第1話|日常の回復
朝の光が、屋敷のリビングに柔らかく差し込む。
窓辺のカーテンが静かに揺れ、外の庭では小鳥の声が混ざる。
ルミエールは椅子に腰かけ、紅茶をゆっくりと口にする。
ヴァルディアは隣に立ち、手を組んで窓の外を眺めていた。
表情はいつも通り冷静だが、その背筋や肩の力の抜け具合に、昨夜とは違う余裕が感じられる。
「……静かですね」
ルミエールは微かに笑みを浮かべる。
「嵐の後には、こんな日もあるのですね」
「……日常は取り戻すものだ」
ヴァルディアの声は低く、抑制されている。
だが、言葉にこもる安堵が、彼の冷静さの奥に見える。
ルミエールはそっと手を伸ばす。
ヴァルディアは一瞬、視線を合わせ、そして静かに指先を絡める。
強く握るわけではない。
だが、この距離感が二人にとって十分だった。
庭では小さな風が樹々の葉を揺らす。
嵐の残した影はまだある。だが、屋敷の中は穏やかだった。
互いに守られ、守るという信頼が、静かに満ちていく。
ルミエールの胸の中に、甘く温かな感情が広がる。
危機を越えた後の、何気ない日常の中にこそ、幸福は静かに息づいていた。
ヴァルディアは無表情のまま、微かに視線を彼女に落とす。
言葉はなくても、確かに伝わる。
「お前がここにいる。それだけで十分だ」と。




