24話 大海にとどろく悪夢
千葉県沖の太平洋を沖へ沖へと進み逃亡するブラック・ゾディアック幹部三人。それを追ってボクと暁斗とレイラさんも千葉県沖を突き進む。
ボクと暁斗はプラーナキアのソーサーの一つに乗って、レイラさんはベーネダリアに乗っての追跡劇。
しかし相手もかなりのスピード。それをそのまま追っても、それに追いつくことは難しい。
なのでバッシュノードをベーネダリアの聖なる調べで強化して先行させ追跡させた。
結果追いつき、相手にそれなりの痛手を負わせて足止めに成功。
されどバッシュノードが反撃を食らったのを感じて、仕切り直しと退かせた間に、相手の星宮獣は巨大化してしまった。
大海の上に浮遊するギルスレインとセバイラヴィッシュは、四十メートルの巨体となって、ボクらを待ち構えていた。
「どうやら開発した強化薬とやらをうったようね。リスクもあるでしょうに、よくやる」
「四十メートル級が二体か。これはキツそうだ」
「アブロディ・ティーチは居ませんね。逃げたのか、海中にひそんでいるのか」
「アイツが逃げるのは考えづらい。多分、海中だろう」
ってことは、相手は四十メートル級が三体。
今さらながら、あそこでバッシュを戻したのは失敗だった。
見えないなりに、バッシュに暴れさせて敵方を混乱させた方が勝機は高かった。
まぁ、本当に今さら。
そんな未来はとっくに失われている。
「バッシュノード、こちらも最大巨大化です!」
獅子宮の星宮石を握り命じる。
するとバッシュノードは五十メートルもの大きさに変化する。そしてボクの頭も負担もズシリ重くなった。
「ううっ、やっぱりキツいです。まともに制御できるのは三分ってところですか」
「三分……それだけで四十メートル級を三体か」
「それだけで三体です」
たしかにキツいミッション。でも”不可能じゃない”。
レイラさんが自分の星宮獣ベーネダリアに命じる。
「ベーネダリア、聖なる調べを最大に響かせなさい」
ラァーーララァーー♪
ベーネダリアが再び歌い始めると、バッシュノードに大きく力が満ち溢れる。
星宮獣であれ瞬殺できるほどに。
「行け、まずは見えている二体を倒すのです!」
バッシュノードは黒い弾丸のように突進してゆく。
向かう先のギルスレインは、尾でカウンターを狙い、尾棘を突き出して飛ばす。
でもそんなもので、今のバッシュノードは止められやしない。
尾棘なんか軽々と砕いてしまう。
「あっ!」
だけど先端を砕かれながらも、その尾は伸びてバッシュノードにぐるぐる巻きつく。バッシュは動きを止められた。でも……
「悪あがきですね。そんなもので”最強”を抑えたつもりですか」
バリィィッ
バッシュノードが四肢に力を込めて体を捻じると、拘束している蠍の尾をバラバラに砕いた。
――「一瞬でも抑えたなら十分。その数秒で巡らせるのが策というものです」
「ああっ!?」
いつの間にかボクらの乗るソーサーの近くにまで、セバイラヴィッシュとそれに乗るメフィストはせまっていた。こっちを攻撃するつもりか!
「そんな時のために俺がいる! プラーナキア!!」
プラーナキアのソーサーは二枚。ボクらの乗っているソーサーの陰からもう一枚が飛び出して、セバイラヴィッシュを攻撃する。
「追尾機能も修復した。今度は前みたいに避け続けることは出来ないぞ!」
ソーサーは縦横無尽にセバイラヴィッシュの周りを飛び回り、的確に狙い続けてゆく。セバイラヴィッシュは避けるのが精いっぱいで防戦一方。
「フッ、ですが私もミランダもしょせんは前座。最強の獅子を射とめる狩人は別にいます]
「なんですって? ハッ!」
ザザアアアアッ………
いきなり海が激しく波立ちはじめた。
それはまたたく間に急流となり、バッシュの真下を中心に渦潮となって逆巻きはじめた。
「海の魔王ビークレザロ。海でヤツに挑むは、嵐の海に小船で沖に乗り出すに等しい」
ブオオオオオオオオオッ
メフィストのその言葉が終わると同時。
巨大な水竜巻が発生し、バッシュノードはそれにからめとられてしまった。
引き裂かれるのは何とか耐えているものの、バッシュノードはその強烈に逆巻く水竜巻から逃れられない。
「フッ、さすがは最強の星宮獣。他の星宮獣ならなすすべなく引き裂かれているでしょう。であるのに、あの水竜巻に耐え、あまつさえ逃れつつあります。しかし……」
ドックン
いけない。限界の三分にはもう少しあるはずなのに。
だけどバッシュノードがダメージを受け続けているせいで限界が早まった。
これは……マズイ……かも………
「ゾディファナーザ、ずいぶん苦しそうですね。バッシュノードの最大巨大化に、あなたはあと何分耐えられます。一分? 二分?」
グラリ
意識が朦朧とするくらい頭痛が響く。もう立っていられない。
ガクリ崩れて膝をつく。
メフィストはそれを好機と見なして動く。
「では、そろそろ刈り取らせてもらいましょう」
「そうはいくか、お前はここで倒す! 前の借りは忘れていない!」
この危機に黙って見ている暁斗ではない。
セバイラヴィッシュとソーサーが動いたのは同時だった。
セバイラヴィッシュは拳を突き出し、ソーサーは回転を早め激突する。
この対決は二度目。前は暁斗の操るソーサーは、なすすべなく砕かれた。
では、今は?
グシャアアアアアッ
勝ったのは暁斗のソーサーだった。
セバイラヴィッシュの拳を見事に砕き、そのまま片腕を持ってゆく。
「前とは違うぞ、メフィスト!」
「いいえ、同じです。甘さはなにも変わっていない」
「……なに?」
「片腕はあえて差し上げた。私の狙いは――」
片腕を肩ごと持って行かれたというのに、セバイラヴィッシュはスピードを緩めない。イキオイを殺さず目指す先は――
「レイカお嬢様、あなただ!」
な、なにィィィ!!?
ドッゴオオオオオ……
セバイラヴィッシュの残った片方の腕の拳がベーネダリアの腹を直撃。そのまま貫いた。
「あ…………」
「グラリ」浮力を保っていられなくなるベーネダリア。
そのまま崩れ、海に向かって落ちてゆく。
そして聖なる調べの加護も消えた。
「うぐっ……もう、ダメで……す……」
水竜巻にさらされ続けているバッシュノードのダメージは飛躍的に上がった。
そのダメージは、フィードバックしてボクに帰ってくる。
バッシュ最大巨大化の負荷も一気に高まり、もはや意識を保つことさえ出来なくなった。
「アメリア! おい、しっかりしろ。アメ………」
暁斗の声が、ぐらつく頭の中に響く。
その声を聞きながら――
ボクは意識を手放した。
逆巻く渦潮に堕ちるアメリアとレイラ。
このまま海の魔王に、なすすべなく飲み込まれてしまうのか……?




