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第3話|夜の書斎で
夜ーー
書斎の灯が柔らかく机を照らす。
ルミエールは読書に没頭していたが、背後の気配に気づく。
静かに椅子が引かれ、ヴァルディアが隣に座る。
無言ーー
けれど、視線や小さな仕草で確かに伝わる——
彼女を守る意志、そして、独占したいという温度。
「……ルミエール、目を休めろ」
低く静かな声。
命令ではない、優しい気遣い。
胸の奥がざわめく。
(……やっぱり、この人は特別だ)
その瞬間、書斎の窓外で、屋敷内の動きに気づく間者の影をちらりと目にする。
未来の記憶が警鐘を鳴らす。
守らねばならない——胸の奥に、使命感と守りたい想いが交錯する。
ヴァルディアの手がそっとルミエールの肩に触れる。短く、無言の温もり。
距離はまだある。
けれど、昨日よりも、ほんのわずかに近い。
静かな夜、二人の心の距離は、昨日よりも確かに縮まった――ルミエールはそう感じた。




