第3話|小さな約束
夜の屋敷庭。
月明かりが静かに地面を照らしている。
風はなく、葉のざわめきもほとんど聞こえない。
二人だけの時間だった。
ルミエールは手を組み、ヴァルディアの横に立つ。
視線は庭に落ちているが、胸の奥の緊張が少しずつほどけていくのを感じていた。
「……今日も、平穏でしたね」
声は小さく、でも確かな微笑みを含んでいる。
ヴァルディアは静かに頷き、彼女の手を自分の手に重ねた。
「……お前の笑顔を、守るためなら、どんな嵐も恐れぬ」
低く、けれど力強い声。
ルミエールの胸が、一瞬熱くなる。
守られるだけではない、互いに信じ合える関係。
「……私も、あなたを信じます」
言葉とともに、指先が自然に絡む。
離すことなく、でも強く握りすぎず、二人の距離は心地よく近い。
庭の奥、スノードロップが月光を浴びて白く輝く。
「……覚えていますか?」
ルミエールがそっと触れ、過去と今を重ねる。
「小さな花が、私たちの誓いの証のようです」
ヴァルディアは目を細め、静かに微笑む。
「……ああ、あの頃も、今も、守るべきものは変わらぬ」
月明かりの下、二人の手の温もりが夜を優しく包む。
言葉は少なくとも、確かな想いが伝わる。
「……明日も、こうしていられますように」
小さな声が夜に溶ける。
「当然だ」
低く、確かに答えが返る。
嵐の後、互いを信じ、守る未来への小さな約束。
屋敷の庭には静かな幸福が満ちていた。




