14話 バッシュ破壊光線輝く
落ちた先一帯のビル群はすべて圧壊。巨大質量の衝撃に、周囲の建造物ことごとくもすべて倒壊。その街並みは落ちた一瞬で、すべてガレキの塊と化した。しかもそこは日本政界の中心地、永田町なのだ。
「か……はぁああ」
桜庭さんもその他自衛隊の人達も、あまりの出来事に言葉を失っている。
けど、ボクは驚いている暇もない。どうにかバッシュを立て直し、ここからロムゾールを引き離さないと――
「――ううっ!?」
突然に頭に強烈な不快感を感じて、そこにうずくまる。これはもしや……
「ど、どうした? アメリアくん」
「バッシュノードの受けたダメージがフィードバックしてきました。さっきのは、そうとう効いたみたいです」
「な、なんだって! 大丈夫なのか?」
『大丈夫』と言いたいけど、それはズキズキした痛みに変わってくる。最大開放のバッシュの制御も苦しい。
「大丈夫……じゃないです。それに制御もそろそろ限界です。バッシュノードを引っ込めさせてください」
「そうか……やむを得んな。許可する」
ふぅ、バッシュノードはここまで。
あとはマスターのもとに送った精鋭部隊とやらに期待するしかないか。
獅子宮の星宮石に帰還の命令をする。
「バッシュノード、帰還して。戻って……うわああっ!?」
「ど、どうした?」
「バ、バッシュノードの帰還が拒否されました! あり得ない、マスターの命令が拒絶されるなんて!」
「な、なんだと……!」
強い拒絶の意思。それが星宮石からフィードバックしてボクの頭を直撃した!
頭の中に、痛いくらいバッシュノードの感情が流れこんでくる。
この感情は……怒り?
「バッシュノードがキレてます。ものすごく怒り狂ってます。ああっ!」
ドッガァァン ドッゴオオ グアッシャーーン
そこからのバッシュノードは苛烈の一言。
ロムゾールを上回るスピードで突進を幾度も叩きつけ、たちまち形成逆転をする。
されどその下の永田町も幾度も踏みつけられ、建造物はことごとく破壊され、生存者など望むべくもないほど徹底的に蹂躙されている。
「や、やめさせたまえ! これではバッシュノードが虐殺者だ!」
「はい……ロムゾールをかなり傷めつけたことで、怒りが下がってきています。今度こそ、命令を届かせられます……え?」
ブオオオオオオオオオオオンッ
と、突進に痛ぶられているロムゾールが大きく吼えた。
そして突進するバッシュノードに反撃を開始した。
ドッシン ガッシン ドッゴオオン ガッシャン メキャキャアッ
ロムゾールも苛烈に攻撃。拳も頭突きも割れんばかりに繰り出す。
「まさか……ロムゾールの方も暴走? そんな……今バッシュノードを引っ込めたら、ロムゾールは暴走のままに辺りを破壊しまくります!」
「なんだと……それでは、この災害を止める手段はないというのか?」
「送った精鋭部隊を急がせてください! ロムゾールのマスターを倒すしか、これを止める手立てはありません」
「そうだな。オペレーター、特A部隊にこちらの状況を伝えてくれ。早期決着を期待するとつけ加えて」
激しくぶつかり合う二体の怪獣。殴り合いぶつかり合い倒れるたびに、周囲のビルは崩れ、逃げまどう人々のいる地面は踏み荒らされる。人間が潰される音が聞こえてくるようだ。
くっ、早くしてくれ。あの二大怪獣の足元では加速度的に犠牲者が出ているはずだ。それも大きな権力を持った政治家たちが多数。日本の政治はメチャクチャだ。だから早く――
「ああああっ!」
最悪の意思が流れ込んできた。マズイ、これは絶対的にマズイ!
「ど、どうした。また異変か? アメリアくん!」
「バッシュが………破壊光線を撃ちたがっています。こんな所でアレを撃ったら……!」
「辺りを焦土に変えるというアレか!? なんとしても止めろ! 被害どころの話ではない。永田町そのものが消失してしまう!」
「うっく……わかっています。ぐうっ、でも……」
ううっ、キツい。このままじゃジリ貧だ。
アニメのラストバトルはゾディファナーザが意識を失い、解き放たれたバッシュは完全な破壊神になった。ボクもそうなるのは時間の問題。
こうなったら――
「もう精鋭部隊の決着を待ってはいられません。ボクの意識が保っていられるうちに、ロムゾールをやっつけます。被害を最小にして」
「やれるのか? どうやって」
「やり方は前のアリアードネとの戦いで学びました。アレをもう一度狙います」
幸いロムゾールは動きこそ速いけど、暴走しているだけに動きは単純。読みやすい。ならば!
「バッシュ! ストップだ!」
ボクの命令によりバッシュは再度の突進を止められ、大きな隙が生まれる。
そこにロムゾールは最大の攻撃、頭の角を向けての突進をしかける。
あれをマトモに喰らったら、バッシュノードといえど無事ではすまない。
さぁ、正念場だ。
「バッシュ、伏せ! できるだけ低く!」
言う通りバッシュは伏せる。
突進してきたロムゾールは目標をかわされ、バッシュの上で大きくつんのめる。
ここだ!
「いま! かち上げろ! 全力で!!」
バッシュの頭はイキオイよく跳ね起き、ロムゾールの腹を直撃。
強烈なアッパーを喰らい、ロムゾールのその巨体は大きく宙に浮く。
ヨシッ! 絶好で理想的な形になった!
「バッシュ、破壊光線だ! ただし……」
『威力は最小にしぼって』
と、言おうとした直前のことだ。
見上げる視界に、巻き上げられたガレキの一つがやけに気になった。
それが降ってくるのは、ちょうどボクの目の前の前。
それはグングン、グングン大きくなっていき……
石のカタマリだけが、視界のすべてになって……
「あ」
ゴチッ
鈍い痛みとともに、ボクの視界は暗転した。
――ああ、いけない。
ちゃんと『威力は最小に』って言っておかないと、バッシュは最大火力で破壊光線をブッ放すぞ。
だけど意識はどんどん暗くなってゆく。
遠くに聞こえるのは、桜庭さんがボクを激しく呼ぶ声。
そして激しい熱と光を感じて――
ボクの意識は途切れた。




