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あなたを手放すために、結婚しました  作者: 絵宮 芳緒
第1章|運命の出会い

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第3話|小さな交流と距離感

午後の静かな時間。

ルミエールは書斎へ向かっていた。


兄がまとめた演習記録を閲覧する許可を得たのだ。


扉の前で足を止め、ノックをしようとした、その瞬間。

内側から扉が開いた。


「あ……」


思わず一歩下がる。

だが足元がもつれ、体が傾いた。

腕を支えたのは、硬い感触。


「気をつけろ」


ヴァルディアだった。


距離が、近い。

氷青の瞳が、まっすぐに自分を捉えている。


「申し訳ありません」


体勢を整えようとしたとき、ふと彼の指先が止まった。


「……インクがついている」


額に、黒い跡。

気づくより早く、親指がそっと触れる。

軽く拭う仕草。

それだけーー

だが呼吸が止まる。


「令嬢が顔を汚すな」

淡々とした声音。


けれど、叱責ではない。

どこか、やわらかい。


「……はい」


胸が静かに熱を帯びる。


物語で見た彼は、冷徹な騎士団長だった。


けれど目の前の彼は、細部に気づく人だ。


「見学していたな」


不意に言われ、息が詰まる。


「はい」


「無理に近づくな。あれは遊戯ではない」


守る側の言葉。

その一言が、胸の奥に落ちる。


(やっぱり……)


距離は遠い。

だが、拒絶ではない。

ほんの少しの認識と、わずかな配慮。

それだけで、十分だった。


けれどルミエールは知っている。


この人が、戦場では“鬼”と呼ばれることを。

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