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第2話|皇太子の失策
夜の王城。
冷たい月光が窓から差し込み、広間の床に長い影を落とす。
皇太子は書状を手に、静かに動揺を隠す。
しかしその瞳の奥には焦りが漂う。
自ら仕組んだ離縁計画が、完璧とは程遠い結果になったことを悟る瞬間だった。
ラヴェル公爵邸では、ヴァルディアとルミエールが証拠を握り、間者の存在も完全に把握していた。
ヴァルディアの冷徹な眼差しが、間者と皇太子の策略を一瞬で暴き出す。
「……皇太子殿、あなたの考えは甘すぎましたね」
ヴァルディアは低く、静かに呟く。
怒りではない。理性で完全に計算された、裁きの宣告だ。
ルミエールはその横で、わずかに微笑む。
「もう、二度と屋敷に入り込むことはできません」
言葉は穏やかだが、強い決意を帯びていた。
月光の下、二人の眼差しは揺るがず、皇太子の策を封じる力を示す。
この瞬間、嵐の影は完全に消え、公爵邸に静けさと安心を取り戻す兆しが見えた。
ヴァルディアはルミエールの手に軽く触れる。
冷徹な表情の奥に、守護者としての愛情が滲む。
「これで屋敷の安全は確保された。後は……日常を取り戻すだけだ」
ルミエールは頷き、二人の手がそっと絡む。
嵐の後の静けさが、今度こそ完全な平穏を約束しているかのようだった。




