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第15話 もぬけの殻

地下拠点の作戦室に、緊張が張り詰めていた。


壁一面に展開された映像には、防犯カメラの映像や建物の見取り図が並んでいる。


ネロが端末を高速で操作しながら、次々と情報を更新していった。

「場所は港区の廃工場。カメラをジャックして内部を確認したけど、警備は思ったより薄い」


「罠の可能性は?」

アルカナの問いに、ネロは少し間を置いた。


「……ゼロとは言えない。でも、ルナの生体反応はここから拾えてるし、間違いなくいるね」

室内に沈黙が落ちる。


ポーカーは腕を組んだまま、見取り図を眺めていた。

「警備が薄い理由が気になる。逃がす気なのか、それとも別の狙いがあるのか」


「どちらにせよ、行くしかないだろう」


アルカナは静かにそう言い切り、全員を見渡した。

「ポーカー、ジャック、ハーツは突入班。ネロは通信と解析の継続。リヴェルダは拠点待機で救護の準備を頼む」


「了解」「任せろ」「承知した」


それぞれの返答が重なる中、ソリティアだけが静かに口を開いた。


「アルカナ様。一つよろしいですか」


「ん?なんだ?」


「今回、紅月の動きは正直掴みにくいです。目的が別にある可能性が高いかと。」

その言葉に、室内の空気がわずかに変わった。


アルカナは一拍置いてから、短く答えた。

「分かった。全員、想定外を想定して動け」

___________________


同じ頃。

廃工場の奥深く、薄暗い部屋の中でテラーは通信機を耳に当てていた。

「……はい。サンプルの採取はもうすぐ完了します。あとは」

『必要ない』


低く、静かな声が遮った。

テラーの手が、わずかに止まる。


『予定通りに動け。お前の役目はそこまでだ』

「しかし、ドリームメイトが動いています。このまま迎え撃つのであれば、幹部を」


『逃げてしまえばいい』


一言だった。


『拠点を捨てて、娘だけを残せ。ドリームメイトに回収させろ』

テラーはマスクの奥の目を細め、静かに頷いた。

「しかし、まだ血液が……。……分かりました」

通信が切れる。

テラーは端末を置き、窓の外の暗い空を見上げた。

「ついに、始まるのか…」

誰にともなく呟き、白衣の裾を通した。


__________________


廃工場への突入は、夜の明かりが完全に落ちた頃に始まった。

「警備、三人。12時方向と4時方向に二人。正面に一人」

ポーカーの声が耳に届く。

アルカナは建物の陰から内部を見据え、低く指示を出した。

「制圧しろ。ただし殺すな」

「分かっているッ!」


ポーカーが動いた瞬間、乾いた音が三度響いた。

警備の三人が崩れ落ちる。


「はぁ、どこまでも地味な仕事ね」

「よし。行くぞ」


四人は音もなく廃工場へ踏み込んだ。

廊下を抜け、階段を下り、奥へ奥へと進む。

妨害は、なかった。


「……本当に警備が薄いし弱っちいな」

ジャックが小さく呟く。


「黙って動け」


ポーカーの短い制止に、ジャックは口を閉じた。

重厚な扉の前に辿り着く。

ネロの解析通りの場所だった。


「ルナの反応は、扉の向こうです」


ソリティアの声が耳に届いた直後、アルカナは扉を蹴破った。

室内には、診察台に横たわるルナの姿があった。

意識はある。目が合った瞬間、ルナは安心したように目を見開いた。


「……アルカナ」

「助けに来た」


拘束を外しながら、アルカナは素早く周囲を確認する。

テラーの姿はない。幹部も、団員も。

がらんとした室内に、機械の残熱だけが漂っていた。


「誰も居ない」

ポーカーが無表情に呟く。


その瞬間、耳に通信が入った。

『アルカナ!」


ネロの声だった。いつもの軽さが、消えていた。


『留置所にいたゴンザが、紅月の助けを借りて逃げたって』

室内に沈黙が落ちる。

アルカナはルナを支えながら、静かに目を伏せた。

「……報告ありがとう」


短く吐き出し、顔を上げる。


「全員、帰るよ」


勝利のはずだった。

だが、誰も笑わなかった。

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