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11話 二大巨獣都心大決戦

 ボクらサクラモリ車両部隊は、サイレン鳴らしながら幹線道路を飛ばしてゆく。ボクの乗る指揮車両は多くの護衛車両にぐるり守られている。さながら隣の桜庭さんは王様、ボクはお姫さまだね。


 さて、現場に到着した。ここは晴海通りJR高架下。

 高架橋線路の真下の幹線道路に自衛隊の装甲車両がずらりひしめいていて、サイレンが鳴り響き、剣呑な緊張が漂っている。

 安全確認がとれたと報告が出て、やっとボクは桜庭さんと車の外に出た。


 「ロムゾール……あんなところに」


 注意をうながされた高架橋の上を見上げると、まさにそこに目標の巨大牛人ロムゾールがそこに居た。ロムゾールは高架橋線路の上にとどまりボクたちを見下ろしていた。


 「この少し前、ロムゾールはまたしても緊急停止していた列車を襲い、高架橋から叩き落したそうだ。現在鳴り響いてるサイレンはその救護活動のものだ」


 殺戮の嵐を巻き起こしているな。なんてヤツだ。


 「例によって次の獲物を狙い進行していたが、我々が近づいた途端、進撃を止めてあそこにとどまったそうだ。やはり目的は獅子宮(レオ)のようだな」


 「それがわかっているのに、わざわざ戦うんですか」


 「あのまま、いつまでも悠長に待ってくれるとは思えん。こちらに動きが無ければ、また市民の殺戮に動くだろう。ともかく相手の望む通りに動く。そしてその間にマスターを探し出してケリをつける」


 そういう作戦ならしようがないな。なら、最良の結果が出るよう尽くすだけだ。

 と、レイラさんが桜庭さんに申し出た。


 「管理教官、私をマスター捜索班に加わらせてください。星宮獣の操作しやすい位置など知識がありますから、お役に立てると思います」


 すると、すかさずメイも続く。


 「では、あたしもレイラさんの補佐につかせてください。都内マップのナビはおまかせください」


 「ふむ、いいだろう。二人とも行きたまえ。捜索班の一つをまかせよう」


 ああ、レイラさんは行っちゃうのか。カッコ良いところ見せたかったのに。おまけにメイもちゃっかりレイラさんの相棒ポジについているし。

 いや、大事な任務というのは分かっているんだけどね。彼女の視線や応援があった方が、やる気とファイトに大きな差があるんだよ。

 カッコ良く出動するレイラさんと仲良くつきそうメイを悲しく見送ったし、ボクもボクの任務をはじめよう。獅子宮(レオ)の石を固く握りしめる。


 「それじゃ、いきます。待っている挑戦者(チャレンジャー)王者(チャンピオン)をぶつけてやりますよ」


 普通は王者(チャンピオン)の方が先に来ているものだけどね。


 「うむ、高架橋から落とさんようにな。長引かせ押さえつけて、徹底的に動きを封じるように戦ってくれ」


 それって、泥試合とか塩試合とかいうものでは?

 しかし考えてみれば、観客(ギャラリー)わかすファイトをしても興行収入が入るわけでもなし。視聴回数爆上げしてもスポンサーがつくでもなし。

 むしろすごいファイトをすればするほど国家財政がピンチになるんだから、しょうがない。メイク塩試合をしますか。


 「星宮より来たれ。猛威の権能、百獣震わす暴虐の獣王。金のたてがみ靡かせ咆哮轟かし、呼べよ嵐。震わせ大地。天地鳴動、獅子のほむらを掲げよ。バッシュノード!」


 グオオオオオオンッ


 金のたてがみを持った漆黒の獅子が飛び出した。


 「行け! ロムゾールをやっつけろ!」


 グオオオオオオ!!


 バッシュノードは咆哮をあげ、イキオイよくロムゾールに向かってひとッ飛び。


 「あ、ちょっと待って! やっつけるんじゃなく、押さえつけ……」


 あまりのイキオイに嫌な予感を感じた。そしてそれは大的中した。


 ドゴオオオオンッ


 バッシュノードはロムゾールに体当たり。その衝撃はロムゾールの巨体を軽々とふっ飛ばし、高架橋から叩き落した地面に叩きつけた。真下の包囲中の自衛隊をなぎ倒し道路に大穴を開けて。


 「あ……」


 「アメリアくん、私のリクエストを聞いていなかったのかね?」


 高架橋から落としたうえに、自衛隊に大きな被害を出してしまった。

 しかもそれで終わりではなかった。いや、被害拡大の始まりだった。

 バッシュノードは激しい突進を繰り返し、さらにロムゾールもそれを迎撃すべく激しいラッシュを浴びせる。二体の巨獣は周囲のビル破壊などお構いなしに戦い、どちらかが吹き飛ぶたびにビルや電柱や道路は破壊されてゆく。


 ドガン ドゴン ゴギャ グワギャアア バゴオオオン


 まさに最悪の災厄。巨大な質量を持った超大型台風。

 どこに巨体が飛んでくるか分からない最悪の事態。現場の職員の人たちはまるで処刑台に立つ心地だろう。とうとう桜庭さんは声をあげた。


 「アメリアくん、やめさせたまえ。このままでは被害が拡大するばかりだ!」


 「ダメです! バッシュノードを止めれば、ロムゾールから集中砲火を浴びせられます。あのパワーのラッシュをまともに受ければ、バッシュノードといえど無事ではすみません。とめるならバッシュノードを引っ込めるしかないです」


 「くっ、やむを得ん。作戦は一時中止に……」


 と、その時、通信を担当していた職員から報告があった。


 「桜庭管理教官。ただいま、秋ヶ瀬隊員が金牛宮(タウラス)マスターと思われる人物を発見したと報告がありました。確保は危険かつ現状の急変から、警告はせず麻酔銃の使用で確保を望むそうです。許可をしますか?」


 「………いいだろう。やらせたまえ」


 桜庭さんは大きく息を吸ってボクに命じる。


 「アメリアくん、作戦は続行だ。間もなくレイラくんが決めてくれる。ここまで来たならハラをくくるしかない」


 「いいんですね? ビルとかさらに壊れても」


 「ああ。あの一帯の被害は必要だったと説明する。今ロムゾールをフリーにすれば、マスターの危機に向かうだろう。そうなればレイラくんと捜索班が危険だ。こうなれば被害に目をつむり、早期状況終了を目指す」


 「わかりました。なら、見守りましょう。……すごい迫力」


 巨大獣と巨大獣人の激しいぶつかり合いは、どこまでも凄まじく見ごたえあった。破壊されるビルの光景も相まって、見る人すべての視線を釘付けにする。


 「やっぱりバッシュノードに泥試合だの塩試合なんて無理だったんだな。どこまでも主役なヤツだよ。桜庭さんの許しも出たんだし、こうなったらレイラさんがマスターを倒すまで超迫力巨獣バトルを演じなよ。被害額なんて気にしないでさ」


 半ばヤケクソになって呟いた言葉だった。

 されど、この言葉は最悪の形で実現してしまう。

 この後、ここまでの被害額など、ほんの小銭だったと思えるほどの大破壊が巻き起こってしまうのだから。

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