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04話 ラスボス少女NTRに萌える

 ドガッ ボキッ ズドォッ ガスッ バギッ……


 暁斗はモヒカンにめった打ち。いちおう前面に出した両腕でディフェンスガードしているけど、足元がふらついている。かなり効いている。


 「……しかたないわね」


 一言つぶやくと、レイラさんはボクの手を引っ張ってバトル中の二人の前に進み出た。


 「お兄さん、もうやめて。私たち二人、あなたにつき合うわ。一晩中のおさわりフルコースでもなんでもして」


 ええっ! ボクまで!!?

 そんな……しかもレイラさんがおさわりで悶えまくるシーンも一晩中見なければならないなんて! 

 レイラさんが屈辱にまみれながら、セクハラに嫌がり苦しむ姿を見続けなければならないなんて! なんてヒドイ!

 ……でも、ちょっとワクワク。


 「その代わり暁斗は見逃してほしいの。彼はもういいでしょ?」


 「レイラさん、いけない!」


 レイラさんはさけぶ暁斗に近づき小声でささやく。


 「大丈夫よ。あなたが安全なところに出た頃合いで、私たちもすぐ逃げるから。ここは大人しく逃げてちょうだい」


 あ、なんだ。ワクワクオールナイトフジ子は幻か。

 さて、モヒカンはレイラさんの策に上手くハマってくれるかな?

 見ると、ニヤニヤ下卑たイヤらしい笑いでレイラさんに近づいてゆく。うわぁ、エッチシーンの予感。


 「ケナゲだねぇ彼女。でも言葉だけじゃあシンヨウできねーんだよなぁ。たとえば、こーんなことしても嫌がらない?」


 モヒカンはレイラさんを抱き寄せ、そのふくらみを乱暴に揉んだ!


 むにょーん ぐにいぃ モミモミモミモミ………


 「くうぅっ、もち……ろん……よ」


 「うおぉガンバルねぇ。んじゃ、おれ様の本気を見せてやるぜぇ。小学生、中学生、高校生、大学生すべてにおさわりして培ったセクハラテクをなぁ!」


 アニメでは隠された非道の数々が明らかに! ボクの世界にいたら、迷惑防止条例ブラックリストのトップに名前が記載されるようなヤツだ!


 モニョモニョーン………グニグニ……ペロペロ………


 「やめろ……それ以上レイナさんに………」


 「動かないで……こんなの、どうってこと……ないんだから……」


 泣ける! レイナさんは暁斗のために必死で耐え続け、暁斗はそれを見ているしかない。最高のNTRシーン! ヤツはもはや神だ。神シーン製造キャラだ!!


 「ふううっ。こりゃ、おれッチの負けだな。お兄ちゃん、行っていいぜ。彼女はそのうち返してやっからよ」


 「くううっ、ふざ、けるな。レイラさんを置いてなんて……」


 「行きなさい、暁斗!」


 「本当にケナゲだねぇ。ホレちゃったぜ。おれらの愛の印、見せつけてやろうぜ」


 え?


 ムチュウウウウウッ


 ああああッ! キスまでしやがった!

 それも、ディープな舌までいれるやつ!!

 さすがにそれは、NTR萌えな僕でも許せん!!


 「う……ぐ……おげぇ……」


 「糞ッ、糞ォ!!」


 心底気持ち悪そうな吐きそうなレイラさんと、絶望に涙する暁斗。

 そして激怒するボク!

 この邪知暴虐のモヒカンは必ずや思い知らさねばならない。そう、たとえどのような手を使っても!


 パシャリッ


 ――と思っていたら、ふいに後ろからカメラのシャッター音がした。

 なにかと思って振り返ると、西洋の笑顔を模した仮面(マスカレード)を被ったスーツ姿の男がスマホを向けてレイラさんとモヒカンを撮っていた。


 「え? 誰? その画像なにに使うつもり?」


 仮面男は質問には答えずスマホを懐にしまうと、モヒカンに話しかける。


 「ディープボーイ、上手くいきましたね。策がはまり巫女とレイラお嬢さんを捕らえることが出来た。まぁ少々やりすぎなところは、あとで説教ですが」


 「メフィスト……あなただったの。この男の上司である幹部というのは」


 ああっ! そうだ、この仮面キャラこそ、中盤最大の宿敵。数多の策略を駆使して主人公たちを苦しめるドクター・ベウムの片腕のメフィストだ!


 「はい。あなた方が失踪した巫女を連れてこちらに来ているのを発見いたしましてね。急造の罠を張らせていただきました」


 うーん、まんまと引っかかってしまった。やっぱりメフィストは頭がいい。


 「でも、ちょっとやり過ぎたね。さっきのキスは完全にボクを怒らせたよ。怒りのあまり召喚しちゃった」


 「なに!?」


 シュゴオオオオオッ ズウウウン


 ボクの懐から獅子宮の石を出した瞬間、体長十メートルほどもある巨大な漆黒の獣が顕現した。


 「グオオオオオオンッ」


 その威風は絶大。吼える雄たけびは恐怖をまき散らす。まさに破壊の化身。暴虐の破壊神、獅子宮の星宮獣バッシュノード。


 「星宮獣の召喚!! いったい君は?」


 「うおおおおっ!? なんで別の星宮獣がここに!?」


 「やってしまいましたか。もっとも危険な星宮獣を召喚してしまうとは」


 「やはり………ゾディファナーザ? 別人かもとも思ったけど」


 全員がバッシュノードの出現に、驚愕に目をみはる。

 さて、出現はさせたけど、これを使うつもりはない。あくまで交渉のための見せ札だ。


 「メフィスト。それに、そこのモヒカン。引け。ここで一戦するつもりなら、それもいいけど」


 ドゴオオオン


 「あれ? なに、この音」


 その音に目を向けると、なんとバッシュノードがアグリアードネに殴りかかっていた!

 

 ドガン ドゴォッ メキョオッ グワシッ


 とにかくメチャクチャなラッシュで、アグリアードネを殴りまくる。


 「どうして? まだ戦闘命令は出していないのに! 」


 「どうしました? 星宮獣を制御しきれてないじゃありませんか。バッシュノードはすべての中でも最大の破壊衝動をもった星宮獣。手綱がとれていなければ、このようになるのも当然でしょう」


 解説ありがとう、メフィストさん。つまりボクはまったくダメダメな主人(マスター)ということか。これからどうしよう?


 ドガン ドガガガガ ドゴゴゴン グアシャア


 バッシュノードはメチャクチャにオラオラドラドラにアグリアードネを殴る殴る殴る。アグリアードネはその衝撃を喰らい膨れ上がり、グングン大きくなってゆく。


 「お、おい、ヤバイぞ。このボロ工場が崩れる!」


 ラッシュの激しさとアグリアードネの膨張で、工場はみるみる崩壊してゆく。もはや逃げるしかなくなった。みんな一目散に工場から逃げ出したとき、「グアシャアア」という音が響いた。


 「て、天井が!」


 もはやアグリアードネは工場の天井すら突き破り、二十メートルもの大きさになってしまった。敵も味方も唖然茫然。さらにムクムク大きくなってゆくフワモコの怪獣を仲良く見ているしかなかった。


 「うおおおおっ。ヤベェ!」


 突然、モヒカンが叫んで苦しみだした。まさか?


 「アグリアードネはもう限界だ! 爆発するしかねぇ!」


 「なんだって? おい、ヤメロ! もしあの大きさで爆発したら、どのくらいの被害になる!?」


 「少なくともこの街は消滅しますね。今回の目標の研究所も無くなるでしょうが、やむを得ませんか」


 「や、やめさせなさいメフィスト! なんとしても止めるの!」


 「爆発の規模を増大させ続けるアレを出した巫女に言ってください。もっとも、あそこまで膨れあがったら、もう爆発させるしかありませんがね」


 ジロリ

 みんなの視線が一斉にボクに集まった。可愛いからじゃないよね?


 



 


 

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― 新着の感想 ―
>解説ありがとう  こういうお話では、解説役がよく出て来るんだよなぁ……。
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