第2話|微笑む日々
昼下がりの庭は、柔らかな陽光に包まれていた。
花壇の花々は揺れ、遠くで小鳥がさえずる。
ヴァルディアとルミエールは、ゆっくりと屋敷の庭を歩いていた。
「……こんな日差しの中にいると、嵐のことも忘れそうです」
ルミエールは軽く微笑む。
その表情を見たヴァルディアの目が、わずかに柔らかくなる。
「忘れるわけではない。ただ、今はこうして過ごす時間も必要だ」
低く、静かな声。
振り返ったとき、二人の視線が重なる。
言葉は少なくても、互いの心はしっかりと通じていた。
花壇の前で、ルミエールは立ち止まる。
「この花、覚えていますか?スノードロップ……」
かすかに指先で花を撫でる。
「侯爵家で、あなたが好きだと言っていた……あの花です」
ヴァルディアは一瞬だけ顔を上げ、無言で花を見つめる。
次の瞬間、そっと彼女の手を取り、自分の手の中に重ねた。
「……守る、あの頃と同じようにな」
その声に、冷徹さはなく、穏やかな誓いが宿っている。
ルミエールの胸が、静かに熱を帯びる。
守られるだけではなく、互いに信じ合う気持ち。
危機を越えたからこそ、今の平穏はより尊い。
庭の奥で風が吹き抜け、二人の間の静かな時間を揺らす。
言葉を交わさなくても、互いの存在が胸に安心を与える。
ルミエールは小さく笑みを浮かべ、ヴァルディアの手を軽く握り返す。
微笑むその顔に、彼も自然と口元が緩む。
嵐の後、ようやく訪れた日常のひととき。
小さな穏やかさの中で、二人の距離は確かに縮まっていた。




