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02話 ラスボス少女、主人公とヒロインに出会う

 「ふぃー、やっぱりバッシュノードはすごいね。飛行機を背に乗せても空を飛べるなんて」


 無事、海岸浅瀬に着陸させることが出来た飛行機を見てホッと一息。

 着陸の衝撃を和らげるため海水に着水せざるを得なかったとはいえ、中の人たちは無事だろう。中からアナウンスが聞こえているし。


 「本来なら、救助活動も手伝うべきだろけど……」


 なんといっても、飛行機が墜落した原因の大穴を開けたのは僕だ。それにテロ組織ブラックゾディアックの幹部でもある。当然、警察は僕を捕まえて組織の秘密を吐かせようとするだろうな。

 しかし僕は、組織のことなんてアニメ内ことしか知らない。本当にアニメ通りの敵キャラがいるのかどうかさえ定かではないのだ。


 ウーウー フォアンフォアン


 おっと、けたたましいサイレンが近づいてくる。こうなれば長居は無用。救助のプロが来たなら、素人の手伝いなんて邪魔なだけだしね。

 バッシュを星宮石にもどすことに成功すると、全力でその場を離れた。




 世界は、とある異能力テロ組織【ブラックゾディアック】に蹂躙されていた。

 組織は数多の異形を生み出し、国家間の対立をあおり、無数の戦乱を呼んだ。

 世界中で日常的に市街で銃撃戦が行われ、物価高騰はどこまでも上昇し、近隣国との紛争は泥沼化。世界中が未来に一寸の光明も見いだせない日々が続いている。

 その状況を作り出しているのが、たった一つのテロ組織ブラックゾディアックだ。

 主人公【狭間(はざま) 暁斗あきと】は、どこからか入手した天秤座(リーブラ)の星宮石を使い、ブラックゾディアックの繰り出す異能力者や怪獣と戦う。

 ――というのが、前期の深夜アニメ【星宮戦記ソルリーブラ】の概要だ。

 

 それを視聴していた僕はというと、ただの大学生。男だ。

 なのに、いったいぜんたいどうして、女の子ラスボスのゾディファナーザになっているのか。まぁラスボスといっても、序盤はその能力を上の悪いヤツにいいように使われるだけの可哀そうな子ではあったが。


 「これからどうしよう。本当にここは、あのアニメの世界なのかな」


 やっぱり、ここを確かめるべきだろうな。となれば、主人公の狭間暁斗に会いに行ってみるとするか。


 「おおっ! となれば、ヒロインのレイラさんにも会える。ウオシッ、やる気出てきたぞ!」


 ガチボレしたアニメキャラに本当に会いに行けるのか。夢みたいだなぁ。

 そして今、僕は女の子。男女の距離感なんか気にせず、おさわり放題だ!

 ぐふふ。なんて夢のようなシチュエーションなのだろう。コンプライアンス? 関係ないね.。まっててね、レイラさん!



 ――しまった。いま僕は美少女だった。

 そのことを意識しないまま、路地裏の治安の悪そうな場所に迷い込んでしまった。あげく、ヤバそうな野郎どものナンパにからまれてしまった。


 「すみません、急いでいるので」


 「ええ? お嬢ちゃん、どこ急いでいるんだい。俺らが案内してあげるよ」


 「そうそ、この辺りは俺らの庭みたいなモンだからね。どこにだって送ってあげられるよ」


 嘘つけ。どこぞへ連れ込んでお楽しみしようってハラだろう。ピアスとタトゥーとアクセだらけのナリで親切キャラは無理アリアリだ! こんな中学生くらいの外国人の女の子をどうするつもりだ!

 くっ、レイラさんにフラチなおさわり野望を抱いた天罰か? ゴメン、これからはもっとコンプライアンスに気をつけるよ。だから助けて!


 ――「あー、ちょっと。そこのかっこいいピアスとタトゥーのお兄さん」


 ふいに横合いから別の男の声がした。

 すわ、このパターンは通りすがりの救世主か? と、そちらを見るとドッキリ!

 そこには見覚えのある量産型主人公っぽいボサボサ黒髪イケメンと知的メガネのナイスバディな女子。


 そう、彼らこそ【星宮戦記ソルリーブラ】の主人公『狭間(はざま)暁斗(あきと)』とヒロイン『秋ヶ瀬(あきがせ)レイラ』さんだ! そうだ。最初に登場したのは、襲撃にあった半導体研究所に偶然視察で居合わせたところだった!

 でもその襲撃はナシになっちゃったんだから、どうなるんだろう? ラスボスになる僕との邂逅もそこになるわけだけど、ここで出会っちゃったし。


 「悪いけど、その子は俺たちのツレなんだ。道案内はいらないよ。気持ちだけ、ありがとな」


 「なにィ? こんなアニキ好みドストライクな美少女、知り合いだからといって『ハイそうですか』と譲れるか! この子のエスコートは俺らにまかせてもらおう」


 ムチャクチャだ。アニキさんの献上品にする下心をしゃべっちゃってるし。


 「ふぅ暁斗。墜落の現場を見てまわるんじゃ、時間が足りないわ。簡単なやり方で助けましょ」


 「そうだな。俺ももう【サクラモリ】の隊員(メンバー)。一般人相手に手荒はしたくないが、やむを得ないな」


 「優しいわね。私なんて、可愛い女の子にフラチを企むオトコなんて人に思えないわ」


 うおおおっ、レイラさん、アニメ通りの過激フェミニズム。でも、そこがいい!

 さて。こうきたら、相手のチンピラどもは激昂して殴りかかるも、返り討ちにあってボコボコにされるのが由緒正しいゴールデンパターンだけど。


 「フッ、テメェ。俺ら相手に売る気かい? やめた方がいいぜ。相手が悪いってヤツだ」


 え? そんなに大物チンピラなの? 身につけているアクセや服は安物に見えるけど。


 「いいかぁ? ヨォく聞けェ。俺らのアニキはナァ。なんと! ブラックゾディアックのメンバーなんだよ!!」


 「「なにィ!!?」」


 「うそね」


 盛り上がった緊張感をたった一言で消してしまった。さすがレイラさん。


 「レイラさん、場所が場所だ。万一ってことがあるかもだぜ」


 「こんな安いチンピラがブラゾの一部なワケないでしょう。こんな子供相手にナンパなんてしてる……」


 「チラリ」と僕を見るレイラさん。だけどその目は驚愕に見開かれる。


 「まさか……ゾディファナーザ?」


 「え?」


 まじまじと僕を見て考えるレイラさん。やがて考えがまとまったかのようにつぶやいた。


 「本当かもしれないわね。そんな気がしてきた。暁斗くん、アニキとやらのことを聞き出して」


 「ようしっ! てめえら、手加減は出来ねぇぜ!」


 主人公無双がはじまった。チンピラどもは可哀そうなくらいボコボコに殴られる。

 主人公なだけあってアクションもかっこいいね。暁斗の生アクションとか見られるのも、アニメ内転生の役得なのかね。


 ギュッ


 ふいにレイラさんが僕の手を強く握ってきた。


 「ふふっ仲良くしましょう、お嬢さん」


 メガネの奥のまなざしを妖しく光らせてレイラさんは言う。『やっかいな事になったな』と思う反面、その美しさに見惚れてしまう僕だった。






 

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― 新着の感想 ―
「前期」OR「前季」のアニメってどういう意味ですか? ここまでで相当、ストーリー改変しちゃってるみたいですが? 主人公とヒロインがテロ組織の幹部をすぐ信用するわけないしねぇ。前途多難は確かだな。
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