episode2 A new life(新たな命)
肉体は滅んでも魂は永遠に生き続けるという人がいる。仏教では輪廻転生という。仏教では因果応報という考え方もあり、人が生前行った行為により、転生する対象が決まるというものだ。人に転生するためには、人は生前どのような行いをすればよいのだろうか。
暗い、暗い、ここはどこだ?永遠とも思われる闇の中を彼は彷徨っていた。何も見えない。何も感じない。まるで温水プールに潜っている時のような感覚。手のひらはぎゅっと握られ、体は丸まっている。でも不思議とあたたかいし落ち着く。耳を澄ましていると、遠くから何か人らしい声が聞こえてくる。
もしかして?僕は死んだのか?ここは天国か?いや、何だか様子がおかしい。まさか、死体が検体されてホルマリンの水槽に沈められているのか?とにかく落ち着け。本当に死んだのか?どうしよう。職場のロッカーには洗ってない下着が相当溜まっている。ロッカーを他人に開けられたくない。いや、待て待て。それよりまずいぞ。下宿には職場のみんなや親をドン引きさせるものがたくさん出しっぱなしだ。どうしよう。神様、一瞬だけ蘇生させてください。人生最大の汚点となるであろう物販たちをきちんと処理して旅立ちたい。本当にどうしよう。
そうこう焦っているうちに、周りの様子が何だかおかしいことに気付く。辺りを覆っていた液体がなくなり、体が頭から徐々に狭いまるでトンネルのような場所に押し出されていく。いよいよ天国入手移動か?しかし何だか荒っぽい移動だ、頭が押さえつけられて苦しい。外から聞こえる女性の叫び声、苦悶の声に天国ではないのかもしれないなどと思いつつ、閉じた瞼の向こう側が明るくなる。空気が刺すように冷たい。その時、交通事故に遭ったような衝撃が、2度3度背中に走った。口から水を吐き出し、口から出た鳴き声。「オギャア、オギャア」そうか、僕は生まれ変わったんだ。それとも、夢を見ていたのか?もしそうなら胎児で悪夢を見るなんて笑えないな。
こうして彼は新たな人生を歩むことになった。
胎教という言葉がある。胎児に音楽を聴かせたり、本を読み聞かせたり、話しかけたりするらしい。そういう意味では胎児は意識があり、子宮の中から外の様子を伺っているのかもしれない。