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第8話 突き抜ける助太刀

 前に見た無邪気で馬鹿っぽい姿のゴンザは見る影もなかった。


 皮膚は裂け、灰色の毛が滲むように生え広がり、背は二倍……いや三倍近くに膨れ上がっている。

 

 両腕の爪は獣そのもので、唸り声はもはや人のものではなかった。


 次の瞬間、地面が爆ぜる。

 ゴンザがアランのロボ、ビュートへ飛びかかり、獣じみた咆哮を上げながら腕ごと押し倒す。


「ぐっ……! こいつ、重いっ!」


 ビュートのパワーは大型トラックを軽く吹き飛ばせる威力を持っているはずなので今のゴンザはかなり危険な力を持っていることがわかる。


アランが抑えている間に蓮はテラーの前へ出る。

「何者かは知らないが、そいつは知り合いだ。彼女から離れないと発砲するッ!」


「やれるものならやってみたまえ、政府の犬」

挑発と同時に、テラーの指先に紅い魔素が集まり、弾丸のように放たれる。

 

 蓮は跳躍してかわし、3発銃弾を撃つ。


「遅い遅い」


 しかし、テラーはするりとかわしナイフで腹を切る。


 血がドロドロと出てくる。魔素を扱える『俺』ならすぐに止血して治癒できるのだが……


(……くそ、蓮の状態だとうまく戦えないな)


 アランのロボはゴンザの獣腕に抑え込まれ、金属が悲鳴を上げている。


 打開策は――一つ。


(“アイツ"を呼ぶしかない……!)


 蓮はジャケットのポケットから、張り込みの差し入れとして買っていたあんぱんとフルーツ・オレを取り出した。


テラーは攻撃を繰り出しながら、首を傾げる。


(…何故あんぱん??)


 蓮は魔素を練り上げ、あんぱんに触れさせて“存在を強調”。

 次の瞬間、それを全力で大通りの空高くへ向けて投げ放つ。


 パンが空中で弧を描く――


 ドン!!!


 何者かが、遠くから飛んできて二つを吸い込むように口に運ぶ。


 自販機の上に着地したのは金髪の少女。

 大学生のような大人の格好に、腰には刀……ではなく木刀。


 少女は無言であんぱんを噛み締め、目を輝かせる。


「……っむ。これは……!」


 次の瞬間、音もなく蓮の前へ降り立った。


「第三夢――ハーツ、只今参上モグモグ……。主君、どこに助けが必要か?」


 蓮は差し伸べられた手を掴み、言い放つ。

「行け、ハーツ。捕まったあの少女を助けろ」


「承知したッ!!」


 ハーツは木刀を取り出す。

 空気が、一瞬にして張り詰められた。


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