉が開き、皇太子の間者が連行されてくる。
顔には恐怖、体は緊張で硬直していた。
逃げ場はない。
「貴様が屋敷に入り込み、皇太子の命により、計画を実行に移そうとした……全てが、明らかになった」
ヴァルディアの言葉は淡々としているが、重みは凄まじい。
間者は言葉を失い、目を伏せる。
ルミエールはそっと、ヴァルディアの手に触れる。
その手は、冷たさの中に守護者としての温もりを含んでいた。
その後、屋敷内に集められた証拠と証言を元に、皇太子の策略は完全に暴かれていった。
王城からの書状、間者の動き、密かに残された記録――全てが彼の失策を示していた。
「……皇太子殿下、あなたの策は見事に潰れました」
ヴァルディアは静かに口を開く。
怒りではなく、裁きとして。
権力者の虚勢も、もはや意味を成さない。
間者は屋敷の門から追い出され、影の計画は完全に崩壊した。
その場に残ったのは、月光の下で互いの存在を確かめ合う二人だけだった。
ヴァルディアはルミエールの手を取り、指先を軽く絡める。
「これで、全ての危機は終わった」
その声には、守るべき者を前にした安堵と決意が混ざっていた。
ルミエールは小さく微笑む。
「はい、もう怖くありません」
夜空に冷たい風が吹き抜けても、屋敷の中は完全な静寂と安心に包まれていた。
嵐は去り、二人だけの未来が、ようやく手の届く距離にあった。




